通信環境が整備されたことやスマートフォン・タブレットの普及により、動画の視聴が日常的になりました。これはマーケティングにも大きく影響し、SNSや動画プラットフォームでの動画広告が広がっています。
また、街を歩いていても、タクシーや電車での移動の時にも、デジタルサイネージで動画広告をよく目にするようになりました。
今回は、企業での動画マーケティング成功事例21選と動画活用のポイントを紹介します。
1.動画マーケティングとは
①概要
動画マーケティングは、商品やサービス、自社の魅力などを、動画を使って発信するマーケティング手法です。例えば、YouTubeでの商品紹介やインタビュー動画は、皆さんも見たことがあると思います。
また、自社サイトや会社説明会で人材採用の動画を使用するのも動画マーケティングと言えます。
②動画マーケティングが広まった背景
では、なぜここまで動画マーケティングが広がったのでしょうか。
その背景には、通信環境が整備されスマートフォンなどでSNSがいつでも見られるようになったこと、簡単に動画を作製し発信できるようになったこと、TikTokやYouTubeなど動画コンテンツのファンが増えたことがあります。
③動画マーケティングのメリット
動画マーケティングは視覚だけでなく、聴覚にも情報を届けられるため、情報をたくさん、わかりやすく伝えることができます。
また、広告の表示回数(インプレッション数)、再生数、再生時間、クリック数などのデータから効果を検証することができます。そのため、PDCAサイクルを回して広告内容を改善できることもメリットの一つと言えます。
2.動画マーケティング成功事例20選
ここでは、動画マーケティングの成功例を紹介します。自社で動画マーケティングを行う際の参考になれば幸いです。
①ホームメイト
テレビCMとYouTube動画を連動させ、幅広い層に情報を提供しています。有名女優を起用して、ユーザーの注意を引いています。また、「ホームメイト」と検索することを行動喚起(Call To Action:CTA)とし、ユーザーの行動を促そうとしています。
②ベネッセ
ベネッセによる教育番組『しまじろうのわお!』の大人気ダンス曲「ハッピー・ジャムジャム」が、YouTubeで閲覧可能です。しまじろうチャンネルでは体験DVDの映像なども閲覧できるため、効率よく情報提供できます。
また、検索キーワードで引っかかりやすいようにハッシュタグを使用したり、チャンネル内からホームページにアクセスできるようにしたりして工夫しています。
③コメリ
ホームセンター「コメリパワー」の動画では、「グッバイ特売日」という言葉を使って、見る側の注意を引いています。その後、さりげなく商品を紹介しながら、その意味を説明しています。
チャンネル内では、コメリパワーの特徴とグッバイ特売日についてテキストでも説明しています。また、チャンネル内からホームページにアクセスが可能です。
④スーパーホテルLohas
「スーパーホテルLohas」では、実際のホテルを利用してサービスについて訴求しています。また、ホームページでの予約の特典をアピールしたり、動画の最後を「スーパーホテル Lohas」と名称で締めくくったりして、ホームページに誘導しています。
⑤三和シヤッター工業
三和シヤッター工業の動画は、動画が進むにつれてアニメーションから実写に変化していきます。また、ユーザーに伝わりやすよう、マザーテレサの言葉を自社ビジョンとつなげて表現しています。
チャンネル内には、ホームページとデジタルカタログのURLを示し、アクセスしやすいようにしています。
⑥Airレジ
レジアプリ「Airレジ」では、テレビCMとYouTube動画でサービスについて訴求しています。実際にユーザーが経験したことを伝えているため、リアルなメリットを提供できています。
サービスを覚えやすいように、動画はサービス名、ユーザーの声、サービス名の順番で伝えるというシナリオで構成されています。
⑦人工知能型OOH広告
日本マイクロソフトが提供する「人工知能型 OOH広告」の動画では、デジタルサイネージの広告を見た人の情報をAIが計測してデータを蓄積し、マーケティングに活用できることを紹介しています。
チャンネル内では、テキストでサービスを説明し、SNSやホームページなどのURLを掲載し、興味を持った人が詳細を確認できるようにしています。
⑧freee
会計ソフト「freee」の動画では、実際の操作画面を使って使い方を紹介しています。ソフトによる確定申告の方法を丁寧に説明しているため、動画を通して自分で確定申告ができるイメージを伝えています。チャンネル内にURLを掲載し、すぐにfreeeを使えるよう工夫をしています。
⑨ジョブカン
勤怠・システム管理システム「ジョブカン」では、ジョブカンのシステムが働き方改革に役立つことをテレビCMとYouTube動画で訴求しています。
また、ジョブカンで解決できる業務を一覧で表示したり、コストなしで始められることをアピールしたりしています。問題提起→解決法の提示→CTAを15秒という時間で宣伝しています。
⑩逆転オセロニア
(動画は現在非公開)
オセロを進化させたゲームシステム「逆転オセロ二ア」では、ルールの説明やオンライン対戦の魅力などを、約4分の動画で簡潔に紹介しています。
そのため、動画を見るだけでゲームの概要を直感的に理解することができ、訴求力のある動画になっています。
⑪ダスキン
ダスキンが提供している家族介護支援サービスを紹介する動画です。アニメーションで表現することで、シリアスになりがちな介護の内容を抵抗なく見ることができます。
