もし、電気代が0円の街があったら? エネルギー循環で地方都市の活性化を目指す【株式会社エネファント】

多治見市を拠点とし、岐阜県東濃地区を中心に太陽光発電システムや蓄電池などの販売・施工・保守を行うエネファント。地域のエネルギーベンチャー企業として、「多治見を日本で一番電気代の安い街に」という目標を掲げている。エネルギー事業や地域に対する思いを磯﨑代表に伺った。

エネルギーは手段で、目的にはならない

創業から十年。二十二歳で大学を離れ起業した磯﨑代表。エネルギー事業を立ち上げるきっかけとなったのは、太陽が発するエネルギーに関する情報だった。

代表取締役の磯﨑顕三(いそざきけんぞう)さん

「当時、全人類が消費するエネルギー1年分は、太陽が地球に送るエネルギー1時間分と同じだと知りました。だったら“無料”で降り注ぐ太陽光を生かせないのか。どうしたら太陽エネルギーをつないで生活できるのか、と考えたのが事業の始まりです」

「電気を創る」と「電気を使う」を最短でつなぐ構想で事業を始めたエネファント。現在は、住宅用太陽光発電システム販売・施工、ソーラーチャージャー設置を行う「創る」、地域でつくった電気を地域の皆様へ「配る」小売電力事業、電気自動車のバッテリーを活用して創った電気を「蓄える」EVレンタル事業の三つの柱で成り立っている。

特に注目を集めたのが、「働こCAR」。地元企業にEVを定額制で貸し出し、その企業が若い世代の社員に車を貸し出すサービスだ。企業側は車のレンタルという福利厚生で雇用創出が期待でき、エネファントはその車が勤務中に駐車する間、蓄電池として活用する画期的な仕組みだ。地方都市の課題である若い世代の人口流出を防ぎ、地方活性化の一端を担っている。こういった斬新なアイデアはどのように生まれているのか。

「仕事中に駐めている車のバッテリーを上手に使えないか?という視点から考えたサービスです。僕は、アイデアをWHY→HOW→WHATの順で考えています。なぜ自分がこれをやるのか、を徹底的に考え定めると、どうやって、何をやるのかが自然と出てくる。HOWの視点から考えて始めても良いアイデアは出てこない」

新たな事業プランだけでなく会社の全てに対し、この考え方を用いて進めているという。 「アイデアが出てこない状況は、動機が悪いのだと考えています。やりたいことに対する動機が良ければ、自然と何をすればいいのか見えてくるはず。それを踏まえ、エネルギーを通じて、街の課題と事業をどうつなげていけばいいかを常に考えています」

電気代ゼロの街をつくるために

多治見市のキャラクター「うながっぱ」の巨大バルーンが目印

「2030年までに多治見を日本で一番電気代の安い街にする」という目標を達成するためには、地道な努力が一番大切だと話す。

「世の中はそんなに甘くない。気合と根性だけでなく、目標達成に向けた戦略をつくりこまないと事は進んでいかない。2030年まで創る・配る・蓄える設備を地域内に分散して設置し、街のエネルギーの使い方を最適に運用できる、街のOSをつくりたいと考えています」

「頑張り続けられる理由は、集まってくれた社員への感謝があるから」と磯﨑代表

他社も同様のエネルギー事業を考えることはできるが、最終的な実装まではなかなかできない。それは現場における地道な仕事の積み重ねが意外と難しいからなのだとか。

「暮らしと家の屋根をつなぐことは、小さい電気工事の仕事です。地域や国、地球という概念と比べるとものすごく規模の小さな作業。しかし、結局こういった仕事を積み重ねないと、どんなに良いシステムがあったとしても機能しない。僕らは細かい現地工事ができるし、何かの前に、お客様が何か疑問があったりしても、直接お会いしてお話して解決することもできる。これこそが地域のプレイヤーならではの強み」

地道な一歩を続けない限り、イメージする夢や希望は叶えられないのだ。

デジタル化が進む中で電気の需要は上がり、電気が無料の街=人や企業が集まるといった可能性すら感じる。そんな中、環境省が新たに創設した「環境スタートアップ大賞」でファイナリストに選ばれた。SDGsの機運もあり、今後エネファントの注目度が高まることは間違いないだろう。

電気代ゼロの街を目指し、これからも地域と人と向き合い続ける。

取材したのは……

株式会社エネファント
[所在地] 岐阜県多治見市下沢町3-35-1
[TEL]  0572-26-9336
[創業]  2011年6月
[代表取締役] 磯﨑顕三
[業種]  電気エネルギー業