その「怒り」はどこから?経営者だからこそ伝えたいアンガーマネジメント術 4選!【特集後編】

怒りの理由やきっかけは人それぞれですが、「怒り」の対処方法を学んでおくと「やってしまった……」という後悔が少なくなるはず。
今回は、経営者が「怒り」でトラブルを起こしやすいケースへの対処法を日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介先生に解説してもらいました。

【特集前編】では怒りのメカニズムやアンガーマネジメントの2大対処法をご紹介!

CASE1:会社を大事に思ってくれない従業員にイライラして空回り

「自社商品の売りを説明できない」
「会社の売上を上げるために必死にならない」

従業員と自分の熱量にギャップを感じる経営者。なぜ従業員が自分と同じように会社のことを考えてくれないのだろうか…

Answer

経営者にとって「会社」は、自身が育てる唯一無二の存在ですが、従業員にとっては「働く場所」。
思い入れが違って当然です。

この怒りの本質は、「自分と同じように思って欲しい」なのですが、ハッキリ言ってそれは無理。
まず、自分がイライラしてしまう理由「会社に対する思いが自分と同じでなければいけない」という偏った考え方を持っていると自覚しましょう。

ケース2:「なんでいつも出来ないの?」 下手な怒り方で部下がやる気をなくしてしまう

「何故いつもミスするの?」
「どうしてこういう結果になったの?」

従業員に怒っても明確な答えが返ってこない。それどころか、部下のやる気はどんどん減る一方……

Answer

下手な怒り方の典型例は下手な怒り方は「リクエストのない人」。
上手く怒るには、必ず「今どう対応してほしいのか」「次からは何を直してほしいのか」などの明確なリクエストを伝える必要があります。

ただし、怒り方の下手な人自身が「どうしてほしいのか」を分かっていないケースがほとんど。
それで部下に「自分で考えろ!」など、最悪な怒り方をしてしまうわけです。

まず、怒っている人が相手にどうしてほしいかを考えてください。
第三者にも分かりやすい明確なリクエスト、思いや考えを伝える怒り方をすれば、部下の反応やその後の結果が全く違ってくるはずです。

ケース3:「家族のことは後回し」 仕事を優先していて、家族の関係性はボロボロ

「家のことは奥さんに任せきり」
「奥さんや子どもから信頼されなくなっている」

会社では仕事をバリバリやれているが、家族との関係性はいまいち。コミュニケーションが十分に取れていない実感はある。けれど、仕事が忙しいからしょうがない……

Answer

事業を成功させた経営者の家庭が壊れてしまうのはよくある事例ですが、経営者の「家族問題」は必ず仕事に持ち込んでしまうものです。

僕の持論では、会社でパワハラをする人間はほぼ100%、家庭がうまくいっていません。
家庭不和になると、職場の人間関係が悪化、仕事の打つ手が中途半端になるなど経営に影響するという悪循環が起こっていきがち。

「経営を成功させたいなら、家庭の環境を良好にする」は、非常に大きなテーマです。
まずは、家庭がうまくいってない状況は、自分に問題があると認識するところから始めましょう。

POINT

仕事を優先する人は、仕事を通じて「何かを証明したい人」です。
成功や幸せ、自分の正しさなど、何を証明したいのかを考えてください。

それは本当に仕事でしか証明できないものでしょうか? 自分の成功の証明のために、仕事に依存している可能性はありませんか?
そもそも「そんなに認められる必要があるのか?」と原点に立ち還って考えてみましょう。

ケース4:「オレの時間を奪うな」パワハラ的思考でイライラして、人望を失ってしまう

「みんな自分と同じくらい仕事して当然」
「なんで俺の仕事の邪魔をするの?」

自分が優秀だと自信があるからこそ、周りのメンバーの仕事ぶりにイライラしてしまう。「何故できない?」と高圧的な態度を取りがちで、チームがいつもピリピリしている。

Answer

日本企業は「仕事ができる人が優秀」だと考えがちですが、こういう人はチームや周りの人のパフォーマンスを落とすので優秀ではありません。

組織全体でパフォーマンスを上げるためには、このように怒る人の存在は逆効果でしょう。
こういった考え方の人がアンガーマネジメントで効果出すのには時間がかかります。

怒りに対する知識を得た上で、コンサルティングを繰り返しながら、その人が怒る原因となっている「意味付け」を見直す必要があります。

採用や業績面でも! 企業における「怒り」のデメリット

SNSが発達した現代では、口コミなどで会社の評判はあっという間に広まり、ハラスメントのある企業はすぐバレてしまい、人を採用できなくなります。

また、パフォーマンスを上げるためには「居心地が良い」「安全な環境」と感じられる心理的安全性の高い組織が求められます。
長期的に見ると、頻繁に怒るワンマン経営者が組織を成長させるのは難しいでしょう。

心理的安全性の低い組織では、生産性が下がり、パフォーマンスを最大限に発揮できません。つまり業績にも影響するのです。

アンガーマネジメントの効果・メリットとは

アンガーマネジメントを続けるうちに「周りの人が自分を助けてくれるようになる」など成功体験的な出来事が日常的に起こります。
仕事のために受講したのに、家族仲が良くなったと聞くケースも多いです。

アンガーマネジメントは、経営者が一人で学ぶより複数人で同時にやることをオススメします。
「もっといいチームを作りたいからアンガーマネジメントを学ぼう」といった目標を掲げ、職場全体で取り入れてみてはいかがでしょう。

【取材先】
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会
[所在地]〒108-0023 東京都港区芝浦3-14-8 芝浦ワンハンドレッドビル6階
[TEL]03-6435-2120
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[URL]https://www.angermanagement.co.jp/

(取材・文:笹田理恵 / 編集:OHACO編集部)