【CHEFS(シェフズ)】
コロナ禍での飲食店オープン!
先行き不透明の中、故郷への移転を決意した理由とは

陶磁器産業のゆかりの地として、食文化が栄える多治見市。
数々の名店がひしめくこの地に、この秋新たにイタリアンレストランがオープンした。
切り盛りするのは、長年に渡り名古屋市内で腕を振るってきたイタリアンシェフ、井澤良真氏。
腰を据えるつもりだった名古屋の地から多治見市への移転は、コロナの終息が未だ見えない最中での決断であった。
その経緯についてお話を伺った。

逆境での決断

料理好きの母の影響で、幼少期から料理に興味を持っていたと言う井澤氏。
高校卒業後名古屋にある飲食店でアルバイトを始めたのが、料理の道に進む第一歩であった。

「当時は全国的に、ビストロやバルと呼ばれるような、フレンチやイタリア、スペイン料理などのお店がブームの真っ只中。
シェフの作る美味しい料理やお酒を気取らず楽しめる、小規模形態の飲食店です。
そんな時代背景の中、名古屋市内のイタリア料理店で修業を重ねました。独立したのは34歳の時です。」

オーナーシェフとして2008年に名古屋市丸の内に店を構え、その後、名古屋市中区鶴舞に移転。
駅近という立地の良さに加え、本格的なイタリアンが頂けると好評を得ていた中、降りかかってきたのが新型コロナウイルスの流行。

緊急事態宣言を受け、お店の営業が1日わずか2時間に限られる日々が続き、店を閉めているのとほぼ同等だった。

先が見通せない中、井澤氏は故郷である多治見にお店の移転を漠然と考え始める。
これからの長い人生を見据えれば、自分にとってプラスになるかもしれないと思い、移転を計画しはじめた。

そんな折、偶然ひとつの土地物件に出合う。
新店が次々オープンする、多治見市内でも注目のエリアだ。

「この場所は新しい道路ができたことにより新しいお店が増え、昔と様変わりしています。
国道19号からも近いし、いい場所だなと以前から思っていたのです。
人気のエリアでなかなか空きが出なかったのですが、たまたま売りに出された物件があると聞きつけ、『私、やります』と手を挙げました。」

こうして2021年3月、3年半営業していた名古屋市のお店を閉店、新店の開業準備に着手する。

多治見の新店は店舗設計からのスタートだ。
もし多治見で店を構えるのなら、一から店舗を作りたいという思いがあった。
またコロナ禍での苦い経験としてテナント店舗では、休業・時短営業により利益が出ようと出まいが固定費は否応なく発生し「首根っこを掴まれている」状態であった。
ならばリスクは増えるものの、自分の所有する土地店舗で経営した方が、経営の自由も手に入れられる。井澤氏の決断は高まった。

イタリアよりピッツァ窯を直輸入

店内は30席ほどの座席を設け、吹き抜けの窓から自然光が差し込む、解放感のある空間に。
内装はタイルやレンガをアクセントに、古材風の壁やR型のドアなど、アンティーク調にまとまり、店内に設置されている装飾にもこだわりが感じられ、誰でも入りやすい柔らかな雰囲気が漂う。
テーブルは2人用サイズに統一したこだわりの特注品だ。

「知り合いの大工にオーダーしました。
2人用サイズのテーブルは70㎝幅が一般的なのを5㎝伸ばして、ゆったりと食事を楽しんでもらえるように配慮しました。
2つ組み合わせて4人で使っても余裕の大きさです。
質感にもこだわり、肌触りの良い木材を選びました。」

今回の新たなチャレンジと言えるのが、イタリアナポリから空輸した薪で焚くピッツァの窯だ。
今までテナントの制限があり使えなかった薪窯を、どうしても導入したかったと井澤氏。
窯の中央にはタイルで彩られた、〝CHEFS〟のロゴが目を引きつける。

新天地でも変わらない姿勢

新店ではランチの営業もスタートする。
名古屋と比較すると夜よりもお昼の方が需要があることを考慮したうえでの変更だが、メニューやコンセプトは今まで通りだと語る。

「新天地でもやることや、やりたいことは変わりません。
居酒屋のように気軽な感覚で来ていただけるお店でありたい。
お酒を飲まない方やファミリー層にも、手頃な価格でイタリアンを楽しんでもらいたいです。」

新店の宣伝・告知方法についても訪ねてみた。

「大々的なPRをする予定はありませんが、移転を機にSNSを開設しました。
スタッフや自分が営業に慣れてお客様に十分なサービスを提供できる状態になったら、ランチのメニューなどを更新して活用していきたいです。

SNSに関しては、自分が地元に帰ってきたこと・新店をオープンすることを、中学・高校の同級生や先輩が拡散して、知らないうちに情報が一人歩きしています(笑)。
これも時代ですね。
地元で店を構えるメリットでもあり、有難いことです。

時代とともに飲食業界も様変わりしました。
自分がこの業界に入った30年前は、どこの店も繁盛していましたが今はそうはいかない。
加えてコロナもある。厳しい状況が続きますが、飲食業は好きな人が頑張ってできる業界です。
料理やサービスの好きな人、若い方が沢山増えるといいですね。」

30年というキャリアからか、井澤氏の言葉には穏やかな力強さがあふれていた。
コロナ禍での移転の決断も自信の表れと拝察する。
井澤氏とシェフズの新たな出発に期待したい。

【今回の取材先】
イタリア食堂&ワインCHEFS(シェフズ)
所在地:岐阜県多治見市宝町 3-91-12
TEL:050 – 5570 – 4452
営業時間:11:30~14:00 (L.O.14:00)、18:00~22:00 (L.O.22:00)
定休日:日曜日
HP:http://www.chefs-jp.com/