藤田弁護士の法律相談所【 連載 第8回 】
休業により労働者が働けなくなることについて会社に故意も過失もない場合は、賃金を支払う義務はありません。
休業手当を支払うかどうかについては、次のように考えます。
まず、使用者の「責に帰すべき事由」による休業の場合、使用者は休業手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。
この「責に帰すべき事由」については、休業手当は労働者の生活保障のための制度であることを理由に、広くとらえられています。
使用者の故意や過失これと同視すべき事由に限定されず、使用者側に起因する経営判断が介在する場合も含むとされています。
「責に帰すべき事由」に当たる場合は、休業手当を払わなければなりません。
他方、原因が事業の外部により発生し、使用者が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない場合には、「不可抗力」によるものといえ、「使用者の責めに帰すべき事由」には当たらないとされています。
「不可抗力」による場合、休業手当を支払う必要はありません。
したがって、休業手当を支払うかどうかについては、休業が「不可抗力」によるものといえるかどうかがポイントとなります。
前日に、公共交通機関が「計画運休」を発表した場合はどうでしょう?
また、公共交通機関が朝からストップした場合はどうでしょう?
昨今、大雪や大雨が予想されたり、台風が接近したりする場合に、被害拡大の防止のため、公共交通機関があらかじめ計画運休を発表するようになっています。
また、交通機関が計画運休を発表しなくとも、実際に朝から交通機関がストップし休業措置を講ずる場合もあります。
こうした場合、休業により労働者が働けなくなることについて、会社に故意も過失もありませんから、賃金を支払う義務はありません。そして、休業手当の関係でも、このような場合は「不可抗力」による休業に当たります。
したがって、理論上は、休業手当を支払わなくてよいということになります。
午後や帰宅時間帯に大雪・大雨や台風の接近が予想されることから、
交通機関の混乱に備えて、従業員を早退させる場合はどうでしょう。
こちらも、会社の行為に故意・過失はありませんから、賃金を支払う義務はありません。
ただし、休業手当の不支給については慎重に考える必要があります。
交通機関の混乱を予想しての早退は、職場からの帰宅に支障が生じるだけで、業務遂行そのものには支障が生じていないといえそうです。
そうすると、不可抗力ではなく、使用者の経営判断が介在しての早退となり、休業手当が必要となる可能性があります。
休業手当は、パートなど非正規雇用労働者に対しても支払わなければなりませんので注意が必要です。
多治見さかえ法律事務所 弁護士
慶應義塾大学経済学部卒業。近くで気軽に相談できる弁護士をモットーに、取引や労務に関する紛争の解決・予防に地域密着で対応中。
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