生活様式の変化などで枡業界の需要は落ち込みつつある中、新しい枡の使い方を提案し、ニーズを生み出し続けている大橋量器。クラウドファンディングで大きな反響を集めるなど次世代に伝統産業を受け継ぐ大橋博行代表に話を伺いました。
前編はこちら:【有限会社大橋量器】伝統産業で新たなニーズを生み出すアイデアと手法
クラウドファンディングで誕生した未来を担う商材
―デザイナーと開発した新商品COBITSU(コビツ)はクラウドファンディングで1,000万円を超えるほど大きな反響を集めました。
当初は「枡で炊飯」と考えたんですが失敗。でも、試作でレンジから広がるお米とヒノキの匂いがあまりにも良くて冷凍ご飯で挑戦しました。枡の耐久性、蓋の反りなどの課題を解決しながらも「ヒノキの枡に入れて、ご飯をレンジにかけるとおいしくなる」のは分かっていたので最後まで開発を進めていけましたね。
―製作にとても高い技術が求められる新商品です。
規格枡と作り方が全く違うので技術が必要です。コロナ禍で普通の枡が動いていない今の時期に、この商品をどう生産するかという製作の意識改革から始め、会社の主力商品として作っていけるようにシフトしなければいけない。20年度の売上は前年比45%減だったので、COBITSUでしっかり売上を立てながら次のアイデアを実現していきます。
―冷凍ご飯の新たな食べ方として日本のスタンダードになるかもしれないですね。
それいいですね、日本のスタンダード。吸湿と蒸し器の効果がすごいので、競合製品も出てくるかもしれない。ただ技術が必要だから誰でも作れるわけじゃない。
―今後のビジョンを含め、次世代に伝統産業を受け継ぐ使命をどう感じていらっしゃいますか?
フロントランナーとして枡の文化や伝統をつなげるのは僕たちしかいないと思っています。かつてはかりだった枡は酒器となり、役割を変えて残っています。ひょっとしたら次の役割を探すのが、我々のミッションかもしれない。我々がやれることは枡で人に幸せを与え、場に彩りを添えることだとコロナ禍で再認識できました。今はCOBITSUの製作で手一杯ですが枡の魅力を今後も伝えていきたいですね。
―最後にOHACO読者へのメッセージをお願いします。
経営者の皆さんは、やりたいことや夢をお持ちだけど目の前の課題をまずやってしまうんですよね。いつまで経っても「これがやりたい」が変わっていない人がいるとすれば、それはまだ動けていない状態。普段の仕事やクレーム対応より「やりたいこと」が後回しになっていては前に進まないのでアクションを起こしましょう。……といいながら僕も課題に追われていますが、意識しないと前に進まないのでぜひ動きましょうということですかね。
大橋量器成長のポイント
製品
「NOと言わない精神」で開発に取り組み、技術と強みを蓄積。今なお、枡の技術を生かしたオリジナル製品を作り続ける。
人
「世界初の挑戦」と日々新しいことに挑み続け、発信。営業や職人に20、30代の若手社員が多く集まる。
社内風土
大橋代表が社員に耳を傾け、信じる姿勢によって、若手社員が自発的に考えて動く社内風土が育っている。
【今回の取材先】
有限会社大橋量器
所在地:岐阜県大垣市外側町2-8
設立:1950年
年商:2億7千円(2019年度)
従業員数:28名(2021年8月現在)
URL:http://www.masukoubou.jp/
(取材・文:笹田理恵 / 撮影:平山陽子 / 編集:OHACO編集部)
編集者・ライター
ビジネスメディア『OHACO』の特集企画・取材を担当。アパレルデザイナーという異業種からライター・編集者に転身。得意なジャンルは、企業取材、環境活動・SDGs、ファッション産業など