また、静止画ではイメージしにくい介護支援サービスをわかりやすく説明しています。
⑫au
桃太郎、浦島太郎、金太郎をメインにストーリーが展開される、誰もが知るCMです。見る側はストーリーを追ってしまうため、商品に興味がなくてもつい見てしまいます。
そのため、宣伝という感覚を排除しつつ、宣伝物を認識してもらうという、マーケティング動画の役割をいかんなく発揮した動画になっています。
⑬ベルク
スーパーマーケットをチェーン経営する「株式会社ベルク」の採用動画です。就職活動の女性が悩みながらも、働く理由を見定めるというストーリーで展開されていきます。感動できるストーリーであるため、こちらもau同様、宣伝という感覚を排除して見ることができます。
⑭日本財団「海と日本プロジェクト」
日本財団「海と日本プロジェクト」は、現代の海に関する環境や社会的な問題などを、次世代に伝えていくために発足しました。魚のさばき方から海への関心を高めるというコンセプトや動画内の世界観の統一などによって、動画のブランディングに成功しています。
⑮武田塾
フランチャイズ学習塾「武田塾」は、YouTubeチャンネルで参考書の解説や受験のテクニックなど、受験生に役立つコンテンツを定期更新しています。
コンテンツを「受験生の悩み解決」など受験生や保護者の目線で作製することにより、ファンの増加と知名度の向上につなげることに成功しました。
⑯SmartHR
クラウド人事労務ソフト「SmartHR」では、自社のYouTubeチャンネルに加え、サービスサイト(特定の商品やサービスに関する情報を掲載したサイト)にも動画を利用しています。これにより、サイトを訪れた見込み顧客に、製品のデモや課題解決の方法を効果的に伝えています。
⑰Stock Sun
コンサルティングを専門とする「Stock Sun株式会社」は、YouTubeチャンネル経由の売上が大きく、YouTubeチャンネルが大きな収益源となっています。
所属するコンサルタントの知見を生かし、ターゲットを絞った動画を発信することで、受注につながっています。
⑱Video Brain
法人向け動画編集ツール「Video Brain」の動画は、タクシーのデジタルサイネージに配信することでビジネスマンの認知を獲得し、その場での検索、サイト閲覧につなげています。タクシー広告は無音であることが多いため、セリフに字幕をつけるといった工夫をしています。
⑲クライス&カンパニー
経営幹部などハイクラス人材の転職を扱う人材紹介会社「株式会社クライス&カンパニー」は、2017年にタクシー広告の配信を開始しました。人事部長クラスをターゲットとして、「幹部採用25年の実績」をアピールし、企業の認知度を高めています。
⑳三井住友カード
三井住友カードが発行する富裕層向けのクレジットカード「三井住友カードプラチナリファード」は、高所得者をターケットとしているため、テレビCMやYouTube広告ではなかなかアプローチが難しい状況がありました。
タクシー広告を配信することで、ターゲット層のカード入会を促しています。
㉑ムサシ大学
武蔵大学は新宿などのターミナル駅から電車で20分以内に位置していることから、電車利用の受験生が多いことが特徴でした。そのため、駅のデジタルサイネージやSNSで動画を配信することにより、受験生向けサイトへの送客を増やすことに成功しました。
デジタルサイネージでは音声なしで動画を再生することが多いため、アニメーションと実写で動画を作製し、印象に残りやすいよう工夫されています。
3.動画活用のポイント
①目的を明確化する
今や動画は、マーケティングのトレンドと言っても過言ではありません。しかし、「トレンドだから」と言って闇雲に始めても、思ったような効果が得られない可能性があります。そのため、まずは目的を明確にすることが重要です。
目的の例としては、集客、ブランディング、認知度向上などがあります。どのような目的を達成するのかを明確にしておくと、動画の内容や伝え方を決めやすいです。
②ほかの広告との連携を意識する
動画を活用する時には、動画以外の広告との連携を意識して動画コンテンツを作製する必要があります。動画は拡散されることで効果をもたらすメディアです。
そのため、どれだけ訴求力のある動画を作製しても、その存在が認知されなければ視聴にはつながらず、目的を達成することが難しくなります。
拡散されるためには、ターゲットとなるユーザーがどのようなメディア(Instagram、Twitter、Facebookなど)を活用しているかを洗い出し、そのメディアとの連携を意識することが大切です。これにより、内容や訴求の方法が定まり、拡散されやすくなります。
③効果測定をする
先述したように、インプレッション数、再生数、再生時間、クリック数などのデータから、効果を検証することができます。これらのデータを参照し、目的を達成できているかを判断し、できていないと判断されれば、PDCAサイクルを回して内容を改善させることが必要です。
4.まとめ
動画は、YouTubeなどで公開するだけでなく、さまざまなメディアと連携し、幅広いユーザーに商品やサービスを伝えることが可能です。目的をしっかり定め、商品やサービスに合った動画マーケティングを展開していきましょう。
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編集者・ライター
フリーの編集者。書籍や情報誌などのデザインを携わる。主に看護・介護業界の情報誌の編集に携わり、グルメ・カルチャー・スポーツのジャンルの編集の経験あり。