企業戦略を立てる方法として、有名で古くからあるSWOT分析。自社の強みと弱みを明らかにし、それを活かして市場や競合他社とどう戦っていくか組みたてていくフレームワークのひとつです。SWOT分析は他に比べ、シンプルで取り組みやすく、最初に手をつけるフレームワークとして最適です。
そこで今回は、このSWOT分析について、行う目的や簡単なやり方を企業の実例を挙げながらご紹介します。
1.SWOT分析とは
SWOT(スウォット)分析とは、ハーバードビジネススクールが1920年代に提唱した、企業や事業の現状分析をするときなどに用いるフレームワーク(問題解決のための論理的思考を助ける、考え方の枠組み)のことです。
内部環境と外部環境の分析を通して、競合他社や市場で自社の強みをどういかせるかなど、経営戦略を立てる手助けとなります。
2.SWOT分析の4つの要素
SWOTという名は、強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4単語の頭文字から成り立っています。強みと弱みは内部要因、機械と脅威は外部要因と位置付けます。
それぞれの要因は以下の通りです。
内部要因
- 自社の強み(Strength)… 目標達成のためにプラスに働く、自社の持っている要因
- 自社の弱み(Weakness)… 目標達成のためにマイナスに働く、自社の持っている要因
- 外部要因
- 外部の機会(Opportunity)… 目標達成のためにプラスに働く、市場や競合他社の要因
- 外部の脅威(Threat)… 目標達成のためにマイナスに働く、市場や競合他社の要因
強みと弱みには、商品やサービス・ブランド・価格・人材・資産・知名度・コストが挙げられます。
自社に起因する、内部要因であり、自社でコントロールできる事柄です。
機会と脅威には、経済・政治・法律・市場情勢・競合他社などが挙げられます。
自社ではコントロールできない外部で発生する要因で、自社の業績に影響を与えうる事柄です。
3.SWOT分析を行う目的
SWOT分析を行う目的は自社の成功要因を導き出すことです。
自社の弱みを知ることで、課題を明確にでき、強みを把握することで、それを最大限生かせるような市場の発見、経営戦略を立てられます。
さらに自社ではコントロールできない外部要因も、そこに対してどのように対処していくか対策を立てられるのがSWOT分析で得られるメリットなのです。
4.SWOT分析のやり方
① SWOT分析を行う目的を明確化する
はじめに、この分析をする目的を定めます。やみくもに分析を始めても正確な分析結果は得られません。複数人が関わるのであれば、方向性がずれ目的を見失うことも考えられ、正確な分析結果を得られません。目的は共有することが必要です。
② それぞれの情報を収集し、分析する
どんな情報でも集め、それぞれの要因に分類し書き出します。分類に分ける判断基準は自社でどうにかできることは内部要因、できないものは外部要因となります。
ここでマクドナルドを例にSWOT分析をしてみましょう。
マクドナルドの高い認知度や商品開発力、ファミリー層や子供への人気が強みであり、割安感や低価格帯による利幅の小ささが弱みであることが分かります。
外部要因としては、個食など食事形態の変化や高付加価格商品の好調が機会、他社飲食業のテイクアウト事業への参入が脅威にが挙げられます。
5.クロスSWOT分析で更なる解析を
SWOT分析が完了し、自社の弱み強みや外部状況を把握したところで、さらに踏み込み「クロスSWOT分析」を行ってみましょう。
クロスSWOT分析とは、SWOT分析で出たそれぞれの要因を掛け合わせて、戦略を考えていく分析です。
- 強みx機会 … 機会により得られるチャンスを、強みによりどう活かすか
- 弱みx機会 … 機会により得られるチャンスを、弱みを知ることでどうカバーし活かすか
- 強みx脅威 … 脅威により与えられる損失を、強みによりどのように免れるか
- 弱みx脅威 … 脅威により与えられる損失を、自社の弱みと合わせてどうカバーするか、見切るか
ここで最も着目すべき点は、「強みx機会」であり、自社の強みを最大限に生かした市場での機会を立証することができます。逆に、「弱みx脅威」の分析では最悪の事態を回避するための方策について模索することができます。ここまで分析できると、情報がさらに戦略立てに有益になることがわかります。
ここでマクドナルドのクロスSWOT分析もしてみましょう。
強みと機会を掛け合わせれば、ネームバリューの高さを生かした価値ある新商品の開発、弱みと機会では、新たなサービスの提供や回転率の向上が想定されます。
強みと脅威の掛け合わせには、食事形態の変化に伴う宅配サービスへの着手、弱みと脅威には利益の出ていない店舗や商品の撤退が仮定できます。
実際、マクドナルドはこのような戦略を立てました。
- スイーツや本格派コーヒーの開発を行い、キッズやファミリー層以外のターゲットを増やしました。
- 高価格帯の商品を価値ある新商品として開発し、夜やビジネス層の市場を狙いました。
- 大型チェーンでは珍しかった家庭への宅配サービス「マックデリバリー」を開始しました。
これにより、マクドナルドは2014年の期限切れ食材の使用などによる過去最大の赤字からV字回復を成功させました。コロナ渦においても売上を着々と更新しています。
6.SWOT分析と3C分析の違い
SWOT分析に似たフレームワークとして3C分析があります。
SWOT分析も3C分析も、自社の事業戦略を立てるための現状分析に使用します。
分析する要因はそれぞれ、SWOT分析では、強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの要因を分析し、3C分析では、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つを分析します。
外部と内部の視点では、外部がSWOT分析では機会(Opportunity)・脅威(Threat)になり、3C分析では顧客(Customer)・競合(Competitor)になります。内部はSWOT分析が強み(Strength)・弱み(Weakness)、3C分析では自社(Company)となります。
3C分析・SWOT分析でそれぞれ重要視するポイント
分析するうえで異なる点は、3C分析は最初に顧客の分析を行い、そのうえで競合と自社の戦略の違いを考えるフレームワークです。主役は「顧客」であり、顧客ニーズが重要視されます。
一方、SWOT分析は「自社」が主役になります。自社の内外要因を明確にするためのフレームワークです。外部要因の機会・脅威もすべて自社を把握するためのものです。
3C分析とSWOT分析の目的の違い
それにより目的も異なってきます。
3C分析の目的は「自社の強みを明確にすること」です。顧客ニーズを熟知したうえで、競合との差別化を図るには自社の強みをどう活かすかを考えるのが3C分析です。
一方、SWOT分析の目的は「自社の成功要因を導き出し、窮地の状況にも備える準備をする」ことです。強みと弱みを把握したうえで、どんな状況下でも柔軟に立ち向かう方法を明確にするのがSWOT分析なのです。
7.まとめ
経営戦略を立てるには、自社を取り巻く外部要因と、自社の現状である内部要因を明らかにして、両面から分析することが不可欠です。それを総合的にアプローチできるのがSWOT分析です。
他社より優れている点を活かし、外部環境の変化への柔軟な対応をしていくことがポイントとなります。
この記事はOHACO TVでもご紹介しています!ぜひご覧ください!
ライター・編集者
広告代理店勤務を経て、現在はマーケティング・デザイン・HP制作会社である株式会社SMC-POWERでWeb記事ライティングやコンサルタント補佐を行う。