「コロナはいつか収束する」と考えている
経営者は生き残れない





 新型コロナウイルスの拡大によって、あらゆる産業でダメージを受けている昨今。大変革の時代で中小企業が生き残るためにできることは。

「100年企業の創出」をミッションに掲げ、税務だけでなく強固な会社にするためのサポートを行うSMCグループの曽根代表にコロナ禍の今必要な経営者の考え方についてお話を伺いました。

―まず、SMCグループの特徴と取り組みを聞かせてください。

SMCグループは、関わる中小企業が「100年企業」になるためのお手伝いをしています。100年企業になれない直接的原因は、ただ一つ。お金=キャッシュが無くなるからです。お金さえあれば赤字で売上が下がろうと会社を続けられます。いかにお金を潤沢に持てるかに焦点を合わせて中小企業を応援しているため、節税のために高級車を買うようなお金を減らす行為をされるお客様には強烈に注意するスタンスを持っていますね。

―コロナ禍の影響で経営が苦しい中小企業が増えています。それもキャッシュの有無が関係するのでしょうか。

コロナで一時的に売上が下がるのは仕方ありません。ただ、そこで苦しくなるのは普段お金を貯めていなかったから。コロナ禍でも蓄えがあったら乗り切れるはずで、それはリーマンショックや東日本大震災でも同じことです。

―コロナ収束後も社会生活は元通りにはならないと言われています。アフターコロナで生き残れる経営者とそうでない経営者の違いとは。

まずコロナ以後、売上が落ちていること自体が問題。100年に一度の災害ですが全体のうち二割の業績は下がっていない。普段から準備できていれば増収増益が可能です。弊社も2020年度は過去最高売上で、コロナが背中を押してくれていると感じています。

要は、常に新しいことをやり続けてチャレンジしていればコロナ禍の変化なんて何てことない。「コロナはいつか収束する」と考えている経営者は生き残れないし、コロナ後にどう立て直すかなんて会話をしていてはダメ。

―曽根代表の著書では、100年企業の創出のために「変えてはいけないもの」と「変わらなくてはいけないもの」があると書かれています。今こそこの二点が大事だと思いますが、いかがお考えですか?

SMCにおいては、「お客様を100年企業にする」「キャッシュを増やす」という理念やヴィジョンは変えてはいけないことですね。変わらなくてはいけないのは、お客様の支援の仕方。コロナ以前はリアルで面談をして支援していましたが、今は基本オンラインをベースにしています。ただ、多くの経営者はコロナ前に戻りたいと思っているから変えないんですよね。僕たちは「戻るわけがない」と思っているので、変えないといけない点においては行動しています。

例えば、僕自身は1カ月のうち28日はお客様と外で食事をしていました。今は全く逆で、28日は家で食べて、2日は外。ただ、家で食べるときも半分以上はオンラインでお客様や取引先と食事しています。

―やっていることは変わらないけれど、スタイルを変えているんですね。

そう、やり方を変えています。お客様とのつながりは不変だから、やはり顔を合わせないといけないですがリアルで会う必要はないですね。手段は変えなくてはいけない。

―消費者の価値観や消費スタイルが変わっているため、今まで通りの売り上げを立てていくこと自体が難しいように感じます。

例えば、いま僕が外食するときは絶対に個室じゃないと行かない。だから、外食産業は個室化していないと負けだと感じています。

―そういった消費者のニーズをキャッチし、変わっていけるか。頭を切り替え、今がチャンスだと捉えていないとこれからは生き残れない。

そう、その変化がやれるかどうかですね。こういった取材もオンラインで話せているじゃないですか。以前はどちらかが移動して会わければいけなかったんですから。この浮いた時間のメリットは大きいですよ。オンラインを全く活用する気がない企業なんて話にならない。コロナが蔓延した一年間で、これが100年に一度のチャンスだと気付かないと。

正しい変化に必要な「理念経営」とは

―今まで曽根代表は危機的状況を乗り越えてこられた経験はありますか?

ないですね。危機的状況になる前に手を打ってあります。

―それは会社のリスクを見ていらっしゃるからでしょうか。

僕は「これがうまくいかなかったら」と最悪な状況を見極めてからでないとチャレンジしません。リスクを見られない人は経営者に向かないですよ。

―なるほど、想定内ということですね。

そう、想定内のことしか起こらないから危機的状況ではない。想定外だとすると重要な社員が「辞めたい」と言った時でしょうか。今は、社員が70人ほどいますが誰が辞めても仕方ないと思っています。「人は辞めるもの」と想定しておくことですね。

―社内で誰が辞めても問題がない、リスクを踏まえた仕組みづくりをしておくのですね。

経営はリスクヘッジするのが一番大事。常にリスクを完璧に予測し、事前にリスクが起こらないよう次々と手を打つ必要があります。

あとは、すぐ変われるかどうか。ダーウィンの進化論で「生き残っていくのは強い者でも賢い者でもなく、変化に対応できた者だけ」という一節があります。まさにその通りで、今時オンラインをやれない会社は環境適応していないですよ。現状に目をつぶっていては新しいことに挑戦できません。

―リスク予測に必要な情報収集で心掛けていることは?

興味のない情報も取ること。多くの経営者は、自分の好きなことや興味ある情報しか見ていない。僕は何にでも興味を持つようにしています。

―最後に、OHACO読者へのメッセージをお願いします。

変化を苦痛だと感じず、楽しめる経営者になってほしいですね。ただ変化の方向を間違えると潰れるのを早めてしまう。正しい方向に変化しないといけません。

―変化が正しい方向なのか、どう見極めたらいいでしょうか。

自分たちの経営理念に叶っているかどうかでしょう。理念は世のため、人のためにあるもの。世の人に役立っていればお客様から支持され、売上は下がりません。売上が落ちた会社は、変化することによって下がった利益を取り戻せます。やはり必要なのは変化。変化しないことが一番のリスクだと思います。

―今こそ、理念や目的が必要だということですね。経営理念・目的が曖昧な経営者も多いのでは。

そうですね。例えば、仕事の判断において、僕たちは「お客様が100年企業になるのにプラスかマイナスか」で考えます。経営理念が意思決定基準です。しかし、経営理念や目的のない人は仕事を受けるかどうかを、儲かるか、儲からないかで考えます。かつ、楽をして得できるかを判断基準にしている。

理念を基準にする経営を「理念経営」、儲けたいためだけに動いている人は「損得苦楽経営」と呼んでいて、根本的な質が全く違います。経営理念や目的がないと判断基準は「楽をして儲けられるか」にしかならないから、そういった経営者は損得苦楽経営をしているはずです。

中編は、経営・財務の専門家が各視点でアフターコロナに向けて必要な行動と対策について解説!

後編は、曽根代表による「コロナ禍のいま、中小企業がやるべき5つのこと」と次期代表・西村正起が考える「アフターコロナで求められる価値観の変化」を紹介!

今回の取材先
SMC税理士法人
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅4丁目5-27 大一名駅ビル5F
TEL:052-446-5626
設立:1989年1月
URL: https://www.smc-g.co.jp/

(取材・文:笹田理恵 / 編集:OHACO編集部)