「私はどこに向かうのか?」人は人で生きられる。コロナが怖いわけではない。

最期の1%まで幸せに生きる【 連載 第5回 】

苦しくつらい時期を支えてくれる人々

自分がこれから人生においてどこに向かえばよいのか分からなくなる経験を皆さんはしたことがありますか? 私は今、まさにその真最中です。

実は世の中で今一番大変なことが、弊社にも起こってしまいました。これは今まで経験したことがない大変な事態です。自分の意思や何かを変えたり、改めたりすれば収まるものではありません。
たくさんの困難を経験した私の人生においても、味わったことのない大きな苦難でした。苦しくつらい時期を経験中です。

目に見えないものに完全にノックアウトの状態です。しかし、見えてきたものもたくさんあります。それは人です。本当に体がつらくても愚痴一つ言わず、黙々と働いてくれる人。本当は不安なのに、頑張って笑顔でいてくれるスタッフ。その一方で、怒りをあらわにするスタッフもいました。

また、後方支援してくれる人。ご家族はこちらが迷惑をお掛けしているのに、「頑張ってね」と栄養ドリンクを差し入れてくださったり、温かい言葉を掛けてくださったりします。

そして、心の支えになってくれた心友。私にはたくさんいることが分かり、感謝の気持ちでいっぱいです。

医師も本物がよく分かりました。「24時間体制で応援するから上原さん、いつでも遠慮なく電話してきてよ!」と、今回どれだけの方々に支えていただいているか分かりません。いくら感謝してもしきれません。

家族の迷いや苦しみ

一方で、たくさんのご家族の迷いや家族の最期に対する苦渋の決断も目の当たりにしました。

保健所や病院から感染した利用者様がどのような最期を希望されているかを聞き取ってほしいという指示があり、もしコロナで症状が悪化した場合を想定して、「ご家族として最期をどうしたいですか?」「どのようなお考えですか?」と私が聞く役割になりました。

しかし、「大体…誰のせいでこうなっているのか?」と言われても仕方ない中、一人として私を責めるご家族はいらっしゃいませんでした。ただ、「上原さん、どう思う?」「どうしたらいいかなぁ?」「家族が考えなきゃいけないよね…」と悩むご家族がたくさんいらっしゃいました。

また、「元気な時は冗談ぽく、私は一切延命はしないで! と言っていたけど…今じゃ認知症になり、本当はどうしたいのか? 私が母の命の期限を区切るようでつらい…」と泣く方もいました。

自分の意思や最期はどうしたいかを伝えておかないと、家族は本当に苦しみます。それも口頭ではなく、しっかりと文章にして残さないと分からないことがたくさんあることも今回は経験しました。

最後の決断は本人にしてほしい

今、エンディングサポートやエンディングノート作りのお手伝いをしています。皆さん口をそろえて、家族に迷惑を掛けず最期を迎えたい! とおっしゃいます。一番の迷惑は何か? に今回気付くことができました。

特に、家族に延命をしない、延命をする、また、途中で「これ以上はかわいそうだからやめてください」などと決断させることほどひどいことはないと、改めて強く強く感じました。やはり、自分の人生の最期の決断を自分以外の人に任せてはいけない! 絶対に自分で決めてほしいと心の底から感じています。

このコラムが世に出る頃には、新しい気持ちで再出発できているはずです。
人は人で生きられる。コロナが怖いわけではない。
怖くさせている人がいると経験しました。