オムニチャネルとは?マーケティング戦略やメリット、事例をご紹介

オムニチャネルという言葉を聞いたことはありますか?今、国内の大手企業ではオムニチャネルによるマーケティング戦略が高まっています。
これはインターネットやスマートフォンの普及により、顧客の購入にいたる過程が大きく変化したことによります。

ここではオムニチャネルとは何か、導入するメリットや各企業の成功事例をご紹介します。

1.オムニチャネルとは

オムニチャネルの「omni(オムニ)」とは「すべて」のという意味で、「cannel(チャネル)」はマーケティング用語では「流通経路」や「顧客との接点」を意味します。
「すべての流通経路」、つまりオンライン、オフライン問わず自社内のあらゆるメディアで顧客との接点を作り統合することをいいます。

オムニチャネルの例としては次のようなものが挙げられます。

  • 実店舗
  • サイト
  • ECサイト(ネット通販)
  • アプリ
  • Instagram、TwitterなどのSNS
  • 広告
  • チラシ、カタログ

オムニチャネルではこれらを全て繋ぎあわせ統合させることで、顧客の満足度を高めて購買につなげ、自社の売上を高める仕組みを作ります。

2.オムニチャネルと似た手法との違い

オムニチャネルと似た手法として以下の3つが挙げらます。それぞれの特徴とオムニチャネルとの違いをまとめました。

① マルチチャネル

マルチチャネルとは、実店舗のみ運営していた企業がECサイトや電話による通信販売を開設するなど、チャネルを複数展開することをいいます。

オムニチャネルと異なる点は、それぞれのチャネルが独立し、統合、連携されていないところです。在庫管理や顧客管理などを、実店舗やECサイトそれぞれで行うため、他で在庫があるのに販売機会を逃してしまうなどといった問題が生じます。

② クロスチャネル

マルチチャネルの問題点を解決するのがクロスチャネルです。在庫データや顧客データを一元管理することにより、実店舗での売り切れ商品を購入可能にするなど、在庫の適正化や顧客満足度の向上が見込めます。

クロスチャネルを更に進化させるとマルチチャネルになります。販売チャネルだけでなく、SNSなどを活用、連携させて、顧客へのアプローチをより増やす施策がマルチチャネルとなります。

③ O2O

O2Oとは、「online to ofline」の略語で、ECサイトやSNSなどのオンラインから、実店舗のようなオフラインへ顧客を導く仕組みを作る手法です。
O2Oはオンラインとオフラインの連携はあるものの、特定のチャネルのみでの一方通行の施策であるとこが、複数を統合するオムニチャネルと異なります。

④ OMO

OMOは「Online Merges with Offline」の省略で、オンラインとオフラインを融合させることで顧客の満足を高める手法です。例えば店舗でのスマホ決済や、店内ポップや商品にQRコードの設置が当てはまります。それらを顧客の登録情報に紐づけすることで、企業は購入に至るデータなどを獲得できます。顧客はオンオフの境目を感じずに、購入に至ります。

オムニチャネルと似ているように思われますが、OMOはオンラインとオフラインを融合して考え、オムニチャネルはそれぞれの役割を明確にし、別々に捉える点が異なります。

3.オムニチャネルのメリット

① 顧客の満足度の向上

オムニチャネル化されると、顧客の利便性は高まります。例えば「実店舗にはなかった商品が購入できた」、「実店舗で商品を確認した家具を店舗のQRを読み込みネット上で注文し自宅に配達してもらった」といった点です。

ユーザーの満足度は上がり、リピーターとなってくれる確率も高まります。企業側にとってはユーザーの囲い込みができ安定的な売上をもたらす策としてオムニチャネルは有効です。

② データが獲得でき顧客の分析ができる

複数のチャネルを経由するオムニチャネルを活用することにより、購入に至るまでの顧客の一連のデータを入手することが可能となります。

例えば、店頭の商品にQRコードを付けている企業では、訪問客はその商品のレビューや詳細を確認することができ、企業は客がどの商品に関心が高いか知ることができます。
更に分析すれば、「SNSを見てECサイトにアクセスした顧客が多い」とわかれば、SNSのPRに力を注ぐなどマーケティング戦略を立てることに役立ちます。

