中小企業でのSDGs取り組み事例20選!業種別に具体例をご紹介

ここ数年でよく使われるようになった「SDGs」という言葉。あらゆるメディアで取り上げられているため、聞いたことがあると思います。しかし、言葉は知っていても、具体的にどのようなものか、どのように取り組むものなのかは、よくわからないという人もいるかもしれません。

今回は、SDGsとは何か、どのような目標を掲げているのかについて改めて確認します。そして、中小企業でのSDGsの取り組み事例20選を業種別に紹介します。

1.SDGsとは

SDGs(エス・ディー・ジー・ズ)はSustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標という意味です。これは、「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。

SDGs は、2015年に開催された国連サミットですべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられており、達成期限は2030年です。17のゴール(目標)と169のターゲット(具体的目標)で構成されています。

17のゴールは次のとおりです。169のターゲットについては、外務省日本ユニセフ協会のホームページをご覧ください。

①貧困をなくそう
②飢餓をゼロに
③すべての人に保健と福祉を
④質の高い教育をみんなに
⑤ジェンダー平等を実現しよう
⑥安全な水とトイレを世界中に
⑦エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
⑧働きがいも経済成長も
⑨産業と技術革新の基礎をつくろう
⑩人や国の不平等をなくそう
⑪住み続けられるまちづくりを
⑫つくる責任、つかう責任
⑬気候変動に具体的な対策を
⑭海の豊かさを守ろう
⑮陸の豊かさも守ろう
⑯平和と公正をすべての人に
⑰パートナーシップで目標を達成しよう

2.企業としての取り組み方

企業として、17のゴールをすべて達成する必要はありません。事業内容によって、できることとできないことがありますので、自社の事業内容、強みを生かせるゴールを見極めましょう。

ゴールが決まったら、そのゴールのダーゲットを確認します。いずれのゴールにも複数のターゲットが設定されています。その中から自社の課題を決定し取り組みます。

3.業種別の取り組み事例20選

ここでは、中小企業のSDGsへの取り組み事例について紹介します。新たな取り組みに向けた気づきやヒントになれば幸いです。

①製造業

〈株式会社大川印刷〉神奈川県横浜市

参照:株式会社大川印刷

経緯】
インターネット印刷などの台頭により価格競争が激化し、企業として稼ぐ力をつける必要性を感じた。そこで、本業を通じてSDGsに取り組み、ビジネス機会を得ようと考えた。

【取り組み内容】
環境や人の体に優しい環境印刷(石油系溶剤0%のインキ、違法伐採によるものではないと証明された紙の使用)。SDGsを意識した新製品(SDGsの17のゴールを整理したメモパッドなど)開発。市民団体と連携し日本在留外国人のニーズに応えた、4カ国語版お薬手帳の開発。

結果】
持続可能な調達に関心の高い大手企業などとの新規取引の増加、売上増加。職場環境改善、社員のモチベーションアップ。外部ステークホルダーとの連携強化。

〈武州工業株式会社〉東京都青梅市

参照:武州工業株式会社

【経緯】
部品メーカーとして、認定NPO法人「環境文明21」主催の「経営者『環境力』大賞」を受賞したことがきっかけ。以前から太陽光発電などの温暖化対策、フェアトレード(公正な貿易)といったさまざまな取り組みを行っていた。

【取り組み内容】
タブレットやスマートフォンでデータを確認できる生産管理システムの導入。わずかな傷は性能に問題ないため、過剰な品質管理の廃止。

【結果】
新たな生産管理システムによる生産性の向上。過剰な品質管理を廃止したことによる検査労力の軽減、低コスト化。

〈株式会社SAMURAI TRADING〉埼玉県桶川市

参照:株式会社SAMURAI TRADING

【経緯】
業務用デザートを製造し、毎日大量の卵殻を産業廃棄物として処理していた。それを持続可能な資源へ転換できないかと考え、研究を開始した。

【取り組み内容】
卵殻を60%使用したバイオマスプラスチックの製造・販売。卵殻10~50%をパルプ・填料の代替とした紙製品の企画・開発。指定障害福祉祉センターとバイオマスプラスチック製品の成形で協業、施設利用者の一般就労支援の実施など。

【結果】
SDGsに積極的に取り組む企業からの製品採用が大幅に増加。産業廃棄にかかっていたコストを植林に使いCO2を削減。渋沢栄一ビジネス大賞2年連続受賞(第8回奨励賞、第9回大賞)など。

〈ホットマン株式会社〉東京都青梅市

参照:ホットマン株式会社

【経緯】
タオルの原材料である綿花が、先進国に有利で、開発途上国にとって不平等な取引が行われている実態を知る。この問題を解決するため、フェアトレードに賛同して取り組みをはじめた。

