5 人の専門家に聞いた! アフターコロナで適応するための 変化と対策とは

 新型コロナウイルスの影響で経営や売上確保に苦慮する会社が多い状況が続いています。SMCグループの経営・財務の専門家に、各視点でアフターコロナに向けて必要な行動について取材しました。

1989年創業。「SMCグループの支援により、経常利益1,000万円以上、自己資本比率50%以上のお客様を500社達成します」を同グループのヴィジョンに掲げている。

税理士顧問

キャッシュの確保が今後乗り切るカギに

税理士 船田 卓

毎月の試算表や決算書の報告、営業利益の黒字化や銀行の融資を受ける目線での決算書作成・申告、各種税額控除の適用など税務に加え、経営をサポートできる税理士として中小企業を支援。

法人税の各種税額控除を正しく適応し、フル活用する「良い節税」に取り組みましょう。会社が存続できる条件は現預金を持っていること。コロナ禍においては、特に資金を持つ戦略が必要です。融資も営業利益の黒字化や不良在庫計上などの決算書の作り方次第で可能になります。

節税のために必要のない消耗品を買うなど無駄な経費・投資に使うのは絶対にNG。経費や投資は売上を伸ばすためだけに使ってください。経済が二極化する中、コロナバブルで売上が伸びた会社も要注意。いま得た利益は将来のためにキャッシュとして備えておくべきです。

そして、今こそ経営や金融の分かる税理士と付き合うべきですね。経営が分からなければ、悪い節税を勧めてしまうと思います。ただ、全てを任せきりにするのではなく、自身でも会社を把握し状況判断しながら、税理士に意見をもらう関係性がベストではないでしょうか。

先行経営、セミナー

先を見据えた計画と目標が大事

税理士 菱刈 満里子

過去会計から見えてくるものを手掛かりに1年後、5年後の会社状況をお客様に見ていただく「未来会計」を行う。リスクと希望を持ちながら、安心して経営できるツールとして中小企業経営者のサポート。

コロナの影響によって経営計画の目標達成ができなくなったお客様は多いですが、未来の数字を見ていれば「自分の会社がどうなるのか」を見通すことができ、苦しい状況でも必ず動き出せます。つまり最初にすべきなのは、先を見据えた経営計画や経営目標を持つことでしょう。

そして、自社のリスクに気付くことが必要です。例えば、利益が1,000万円出ていたとしても自己資本比率、当座比率が悪い状況では、経営がうまくいっているとは言えず、いつ潰れてもおかしくない状態なのです。中には非常に低い粗利で経営、つまり儲からない商売をずっと続けているメーカーさんもいます。

まず、数字を使って自分の会社を正確に知ることから始めてください。自分の会社を知った後は、先を見て経営してほしいです。さまざまな変化が必要な状況ですが、必ずリスクを考えて挑戦してほしいですね。

融資、事業再構築

返済可能な額面を把握しましょう

中小企業診断士 小川 弘郎

20年にわたる金融機関在籍時には、融資担当や企業改善支援担当を歴任し、融資現場における経営支援や数々の企業再生における実務を経験。中小企業経営の伴走者として、経営課題解決へ導くことに力を尽くす。

融資を受けやすい状況は終わりつつあり、返済が始まるタイミングです。毎月の返済額を確認し、返済可能となる利益額・売上高を正しく把握しましょう。その数字に対して、何をするべきかを考えて計画経営の実行を。コロナ後にどう変わるのかのイメージを持ち「誰に何をいくらで届けるのか」と具体的に言語化してください。

新しいことを始めるために補助金制度を活用したい中小企業は多いと思います。事業再構築補助金の活用は有効ですが、お金欲しさで補助金を申請すると回収のヴィジョンが立てられず「補助金貧乏」になってしまいます。

また、内容によって補助金対象にならない項目もあり、自社負担=投資が必要になります。投資回収をした上で利益を出すイメージを持ち、事前にビジネスプランを立てることも重要。これがない状況下では経営判断を間違えてしまいます。補助金を獲得して、ビジネスに活かすには覚悟と労力、先行経営の視点が必要です。

コスト削減

固定費を見直すなら今がチャンス

代表取締役 浅田 和利

経費削減効果の高い15項目を厳選し、無理のない効果的なコスト削減を実現している。日々の業務に追われ、なかなか前に進めない経営者に寄り添い、共に成長していくパートナーとしてサポートを続けている。

コロナ禍で利益を出すのが厳しい業種は、経費・コストを下げることで利益とキャッシュを増やすことができます。固定費の削減は一番始めやすくて効果が出る方法です。今こそ電気料金、ETCや損害保険など固定費見直しのタイミングでしょう。項目内容によっては、最大30%の削減率が見込めます。また、キャッシュが潤沢ではない中小企業が高級車を買うなど無駄な経費を掛けることでどれだけ会社に悪い影響を与えるのかを理解してほしいですね。貸借対照表の読み方を学ぶとよく分かります。

非課税でかつ社会保険料を下げることができる確定拠出年金(401k)の加入は必須です。変化の時代だからこそ個人単位でもお金を貯めて力をつけないといけません。万が一、会社が倒産・自己破産しても確定拠出年金で貯めたお金は保全される制度になっています。

相続、事業承継

先代の思いを遺す相続と事業承継の対策を

税理士 岡本 英樹

特例などをフルに使い、税額を極力少なくすることを求められる相続税。その期待に応えられるよう知識や知恵を習得し自己研鑽に励むとともに、税務署OBを迎え入れるなどして体制を整えている。

自身がコロナに感染して、今自分が死んだら会社はどうなってしまうのかと考え始めた方がいます。「自分はすぐには死なない」「絶対にボケない」「うちの家族は全員(これからもずっと)仲がいい」と言い切れる人は誰もいません。コロナに関しても感染してからの準備では遅いのだと肝に銘じてください。

経営者は、会社の財産比率が高くなります。会社で使っている財産を売らなければ相続が上手くいかないケースもあり、その場合は経営が上手くいかなくなり会社が継続できないことも。会社が使っている土地や株をスムーズに後継者に渡す準備をしておくことが、事業承継において非常に重要です。

また、2015年の相続税法改正により基礎控除の引下げが行われ、この結果ごく普通のサラリーマン家庭でも相続税がかかるケースが増加。一方「財産がないから揉めることはない」という思い込みも間違っています。より重視すべきは「先代の思いを遺しながら、どのようにわだかまりや争いなく円満に相続や事業承継を実現させるか」を重要視すべきです。

後編は、コロナ禍でどう変化していくべきかのSMCグループ・曽根代表による「コロナ禍のいま、中小企業がやるべき5つのこと」と次期代表・西川正起が考える「アフターコロナで求められる価値観の変化」を紹介!

今回の取材先
SMC税理士法人
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅4丁目5-27 大一名駅ビル5F
TEL:052-446-5626
設立:1989年1月
URL: https://www.smc-g.co.jp/

(取材・文:笹田理恵 / 編集:OHACO編集部)