企業のワーケーション導入事例12選!誘致に積極的な自治体もご紹介

ワーケーションという言葉をご存じでしょうか。これはWork(仕事)とVacation(休暇)を合わせた造語で、リゾート地などで休暇を取りながら働くという意味です。
相反する言葉が組み合わさっているため違和感を覚えるかもしれませんが、ワーケーションは昨今の働き方改革やテレワークの普及により、注目が集まっている働き方です。

今回は、企業のワーケーション導入事例12選と、誘致に積極的な自治体を紹介します。

1.ワーケーションとは

①概念

冒頭でも述べたように、ワーケーションはWorkとVacationを合わせた造語です。リゾート地だけでなく、地方など普段の職場から離れた場所で仕事をしながら休暇を取ることを意味します。
また、休暇と業務を組み合わせた旅先での滞在もワーケーションに含まれます。概念としては、休暇が主体のものと仕事が主体のものがあります。

②注目される背景

ワーケーションは、2000年代にアメリカで提唱されました。その背景には、ノートパソコンやインターネットの普及、企業が社員に対して有給休暇を与える法的義務がなく取得率が低かったことが挙げられます。有給休暇の取得率を向上させ、長期休暇を促進させる目的でワーケーションは始まりました。

日本では有給休暇の取得は労働基準法で保障されていますが、取得率の低さが長年指摘されています。しかし、昨今の働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響により働き方は多様化し、ワーケーションに注目が集まるようになりました。

③メリット

〈社員〉

場所や時間の制約がなく、多様な働き方ができます。また、年末年始やゴールデンウィーク以外に休暇を取得しやすく、健康の維持増進につながります。

〈会社〉

社員の有給休暇取得率の向上、すぐにリフレッシュできる普段と異なる環境による作業の効率化や新たなアイデアの創出が期待できます。また、生活習慣や精神衛生の改善など健康面でのメリットも大きいです。

〈自治体〉

ワーケーションを受け入れることで、来訪者の増加、参加者との交流による新たな産業の創出が期待できます。さらに、長期的に関係人口を創出することにより、地域コミュニティの活性化につながります。

2.企業のワーケーション導入事例12選

ここでは、企業のワーケーションの導入事例について紹介します。企業によって取り組み内容や効果はさまざまです。

①日本航空

参照:日本航空

間接部門(業務が売上や利益に直結しない部門)の社員の有給取得率が低いという課題があり、それを改善する目的で2017年から「休暇型」のワーケーションを導入しました。
休暇中のテレワークを可能とし、長期休暇を取ることで仕事がたまってしまう、休暇を取ることに抵抗感があるといった社員の不安を軽減しました。これにより、有給休暇取得率は向上しました。

②ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス

参照:ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス

2016年から、働く場所や時間を社員が自由に選べる「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」という制度を開始しました。上司に申請すれば、理由を問わず、社外で仕事ができます。対象者は、工場や営業の一部を除く全社員です。

2019年には8つの自治体と連携し、ワーケーションと地域創生を組み合わせた「地域 de WAA」を開始しました。これにより、地域に根差したイノベーションやビジネスモデルを生み出すことにつながっています。

③野村総合研究所

参照:野村総合研究所

社員のモチベーション維持と、働く環境を変えることで得た気づきや発見をイノベーション創出につなげる目的で、2017年にワーケーションを導入しました。徳島県三好市にある古民家を、サテライトオフィスを兼ねた宿泊場所としています。

ここで、1カ月間の滞在型キャンプを年に3回実施しています。期間中の平日は仕事、週末は休暇というスタイルで生活します。参加した社員からは、「考え方が変わった」などの声が聞かれています。

④JTB

参照:JTB

2019年3月より、ホノルル支店にワーケーション用のスペースを設置し、「ワーケーション・ハワイ制度」を開始しました。このスペースは、休暇でハワイを訪れた社員だけでなく、JTBの利用客も利用可能です。

日本国内でも、沖縄などで展開しています。開放的な環境の中で仕事をすることで、ストレス解消や新しいアイデアを生むことにつながっています。

⑤三菱東京UFJ

参照:三菱東京UFJ

2019年に、軽井沢などの自然豊かな場所にワーケーション専用のオフィスを設け、ワーケーションを導入しました。自然に包まれてリフレッシュをしながら仕事をすることができます。

ワーケーション専用オフィスは、滞在期間のうち1日だけ仕事をするケースも想定し、仕事に必要なパソコンやインターネットなどの環境面が整備されています。

⑥セールスフォース・ドットコム

参照:セールスフォース・ドットコム

社内の課題である、ビジネスの東京一極集中の解決と、地方創生の推進を目的にワーケーションを導入しました。そして、総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加し、2015年に和歌山県白浜町にサテライトオフィスを設けました。