【取り組み内容】
タオルを一貫生産できる自社の強みを生かし、セネガル産コットンを使用した、国内初の日本製フェアトレードコットンタオル(国際フェアトレード認証取得)の生産。圧倒的な吸水性を誇る「1秒タオル」の生産。地元学校の工場⾒学、職場体験やインターンシップ、地域や若年層に対する啓発活動の実施など。

【結果】
付加価値の高い製品による企業認知度の向上、SDGs活動を通じた内部組織⼒強化。持続可能な調達に関心の⾼い企業などとの新規取引の増加、新たな協働機会の獲得など。

〈株式会社ワンプラネット・カフェ〉東京都港区

参照:株式会社ワンプラネット・カフェ

【経緯】
アフリカ南部のザンビアで教育支援、職業スキル研修を行う傍ら、深刻な貧困問題を解決できる事業を探していたところ、廃棄されているバナナの繊維から紙が作れることを知る。

【取り組み内容】
ザンビアのバナナペーパー工場で現地の人を雇用し、オーガニックバナナの茎を買い取り、繊維を絞り乾かす。その後、繊維を日本の福井県に送り、越前和紙の技術を活用し、バナナペーパーを生産(日本初のフェアトレード認証の紙)。日本の印刷会社や紙製品メーカーと共に、さまざまなバナナペーパー商品を開発。フェアトレード商品などを取り扱うオンラインショップの展開など。

【結果】
ザンビアのシングルマザーなどの社会的弱者の雇用、現地の子どもの教育支援、ソーラーランプの普及、マラリア予防のための教育と蚊帳の設置、安全な水の提供などによる、暮らしを支えることに貢献。貧困による野生動物の密猟や違法な森林伐採の防止。SDGsに関心のある多くの企業によるバナナペーパー製の製品の採用。

〈株式会社TBM〉東京都中央区

参照:株式会社TBM

【経緯】
紙やプラスチックの代替となる新素材「LIMEX」を開発したベンチャー企業。創業当初から企業ビジョンとして「100年後でも持続可能な循環型イノベーション」を掲げている。

【取り組み内容】
国内自給率100%超である石灰石を主原料としたLIMEXの製造。専任のサステナビリティ推進者の配置。福井県鯖江市内で使用済みのLIMEXを使った印刷物などを回収し、越前漆器の技法を用いた食器などへの加工・販売などによるSDGs達成を通じた地方創生。

【結果】
環境負荷の低減と付加価値の高い持続可能な生産の実現。新規取引の増加、売上増加。2019年6月に開催されたG20、COPへの2年連続の参加などによる海外からの引き合いの増加。リクルーティングや社員のモチベーション向上など。

〈会宝産業株式会社〉石川県金沢市

参照:会宝産業株式会社

【経緯】
SDGsが定められる以前から自動車のリサイクル事業を行っていた。また、使用済みの自動車による土壌汚染や不法投棄が問題となっていた発展途上国に、リサイクルの技術や知識を提供してきた。これらの取り組み全般をSDGsの各目標と関連づけて整理した。

【取り組み内容】
国際リサイクル教育センターの開設、国内外の研修生への技術・知識の提供。発展途上国でのリサイクル工場の建設、解体ノウハウの提供。政府への自動車リサイクル政策の立案サポートなど。

【結果】
外部評価による社員の意識変容。離職率の減少。新卒者の獲得。

〈齋藤木材工業株式会社〉長野県小県群

参照:齋藤木材工業株式会社

【経緯】
昨今、唐松集成材は安価な輸入材に押され、出荷量・生産量が減少していた。国産樹種で最高ランクの強度等級を誇る材質を強みとして輸入材との差別化をし、地元の木材を利用することで持続可能な森林経営と地域経済の活性化という社会課題を解決するためSDGsに取り組みはじめた。

【取り組み内容】
販路拡大と認知度の向上のため、カタログなどを製作し「信州唐松丸」をブランド化。ブランドステッカーを作製し、梁、柱に1本ずつ貼って出荷。信州唐松丸を使用したユニットハウスなど、新たな事業モデルの開発。

【結果】
ブランド認知が進み、信州唐松丸が躯体の住宅を上棟。販売パートナーの登録。ステッカーにより工務店は生産地や材種が一目でわかるため、施主に説明しやすく好評など。

〈信州吉野電機株式会社〉長野県塩尻市

参照:信州吉野電機株式会社

【経緯】
OEM(他社ブランドの製造)が主な事業だったが、自社事業へ領域を広げることを計画していた。社内の前向きな理解や自社の事業領域拡大につながる新たな技術獲得に向けて、SDGsを切り口にした補助金を活用し、一歩踏み出すこととした。