顧客データを一元管理することで顧客の購入に至る一連の流れなどのデータ集めることができ、顧客ひとりひとりに合ったアプローチが可能なるでしょう。

4.オムニチャネルを成功させるポイント

①目標を定める

マーケティング戦略において、目標を明確にすることはどんな手法においても大切なことです。企業のオムニチャネル化は一大プロジェクトとなります。
多くの社員が関わることですので、ぶれないためにも目標設定は重要なポイントとなります。スムーズな運用のためにも目標の共有化は必須です。

②カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーとは、直訳すれば「見込み客の旅」。見込み顧客が自社の製品やサービスを認知し、さまざまな接点を経てそれに対する関心を深め、購入に至るまでの一連の動きを「旅」に例えます。それを図式(マップ)化したものをカスタマージャーニーマップと呼びます。

複数のチャネル上で、ユーザーがどこを入り口に訪問し、どこで情報を獲得し、どこを経由して購入に至るか、見込み図を作るのです。図式化することにより、ユーザーへのアプローチポイントが明確になります。

カスタマージャーニーについてはこちらの記事をご参考ください。

③データの連携とシステムの統合

データの連携もオムニチャネル化において重要な項目となります。在庫情報や商品情報、また顧客情報に至っては、購入履歴やポイント情報など、チャネルごとに管理されていたデータを全て統合し、一元管理するためのシステムの導入が必要となります。

④社内の認識の共有

目標とともにオムニチャネルに対する認識の共有も、オムニチャネルのスムーズな運用と成果を生み出すために必要なことです。
今までの部門ごとの縦割り意識をなくし協力体制を取ることが、オムニチャネル成功のキーポイントとなります。

5.成功事例

最後にオムニチャネルを成功させた企業の事例をご紹介しましょう。

① ABCマート

参照:ABCマート

スニーカーを中心にシューズの販売をしているABC-MARTがオムニチャネルとして導入したのは、店舗受け取りサービスです。
これを導入するまでは顧客は店舗購入かネット通販(ECサイト)の二択でした。靴販売で抱えている問題に「サイズ」があります。各実店舗で沢山の在庫を抱えることは困難であり、一方在庫を多く抱えられるECサイトではサイズの試着ができません。

店舗受け取りサービスの導入により、実店舗にない商品はサイトや他店舗に在庫があれば取り寄せでき、サイト上でチェックした商品を店舗で試着してから購入できるというサービスを展開しました。
店舗内であればサイズ交換も可能です。ユーザーは自分が欲しい商品を購入する機会が増え、ECサイトか実店舗、自分の都合の良い方で購入できる利点が増えました。

② 無印良品計画

参照:無印良品

幅広い支持層を持つ無印良品。導入したスマートフォンアプリ「MUJI passport」では、ニュース配信や在庫検索機能に加え、実店舗に来店しただけでポイントが加算されるマイレージ型プログラムを搭載しました。

また、店舗の600m圏内に入ると、クーポンや最新情報を受け取れるサービスも備え、客の流入を増やしています。

③ セブン&アイホールディングス

参照:セブンイレブン

セブンイレブンやイトーヨーカドーを運営しているセブン&アイホールディングスでは、「Omni7」と呼ばれるシステムを導入しました。これは、自社サイトで販売している商品を全国のセブンイレブン店舗で受け取れる仕組みです。送料、手数料は一切かかりません。

セブンイレブンの国内店舗数は現在21,210店です(2021年9月末現在)。これは日本全国にわたり多店舗展開する強みを生かした策と言えます。しかも24時間営業のため、働く人が抱える宅配便の荷物受け取りの問題も解消しました。

購入できるのはグループ企業であるロフトや赤ちゃんホンポなどの商品も含まれます。グループ全体の商品を扱うことで、在庫管理の一元化、最適化も叶えました。

6.まとめ

インターネットや個人デバイスの普及により、オムニチャネルを導入する企業は増えつつあります。中小企業でも顧客満足度を向上させることにおいて参考になる点は多いでしょう。
事例を参考にマーケティング戦略に活用してみましょう。