ワレンダ要因とは?~目標設定に応用し「する目標」を立てましょう~

ビジネス こころと体の健康増進室【 連載 FILE 007 】

みなさん「ワレンダ要因」をご存知でしょうか? 「ワレンダ要因」とは、目標に目を向けると成功しやすいという心理学的な効果です。
今回は「ワレンダ要因」についてエピソードやタイプ別にわかりやすく解説します。

失敗を意識すると失敗に導かれる

1905年生まれのドイツ人で、カール・ワレンダという軽業師がいました。
彼は、命綱やセーフティネットなしに綱渡りをすることで名声を博し、年をとってからもその芸は衰えを見せませんでした。

ところが、1978年、73歳のとき、プエルトリコのビルの間に張られた高さ37mの綱渡りに挑戦しましたが、風にあおられてバランスを崩し、落下して死亡してしまいました。
事故の後、彼の妻はこう語りました。
「これまで、カールは綱を渡り切ることしか考えていませんでした。
しかし、その日は落ちないことに意識を向けていたのです」と。

このエピソードから、ある心理学的な効果に「ワレンダ要因」という名前が付けられました。
それは、「成功に意識を向け続けると本当に成功しやすい。そして、失敗に意識を向け続けると失敗しやすい」という効果です。

そうなりたくないことを口にしたりイメージしたりしていると、逆にそうなってしまうということです。
たとえば、人前で緊張しがちの人が、発表会の前に「緊張しない」という目標を立て、「緊張しないぞ。絶対に緊張しないぞ」と口ずさむと、かえって緊張感を高めてしまうことになります。

もちろん、リスク回避のために、失敗や起こり得る問題をあらかじめ予想しておくことは必要です。
しかし、その上でいったんやろうと決めたならば、うまくいかなかったらどうしようと考えるのはやめて、成功している自分の姿をイメージし、それをイメージし続けていくことが大切なのです。

社会リーダーに求められる要素

このワレンダ要因を目標設定に応用するとどうなるでしょうか?
それは、「しない目標ではなく、する目標を立てる」ということです。

たとえば、「子どもを怒鳴らない」ではなく、「1日3回褒める」や「1日1回抱きしめる」というような目標です。

豊かで成熟した現代日本において、取り残されたり新しく発生したりする社会課題を解決し、より良い社会をつくるためのリーダーシップを発揮するのはどのような人々なのでしょうか?

リクルートワークス研究所では、2014年から2015 年にかけて「社会リーダーの創造」という研究プロジェクトを行ったそうです。
その研究では、優れた変革型リーダーのうち、保有率が100%だったのが「自己を創造的に活かす」でした。

自己を創造的に活かすとは、「肯定的な自己観」と「肯定的なワレンダ要因」を持っている状況を指します。
ワレンダ要因が肯定的ということは、「この仕事で成功できる」と感じていることを意味するのです。

社会リーダーは、高い自己肯定感と仕事に対する前向きな成功イメージを持ち、自己の能力を増幅させるようにして良い仕事をしているといえます。

「する」「できる」と考えることが成功への近道

悩みや苦しみが深いとき、つらくて何もできなくなってしまうことでしょう。

しかし、つらい出来事に意識を向けるだけでは、どんどん苦しくなって夢も希望もなくしてしまいます。
こんな時には、「この問題が起こったことは仕方がない。よし、とりあえず何をしようか」と考えてみましょう。

そして、やってみようと決めたことに対して「きっとうまくいくはず!」「誰かに喜んでもらいたい!」とイメージして取り組んでみましょう。
「する」「できる」と考えることが成功の近道なのです。