【取り組み内容】
県補助金を活用し、生分解性プラスチックを使ったゴルフティーの開発。「教育訓練基準」の制定と積極的な人材育成による社員のモチベーションの向上。障がい者の積極的な雇用。品質マネジメントシステムと環境マネジメントシステムの経営への融合、それらをベースにした不良品削減活動、廃棄物のリサイクル化、省エネの推進。自社の温室効果ガスの排出量の把握と抑制。

【結果】
ゴルフティー製作を通じた生分解性プラスチックを使った製品開発ノウハウの蓄積。今後の新たな製品展開への足掛かりの構築。不良品削減活動、廃棄物のリサイクル化、省エネの推進により、年間約2,000万円前後の削減を実現など。

②卸売業・小売業

〈株式会社水島紙店〉長野県長野市

参照:株式会社水島紙店

【経緯】
新聞用紙などの印刷用紙の生産量の減少と、世界規模の脱プラスチックの動きによりビニール袋から紙袋への変更が広まりつつある。これらの環境変化をとらえ、長野県に紙袋を専門に制作する企業がなかったことから、オーダー手提げ袋制作事業「手提屋」を立ち上げた。

【取り組み内容】
店舗で使用する袋をポリから紙に切り替える「紙袋プロジェクト」を開始。長野市・須坂市・中野市の100店舗を訪問(飲食業、建設業、農業、食料品や雑貨、衣料品などの小売業)。

【結果】
新規販路の開拓。SDGsの提唱に即した事業として、メディア取材や教育団体での講演依頼の増加。認知度の向上。

〈有限会社タケイ電器〉岐阜県中津川市

参照:有限会社タケイ電器

【経緯】
自然環境の悪化、人口減少、地方衰退の問題などに対して、社会の持続可能性に危機感を感じた。

【取り組み内容】
再生可能エネルギーである産業用太陽光発電事業への取り組み。農地に太陽光発電設備を設置した、発電事業と営農を両立するソーラーシェアリング(営農型発電)事業。あらゆる人が平等に、また子育てや介護などそれぞれの事情に合わせた働き方や、やりがいを感じられる職場環境の実現。

【結果】
外務省の特設サイト「ジャパンSDGsアクションプラットフォーム」掲載。社員のモチベーション向上。

〈三藤株式会社〉大阪府吹田市

参照:三藤株式会社

【経緯】
大阪商工会議所、UNEP公益財団法人地球環境センターなどから、SDGsのPR活動の一端を担うバッジを作製してほしいという依頼がきっかけ。

【取り組み内容】
持続可能な再生素材を使用したバッジ作製。持続可能な再利用の綿布を使用した刺繍エンブレムの作製。再生紙を使用したステッカー、ペットボトル再生利用ポリエステルを使用したワッペンの作製。

【結果】
提携工場のあるパキスタン、中国での持続可能な労働者の確保と、労働者の賃金向上による子どもたちへの教育環境の整備。

〈京都831家〉京都府京都市

参照:京都831家

【経緯】
近年、食品ロス、農林水産物などの在庫の大幅な増加、価格の低下が問題になっている。これにより、消費者の意識が変化しつつあることからSDGsを学び、達成に向けて取り組むことが大切だと実感し、事業の立ち上げを決意した。

【取り組み内容】
地元の農家が育てた野菜の加工、新たな商品として販売。リモート勤務による働き方改革。無添加商品の提供。

【結果】
無添加のドレッシング、ソース、ジャムなど、商品としての新たな価値の創出。個人が独自で働くことができる環境の構築。

〈株式会社あいち補聴器センター〉愛知県岡崎市

参照:株式会社あいち補聴器センター

【経緯】
補聴器を「売る」だけではなく、聞こえに困っている人やその家族の立場に立って考えることが仕事の本質ととらえ、補聴器店が地域で果たせる役割を追求したいと考えた。

【取り組み内容】
地域社会における身近な難聴者の聞こえの応援団活動。補聴器を「隠したいもの」から「自慢したいもの」に変える取り組み(デコ補聴器)。日本語映画の字幕情報発信。難聴児、障がい児、健聴児が一緒に楽しむイベント「音あそび」。

【結果】
難聴者の「あったらいいな」を実現。補聴器に対する地域社会のイメージと意識の変化。難聴・補聴器の理解促進。

③建設業

〈株式会社やましたグリーン〉東京都八王子し

参照:株式会社やましたグリーン

【経緯】
お客やその家族に対し、植物の手入れを無理なく続けられる庭づくりを提案した際、植物の命をつないでいくことは社会のためになると気づいたことがきっかけ。

【取り組み内容】
さまざまな事情で伐採しなければならなくなった植物を引き取る「植木の里親」事業。やむを得ず伐採した樹木の再資源化。新たな里親を探す「もらえる植物園」の開設。

