欲しいものが見つからない人に「これが欲しかった」を届け、ユーザーから絶大な支持を得る猫壱。
猫と飼い主の気持ちに寄り添い、レビューを生かした商品開発で信頼を獲得しています。
ユーザーとSNSを活用してリアルタイムで交流し、応援される秘訣を竹内淳代表にお聞きしました。
商品やブランドは、ユーザーに共感し応援してもらう時代
―アメリカのペット商品の代理店からスタートされていますが、オリジナル商品を作ったきっかけは?
代理店の頃から品質や色、形を改良したいという思いはありましたが、大きなきっかけは卸先から「直接アメリカから購入したい」と言われ、取引先から外されてしまったことです。その対策として自社ブランドの猫壱を立ち上げました。
―オリジナル商品の開発で大切にしていることと課題は?
店頭で推奨販売を行っていた時、お客さんが「売り場にある商品に魅力を感じなくて、一番マシな物を選んでいる」とおっしゃっていました。その言葉がすごく印象に残っていたので、私たちは「消去法ではなく、猫壱のこれがほしい」と言ってもらうことを常に考えています。
開発を始めてまもなく猫用食器がヒットし、食器屋としてやっていけそうなほど好調でしたが、そのヒットが終わってしまったら本当の意味でナンバーワンになれないと思い、違うカテゴリでの開発を続けました。どう新商品を生み出していくのかは大きな課題です。
―食器の次に売り上げが伸びたのは?
爪とぎシリーズの「バリバリボウル」です。2018年に発売した猫用の爪切りも、累計販売個数が10万個を超えています。
―これらの商品がヒットした要因は?
ユーザーとコミュニケーションを取りながら、ニーズを的確に捉えていた点です。例えば食器では「高さが必要」「こぼれにくくする返しがほしい」といった声を生かし、機能やデザインで他とは違う特徴を出しました。
品質面も重要だったと思います。たまたま食器や爪とぎで優れた開発パートナーが見つかったこともヒットの大きな要因だったと思いますね。
―どのようにユーザーとのコミュニケーションをとっていますか?
ブログとインスタグラムを使い、直接ユーザーとつながっています。2015年から始めたインスタは、今では6万人のフォロワーがいますね。
―ブログでは、どのようにユーザーとつながるのでしょうか?
ブログの来訪者数は月間15万人程度です。来訪者数を多く獲得する中で、その何人かがメルマガを登録してくださりメール会員になる流れですね。メールでネットアンケートを実施し、お宅訪問したこともありました。
―皆さんユーザーの域を超えて、猫壱のファンになっています。ファン獲得を成功している秘訣は?
ファンの育成というテーマでは、試行錯誤を続けました。結果、大切だったのは「期待を裏切らない良い商品を出すこと」。つまり「ハズレを出さないこと」だったと思います。
―なるほど。毎回ユーザーの期待を超える商品を生み出すのですね。しかし、その開発は非常に大変なことですよね。
商品ニーズを見誤ったり設計不良だったり、中にはうまくいかないこともあります。しかし、期待通りにならなくても包み隠さずユーザーに伝える姿勢が信頼につながっています。
―インスタで新商品の開発状況も公開されています。
開発中の商品を公開しながら「どのデザインが好きですか?」「現在商品についてどんな不満を感じていますか?」といった投稿をしています。これに対するリアクションが非常に多く、過去最高だと投稿に対して約1500件のコメントが寄せられました。
―商品開発中にそれだけの声が集められるのは貴重ですね。
おそらく一緒に猫壱を育てている心境ですよね。今は、ブランドに対する憧れよりも「共感して応援する」という関わり方に変化しているのだと思います。
―海外での売り上げも好調ですね。
全体の約40%が海外で、そのほとんどがアメリカでの売り上げです。アメリカも猫ブームになる少し前に参入できました。
―「世界中の猫と飼い主を幸せに」という理念を実現されているのですね。今後の目標は?
5年後までに猫の生活用品の中で一番支持されるブランドを目標にしています。まだ参入できていないカテゴリも多く、日々開発に取り組んでいますので新商品を楽しみにしてほしいです。
―最後にOHACO読者へのメッセージをお願いします。
私は、人と会社は一緒だと思っています。今の実力値を気にするより、継続して実力を伸ばすことが重要です。それは売上規模だけでなく、課題や問題に対しての改善も含め、1年経った時に「今年もすごく変わったね」と言われることを大事にしています。変化、進化し続けることの必要性に共感してもらえたらうれしいです。
【今回の取材先】
株式会社猫壱
所在地:東京都新宿区西新宿6-15-1 セントラルパークタワー ラ・トゥール新宿605
設立:2008年1月
年商:15億円(2020年度)
従業員数:9名(2021年7月現在)
URL: https://www.necoichi.co.jp/
(取材・文:笹田理恵 / 編集:OHACO編集部)
編集者・ライター
ビジネスメディア『OHACO』の特集企画・取材を担当。アパレルデザイナーという異業種からライター・編集者に転身。得意なジャンルは、企業取材、環境活動・SDGs、ファッション産業など