企業×企業でつくる新たなプラットフォーム Tajimingo ―前編―

2022年から岐阜県多治見市で始まった地域限定のオンラインデリバリー「Tajimingo(タジミンゴ)」。
地元企業や飲食店などの事業者がひとつのECサイトを通じて商品を消費者に届けるサービスです。
異業種同士が手を取り合い新しいプラットフォームを築いていく挑戦について、事業主体企業であり、多治見市内に5店舗展開する株式会社トーカイ薬局の代表取締役・松本成史氏と多治見市内に食品スーパー・オオマツフードを展開し、当初からTajimingoに参画している有限会社大松支店の代表取締役・大嶽克正氏に話を伺いました。

――Tajimingoというプラットフォーム事業が生まれた経緯を教えてください。

トーカイ薬局・松本代表:まず、コロナ禍は一つのきっかけだと思います。
薬の配達に対するニーズが増えていき、配送業者さんからの提案もいただいていました。
ただ、元々は配達よりも「地域のプラットフォームを作って貢献したい」という気持ちが先にありました。
薬局は地域にとってどういったポジションなのか。
お薬をお渡しするだけの場所というより、生活や健康に密着したコミュニティでありたい。
例えば、オオマツフードさんの健康商材をご紹介したり、薬局内の家具とかも地元のものを使ったりするなど、薬局は「モデルルーム」としての役割も果たせるのではないかと考えていました。

株式会社トーカイ薬局の代表取締役・松本成史氏

――地域に向けて、そういった構想をお持ちだったのですね。
では、オオマツフードさんが参画するきっかけを教えてください。

オオマツフード・大嶽代表:1年以上前にトーカイ薬局さんからお声がけをいただきました。
弊社には「地域に密着して愛される店づくり」という理念があります。
その上で宅配サービスやネットスーパー、移動販売などの取り組みを考えていました。
特にニュータウンにお住まいのお客様からは「スーパーがないから困る」「小さい店でもいいから出店してほしい」という声がありました。
ただ、人材も多くいるわけではなくお金もかかると、なかなか踏み切れませんでした。
そこで、Tajimingoに加われば、今までオオマツフードだけではできなかったサービスができるようになるんじゃないか、という期待が一緒に取り組みを始めようと考えた大きなポイントですね。
スーパーが近所になくて困っている方、車で来られない年配の方、共働きで忙しく働いている方に対してお届けできることも地域貢献になるのではないかと。

有限会社大松支店の代表取締役・大嶽克正氏

――お互いに共通の課題をお持ちだったからこそ生まれたマッチングだと思いますが、異業種で一緒にやっていくことの難しさ、考え方や業態の違いという点についての感触はいかがでしょう?

松本:オオマツさんと話をすることになって、健康や食材など今までにない発想や新しい視点を得られます。
お互いにざっくばらんに話ができるためには、根本の考え方がつながっていたり、互いに目指すものがあったりすることが大事だと思います。
取引業者として「オオマツさんは、こんなことを始めたら絶対儲かりますよ」という仕事の提案ではなくて、互いに成長し、課題をクリアしていく関係性でありたい。
うちにはどんな力があるか、逆にどんな力をお借りしたいかをストレートにお話させていただく。
そこに難しさがあっても良い。だからこそいろいろな発見が生まれるのだと思います。

――大手ECサイトとの違いは、関わる事業者がみんなで育ち、みんなで良くなっていくプラットフォームであるという点ですね。

大嶽: Tajimingoは、たくさんの方に利用していただいて、いかに多治見の企業が参加していけるのか、をビジョンとしているという話を聞いたときに、Tajimingoを通じて互いの事業課題を勉強し合っていけばいいのではと考えました。
例えば、トーカイ薬局×オオマツフードのコラボ商品も開発してみたいです。
一社だけではこういった発想ができないので、結びついたことでヒントをいただくことができます。

――Tajimingoでは、同業の他企業も参入するのがとても包括的だと感じます。
同じ地域のスーパーも参加している点はいかがでしょうか?

大嶽:今ではドラッグストアやコンビニでも食品を扱っており、スーパーの競争は年々厳しくなってきていると感じます。
ただ、Tajimingoでは競争ではなくお互いのスーパーそれぞれに味があって長所があると思うので、そこを伸ばしつつ勉強させてもらえる場です。
すでに参加しているマルナカストアーさん、4月から加わるタマノヤさんも、今まではあまり接点ありませんでした。
しかし、今後は互いがどういった商品が売れているのかなどの情報交換をしながら協力し合っていきたいです。

松本:利便性が高まってくると「何でも屋さん」になってしまいがちです。
どこでも何でも手に入るというのは便利なようですが、競争力や差別化が薄れているのではないかと感じます。
逆に「うちは肉と魚が得意だから野菜はもう他社に預けよう」ぐらいのスタンスでも良いのではないかと。
昔の商店街では、八百屋、肉屋、魚屋と、それぞれが一つの群れの中に入っていて、「この魚は鍋にするとおいしいから、あの八百屋に行って白菜を買っておいで」といったコミュニケーションがありました。
これからの時代も、このように弱みを消していくより、それぞれの強みを伸ばしていくことが必要じゃないかと。

――お互いが他社の良さを認め合い、尊重し合うことが必要ですね。

松本:一つのアイデアですが、現在準備中であるフードデリバリーの参加飲食店さんで、オオマツフードの食材を使ってもらうとする。
飲食店発信で、味付けや調理方法などを伝えて、家でも同じように食べられるような情報発信をする。
その上で地元スーパーの食材のおいしい食べ方を飲食店で試してもらえて、飲食店のファンも増える。
地域のつながりの中で生まれる発想も自社だけではできないことだと思います。

「Tajimingoを通じた事業の発展と街を育てるプラットフォームとは」後編はこちらをチェック! 

Tajimingo
https://tajimingo.com/

今回の取材先

株式会社トーカイ薬局
本社所在地:愛知県春日井市中央台7丁目9-2
設立:1990年
URL: http://www.tokai-pharmacy.com/

有限会社大松支店
本社所在地:岐阜県土岐市下石町888-6
設立:1930年
URL: https://oomatsufood.co.jp/


(取材・文:笹田理恵)