自社サービスの名前を、商標登録の侵害として警告されました。

藤田弁護士の法律相談所【連載 第14回】

自社が展開するサービスについて「X」という名称をつけて展開していました。
ある日突然、B社から警告書が来ました。「X」という名称はB社が商標登録しているものなので、使用をただちに停止するよう警告する内容でした。

商標を登録すると得られる権利

「商標権」とは、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を「財産」として守るためのものです。「マーク」や「ネーミング」が財産として保護されるためには、登録しようとする商標(「マーク」や「ネーミング」)とともに、その商標を使う商品やサービスを指定商品・指定役務として指定し、特許庁に商標登録を出願する必要があります。
特許庁の審査を経て、登録料を納付することにより、商標が登録されると、商標権が発生します。存続期間は10年ですが、何度も更新することができます。
商標が登録されると、指定商品・指定役務について、登録した商標を独占的に使えるようになります。
さらに、第三者が指定商品・指定役務と同じ商品・役務に、自己の登録商標と同じ商標や似た商標を使用している場合、そして、第三者が指定商品・指定役務と似た商品・役務に自己の登録商標と同じ又は似た商標を使用している場合に、第三者に対して使用をやめるよう求めたり、損害賠償を求めたりすることができます。

他社が商標登録するより前に、名称を使っていた場合

B社が、商標登録をしているか、登録している場合にはその指定商品・役務(サービス)の範囲を確認します。
B社が商標登録をし、登録している指定商品・役務と同じ又は類似する商品・役務の場合であっても、B社が商標登録の出願をする前から、その商標を使用していた場合はどうでしょうか?
無償でその商標を使用できる先使用権(せんしようけん)が認められないか検討する必要があります。
先使用権が認められるためには、①商標登録出願前から、日本国内で指定商品・指定役務と同じ商品・役務や似た商品・役務について、その商標や類似の商標を使用していたこと、②不正競争の目的がないこと、③商標登録出願の際に、自分たちが使っていた商標が自分たちの商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたこと(周知性)、④継続して商品・役務についてその商標を使用していること、が必要です。
また、B社が商標登録をし、登録している指定商品・役務と同じ又は類似する商品・役務の場合、その商標登録について無効理由はないかも検討する必要もあります。

こうした請求を受けないためにも、そして、他社が同一の名称で商品・サービスを展開することを防ぐためにも、自社が展開する商品やサービスについて名称をつけて展開する場合は、先に商標登録をしておくことをおすすめします。

商標については、専門的な対応が必要です。商標権侵害の警告を受けた場合は、自己判断をせず、弁護士に相談することをおすすめします。