ポスターや絵画が
写り込んだ写真などをネット配信しても
著作権侵害にならないでしょうか?

藤田弁護士の法律相談所【 連載 第6回 】

WEBマーケティングの一環で、写真をSNSに上げたり、動画を配信したりしています。
撮影した写真の背景にポスターや絵画が写り込んでいる場合や、撮影した動画にポスターや絵画、音楽が映り込んだり、録り込まれたりしている場合、ネット配信することが著作権侵害にならないのか心配です。

「付随対象著作物の利用」として許されることが多いです。

著作権法では、写真撮影、録音、録画、放送その他の複製や、複製を伴うことなく伝達する行為を複製伝達行為と言いますが、この複製伝達行為をするに当たって、その伝達行為の対象とするものなどに付随して伝達対象となる著作物(付随対象著作物)で、軽微な構成部分となるものは、正当な範囲内において、著作権者の利益を不当に害さない場合に限り、複製伝達行為に伴って利用をすることが認められています(著作権法30条の2第1項)。

さらに付随著作物を、複製伝達行為により作成・伝達されるものの利用に伴って利用することも認められています(同条第2項)。

軽微な構成部分かどうかは、著作物の占める割合、精度、その他の要素を踏まえ判断します。

写真や動画に他の著作物が映り込んだ(写り込んだ)としても、映り込んだ著作物が軽微な構成部分に当たり、正当な範囲内で、著作権者の利益を不当に害さないのであれば、著作権法30条の2の規定により許されることとなります。

展示された芸術作品や建築物が写り込んでも、問題ないのでしょうか?

屋外に恒常的に設置されている美術品については、それを写真や動画に撮影してネットに公開しても、原則として著作権侵害に当たりません。

また、建築の著作物についても、それを写真や動画に撮影してネットに公開したとしても、原則として著作権侵害に当たりません。

そして、建築物については、著作物として著作権法で保護される場合はかなり限定されています。

一般的な建物や住宅が著作物として認められる可能性はほとんどなく、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家の思想・感情といった文化的精神性を感じ取ることができるようなものに限り、建築の著作物として保護されます。

さらに、既に著作権の保護期間を過ぎている場合もあります。現在は原則、著作者の生存期間およびその死後70年となっています(改正法が施行された2018年より前は50年)。

人が写り込んでしまった場合、
削除やぼかし処理などをしなければならないのでしょうか?

その人の肖像権との関係が問題になります。
肖像権とは、自分の容貌などを承諾なしに撮影されたり、撮影されたものを公表されたりしない権利です。
プライバシー権と同様に、個人の私生活上の自由の一種です。
肖像が公開されることが社会生活をする上で受忍すべき範囲を越えたものとなる場合には、不法行為として損害賠償請求を受けるリスクがあります。

仮に、そのようなレベルでなくても、個人からクレームを受けるリスクはあります。
人が写り込んでいる場合には、トラブル防止のため、その部分をぼかしたり、その部分を切除するトリミングをしたりするのが望ましいでしょう。