最期の1%まで幸せに生きる【 連載 No.9 】
親を介護する子どもの葛藤
「上原さんにありがとうと言いたかった」。
エンディングノート制作講座を受けた人から、そのような声をいただきました。
その人は女性経営者で、私の尊敬する人です。
エンディングノート制作講座を受講している時、彼女は実父の介護の真っ只中でした。
彼女にとって身近な人の初めての介護で、親の弱っていく姿を見て、どうしてあげるのが正しいのか、迷いや不安を抱えていました。
エンディングノート制作講座の講義の中で、亡くなる場所の80%以上が病院であることを説明しました。
このデータから、病院で最期を迎えることが一般化していることが分かります。
点滴治療を受け、酸素マスクをし、尿の出が悪くなると尿カテーテルを入れ、心電図モニターで管理する。
彼女もその選択肢しかないのではないか? と思っていました。
しかし、講座を受けて自然な看取りとは何か?
また、必要以上に医療が介入することで父は苦しむ、父にとって何が幸せなのか? を涙ながらに私と真剣に話しました。
誰にでも訪れる最期との向き合い方、考え方
誰にでもこの壁はやってきます。
その時、どう向き合い、どう考えて行動するか?
また、どこに相談すればよいのか?
それが分からない人は多いのではないでしょうか。
彼女はタイミング良く、エンディングノート制作講座でその機会に巡り会えたのです。
エンディングノートは自分に限らず、身近な周りの人のことも同時に考えられるという利点があります。
最期を迎えることは他人事ではなく、実際にいつどこで起こっても不思議ではありません。
なぜなら、命の期限は誰にも分からないからです。
彼女の父は、最期まで住み慣れた自宅の自室で過ごすことができました。必要以上の医療の介入もなく、本当に穏やかな最期でした。
自然な看取りによる穏やかな最期
彼女の次の言葉が印象的でした。
「本当だったら、入院させないといけない…講座を受けていなかったら、入院させなかったことを後悔したかもしれません…。
しかし必要以上の医療を受けず、自然に任せていたら、講座で習ったようにだんだんと食べられなくなり、水分も取れなくなり、出すものを全て体から出し、脳内モルヒネが出ているかのように穏やかにスースーと寝ていました。
『あれ? 息してる? 死んじゃった?』と思うくらい、静かで苦しむこともありませんでした。
最期は眠るように息を引き取りました。
父の最期を自然な看取りができてよかったです。そして、全く後悔もなく、スムーズに父の死を受け入れることができました。こうしたことがもっと世の中に広がることは、すごく大切だと思います」。
私が10年間、自然な看取りをした数十人の全員が、苦しみのない、穏やかな最期でした。
皆さんはどんな最期を選びますか?
1人でも多くの人に最期の1%を幸せに迎えてもらいたい。
今回の事例から、それが私の使命と改めて感じることができました。
有限会社ひなたぼっこさと 代表取締役
看護師として総合病院勤務。訪問看護などを経て17年前に起業。デイサービス・有料老人ホーム・保育園を経営する。
【有限会社ひなたぼっこさと】
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