【結果】
採用の問い合わせ、SDGs経営に積極的な企業からの引き合いの増加。

〈株式会社太陽住建〉神奈川県横浜市

参照:株式会社太陽住建

【経緯】
地域での仕事が少なかったが、ごみ置き場の設置、ごみ拾いから始まり、徐々に地域の人と仲よくなり仕事が生まれるようになった。すると、お祭りのボランティアに声がかかったことがきっかけで、ほかのボランティア活動にも携わるようになり、現在の活動に至った。

【取り組み内容】
地域住民が集う「井土ヶ谷アーバンデザインセンター」の運営。介護施設などの屋根を借りた太陽光発電システムの設置。再生エネルギーによるクリーンで災害に強く、より安心で安全なエネルギーの普及。障がい者・シニア層への新たな活躍の場の提供。

【結果】
地域の人々とつながりを重視した経営。再生エネルギーの普及。災害に強いまちづくり。すべての人々が生きがいを持って働ける場の創出。

〈株式会社山翠舎〉長野県長野市

参照:株式会社山翠舎

【経緯】
空き家となった古民家が社会問題となり壊されていることを知り、地元の建築企業として、この問題解決に貢献したいと考えた。

【取り組み内容】
古民家から入手できる古木を生かした店舗のデザインや施工。古木を使った家具の製作・販売。廃材となる可能性のあった木材の再利用による廃棄物削減と脱炭素化。空き家の移築やリノベーションによる再活用と地域資源の活用。古木を生かしたパートナーシップの構築。

【結果】
古木を使った設計施工受注の増加。「古木」というブランドの確立。職人の若返りなど。

④物品賃貸業

〈ウォータースタンド株式会社〉埼玉県さいたま市

参照:ウォータースタンド株式会社

【経緯】
SDGsの採択とパリ協定の締結がきっかけとなり、水道直結である「ウォータースタンド」の使い捨てプラボトルを廃止し、マイボトルを使用すれば環境面に優しいことに気づいた。

【取り組み内容】
使い捨てプラボトルをマイボトル(水筒)で代替することを呼び掛ける「ボトルフリープロジェクト」の推進。環境目標を定めISO14001を取得。環境・社会データを記載したウォータースタンドレポートの発行。地方自治体との連携協定を結び、誰もが給水できるウォータースタンドを設置。営業車両ではなく自転車を使用するエコサイクル手当を導入。

【結果】
使い捨てプラボトルの削減。CO2排出の抑制。ステークホルダーとのパートナーシップの拡大など。

⑤金融業・保険業

〈株式会社滋賀銀行〉滋賀県大津市

参照:株式会社滋賀銀行

【経緯】
滋賀県は面積の2分の1が森林、6分の1を琵琶湖が占める環境であることや、その環境を背景とした歴史から環境への意識が強かった。また、近江商人の「三方よし」の精神により、自分だけでなく社会、世の中がよくならないといけないという精神から、早くからCSR(企業の社会的責任)経営を行ってきた。

【取り組み内容】
「しがぎんSDGs宣言」を表明。SDGsに貢献する新規事業に対する融資商品の取り扱いを開始。ニュービジネス奨励金「SDGs賞」新設。SDGs私募債「つながり」の取り扱い開始。LGBTへの住宅ローンの対応開始など。

【結果】
ジャパンSDGsアワード特別賞受賞。金利優遇によってビジネス創出を促進。社会的課題解決を基点とするビジネスモデルの後押し。私募債発行額の一部を銀行が拠出し、社会的課題解決を目指すNPO法人などへの寄付,学校への物品寄贈などに活用。

⑥教育・学習支援業

〈株式会社あおむし〉神奈川県横浜市

参照:株式会社あおむし

【経緯】
日本の子どもの未来に対する失望感は大きく、自己肯定感は低い状態にある。「自己肯定」「他者肯定」「多様性の受容と共有」を柱とし、困難な課題に対して継続して挑戦していく、その礎を育てることに主眼を置き、未来への閉塞感を少しでも解消したいと考えた。

【取り組み内容】
未来発見の創造型ワークショップの実施。1人1冊、自分を描く絵本の作製。全国各地の小学校から大学まで、各種学校にて授業を実践。

【結果】
当事者意識、自己肯定感の育み。適切な自己開示。人との関係性、チームワークの構築。人との思いの共有。

4.まとめ

SDGsに取り組むことにより、コストや従業員の負担が増えるといったデメリットが考えられます。しかし、対外的にSDGsに取り組んでいると示すことによって、企業のイメージ向上、生存戦略、事業機会の創出につながります。
そして何より、社会課題に対応することで、将来起こり得る経営リスクを回避することができるかもしれません。