サテライトオフィスは、各社員がキャリアプランに応じて自主的に利用しており、東京オフィスに比べて生産性の20%アップ、残業時間の削減などにつながっています。

⑦日本マイクロソフト

参照:日本マイクロソフト

2012~2016年は、「テレワークの日」「テレワーク週間」を設け、会社以外の場所で働くテレワークを促進しました。そして就業規則を改訂し、国内の業務可能な場所であればどこでもよい、総労働時間が多くなりすぎず、深夜や休日でなければ時間は自由に設定してよいとしました。

もともと「いつでもどこでも誰とでもコラボレーション」をルールとして取り組んでいたこともあり、結果的にワーケーションにつながりました。

⑩ランサーズ

参照:ランサーズ

もともと働く場所に制限はなく、会社のルール内であればワーケーションが可能な環境が整っていました。また、2017年に自社社員向けのワーケーション制度「社員さすらいワーク制度」を開始し、社員に地域でのテレワークを推奨しました。

参加した社員はリフレッシュできたり、地域の課題を発見したり、モチベーションが向上したりするなどの効果が得られています。

⑪サイボウズ

参照:サイボウズ

ワーケーションという概念を持たず、働き方をフレキシブルする目的で、働く時間を改革することからスタートしました。東日本大震後に社員全員を在宅勤務にしたことから、緊急時にはテレワークが有効であることがわかりました。

その後、働く時間だけでなく、働く場所もフレキシブルにしようと、積極的に仕組みづくりを行いました。これにより採用の幅が広がり、さまざまなバックグラウンドを持つ人材の採用や中途採用の増強につながりました。

⑫LIFULL

参照:LIFULL

LIFULLでは、宿泊機能を備えたコワーキング(スペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイル)施設「Living Anywhere Commons」を全国25カ所に展開しています。地域に常駐しているコミュニティーマネージャーを通じた企画や交流が特徴です。

自由な場所で働き、暮らせる環境にしたことで、「自分らしく働けるLIFULLにかかわりたい」という学生が増加し、採用力の担保につながりました。

⑬株式会社内田洋行

参照:株式会社内田洋行

株式会社内田洋行は、情報システム、教育システム、オフィス構築を手がける専門商社です。2020年に宮城県丸森町で行われた「丸森ヘルスケアワーケーション」という実証実験に参加し、自然あふれる丸森町のサテライトオフィスでテレワークを行いました。

そして、健康データや生活データを解析した結果、ストレスの抑制、精神状態の安定化の効果があることがわかり、ウェルネスの向上が認められました。

⑭Uber

参照:Uber

カーシェアリングサービスを提供しているUberでは、普段一緒に働くことのない社員を少人数集めてチームを作り、旅に出かけるというワーケーションを行っています。

内容としては、例えば「よりよいドライバー体験をするための方法を考える」という課題に対して答えを探すというものです。その答えがサービスなどに反映されることもあり、社員のモチベーション向上につながっています。

3.誘致に積極的な自治体

ここでは、ワーケーションの誘致に積極的な自治体を紹介します。それぞれ、地域の特性を生かした取り組みが特長です。

①北海道

参照:北海道型ワーケーション ポータルサイト

北海道では、北海道型ワーケーションとして、スマート農業などの最先端技術の視察など、企業のニーズに合わせたプランを提供することを推奨しています。
また、各自治体でもワーケーションの総合サイトを設置し、施設や宿泊情報、観光などの情報をまとめて紹介するなど、積極的な誘致活動を行っています。

②長野県

参照:信州リゾートテレワークのご案内 – 長野県HP

ワーケーションで訪れる人に、リゾート地である長野県のよさを生かして質の高い時間を過ごしてもらおうと、リゾートテレワークという概念を推進しています。また、設備投資やワーケーションの勉強会をするなど、積極的に誘致活動を行っています。

③沖縄県

参照:沖縄ワーケーションガイドHP

沖縄では、ワーケーションのモニターツアーを実施するなどの活動を行っています。また、内閣府は沖縄テレワーク推進事業費補助金により、沖縄でのワーケーションを支援しています。

④長崎県

参照:リモートワーク支援特設サイト HOW WE WORK NAGASAKI

リモートワーク・ワーケーションを受け入れ、豊かな自然環境や世界遺産などの観光資源、地域の人々との交流が楽しめる「リモートワークin長崎プロジェクト」に取り組んでいます。

⑤三重県

参照:三重県ワーケーションウェブサイト

首都圏、関西圏、中部圏などの都市部の企業や個人向けに、ワーケーションの受け入れを推進しています。また、企業や個人と受け入れ施設をマッチングするウェブサイトを開設し、積極的に誘致活動を行っています。

4.まとめ

ワーケーションには、社員と企業、受け入れる自治体の三者それぞれにメリットの多い取り組みです。環境整備や労務管理など準備することは多岐にわたり大変な面はありますが、今後の自社の未来を見据え、ワーケーションを検討してみてはいかがでしょうか。

合わせて読みたい!