どこで起業する?
場所やオフィスの形について解説

起業する際、どこにオフィスを構えるのか、スペースやコストなどを考えなければなりません。
かつては、交通の便の良い場所でオフィスを賃貸するのが主流でした。
しかし昨今、ICTの普及や働き方の多様化により、コワーキングスペース、シェアオフィス、レンタルオフィスが現れ、求められるオフィス形態は変化しています。

今回は、どこで起業するか、オフィスの場所や形について、メリット・デメリットを交えて解説します。

1.自宅兼事務所

自分が住んでいる場所をオフィスとして利用する形態です。
商品や在庫を保管する必要がない、店舗が必要ない、自宅で作業を行える、顧客はあまり訪問しない、自分が出向くことが多いというビジネス形態であれば、自宅兼事務所でも問題ありません。

業種としては、プログラマー、アプリなどのITやインターネット関連の業種や、カメラマン、スタイリスト、漫画家などのクリエイター的な専門業種が向いていると言えます。
法人登記については、賃貸物件ではできない可能性がありますので、物件のオーナーに確認が必要です。

メリット

初期費用、オフィス費用を削減できる

賃貸オフィスであれば月々の固定費(家賃)や礼金、保証金、敷金などがかかりますが、自宅兼事務所では不要なため、初期費用が大幅に削減できます。

時間を短縮できる

自宅をオフィスにすることで物件を探す手間が省け、起業までの時間を短縮することができます。
また、通勤時間がなくなる上、満員電車によるストレスもなくなります。

自宅家賃や光熱費の一部を経費に計上できる

家賃や光熱費、通信費などの一部を、事業運営の必要経費として計上することができ、節税につながります。

デメリット

公私の区別がつきにくい

自宅兼事務所の場合、テレビなどの誘惑が多く、プライベートとの区別がつきにくい状態になりがちです。
また、いつまでも仕事を続けてしまい、睡眠不足や運動不足に陥りやすいため、自己管理ができる人でなければ難しいかもしれません。

会社としての信用度が低い

人によっては、自宅兼事務所であることから、会社としての信用度を低く見る場合があります。
その弊害として、取引につながらない可能性があります。

2.バーチャルオフィス

バーチャル(virtual)とは「仮想」という意味ですので、オフィスそのものは存在しません。
しかし、法人登記に記載可能な住所の貸出、個人専用電話番号の貸出、郵便物の自宅転送、会議スペースのレンタルなど、事業に必要なオフィス機能を備えています。

バーチャルオフィスも、商品や在庫の管理の必要がなく、店舗を必要としないビジネス形態に向いています。スモールビジネスやスタートアップ企業、オンラインショップの運営者、個人事業主などに人気があります。

メリット

オフィス費用を削減できる

バーチャルオフィスは、実際にオフィスを構えるわけではないため、後述するコワーキングスペース、シェアオフィス、レンタルオフィスといったほかのオフィスサービスよりも、家賃コストを抑えることができます。
また、オフィス運営に必要な光熱費や通信費などのランニングコストも節約できます。

都心の一等地の住所を利用できる

起業したばかりの頃は、なかなか信用を得にくく、取引につながらないこともあります。
法人登記や企業ホームページ、名刺などに都心の一等地の住所を使うことで、企業の信用度・イメージアップにつながります。

デメリット

ほかの企業との住所が重複する

バーチャルオフィスでは、1つの住所を複数の企業が共有しているため、ほかの企業と住所が重複してしまいます、そのため、インターネット検索で住所を入力するとほかの企業がヒットし、顧客の不信感につながる可能性があります。

許認可が下りない可能性がある

事業を始めるためには、官公庁に届出、登録、認可、許可、免許の5つの許認可が必要と言われています。
その際の諸条件に、バーチャルオフィスの住所が使用できない可能があります。
そのため、許認可が必要な事業を始める場合は、所轄の官公庁の担当部署に事前に確認が必要です。

3.コワーキングスペース

コワーキング(Co-working)は、「Co」(共同の、共通の)に「work」(働く)をくっつけた造語です。
このことから、コワーキングスペースは、さまざまな企業の人々が共に働くスペースであると表現できます。オフィススペースだけでなく、設備なども共有します。

スタートアップ企業や、固定のオフィスは必要としないが拠点が欲しい起業家、個人事業主に多く利用されているようです。

法人登記については、別途料金がかかったり、法人登記できなかったりすることがありますので、事前に確認が必要です。

メリット

オフィス費用、初期費用を削減できる

コワーキングスペースでは、家賃コスト、光熱費や通信費などのランニングコストを大きく削減することができます。
また、賃貸オフィスでは2年契約などまとまった期間で契約することが多いですが、コワーキングスペースでは1カ月契約など柔軟に契約でき、無駄な費用を抑えられます。

そして、コワーキングスペースには基本的な設備や機能がすでに備わっているので、初期費用も削減できます。

コミュニティの形成や人脈の拡大ができる

コワーキングスペースには、さまざまな企業の人たちが集まって働いています。
その人たちと交流してコミュニティを形成したり、人脈を拡大したりすることで、新たなアイデアやビジネスにつながることもあります。

デメリット

集中が妨げられる

交流が促進されるメリットがある一方で、話し声など周囲の音によって、集中が妨げられることもあります。
もしそのようなことが気になる場合は、個別ブースなどを設置しているコワーキングスペースを探してみましょう。

セキュリティ面に不安がある

コワーキングスペースでは、スパイウェアなどによる個人情報や顧客情報の漏洩のリスクがあります。
また、多くの人が交流する場であることから、パソコンの盗難やデータを盗み見られるといった危険性もあります。
セキュリティ対策やデータの取り扱いのルールなど、事前に十分確認して準備することが大切です。

4.シェアオフィス

シェアオフィスも、コワーキングスペース同様、オフィスを複数の人や企業と共有する形態です。
コワーキングスペースとシェアオフィス、後述するレンタルオフィスには明確な定義がなく、昨今はあいまいになりつつあります。
コワーキングスペースはオープンスペース、シェアオフィスはオープンスペースと間仕切りされた個室部分もある、レンタルオフィスは間仕切りされた個室と考えるとよいでしょう。

立ち上げて間もないないスタートアップ企業や個人事業主など、さまざまな人や企業が利用しているようです。

法人登録については、許可していないシェアオフィスもありますので、事前に確認が必要です。

メリット

初期費用を削減できる

シェアオフィスは契約時の費用が少なく、コワーキングスペース同様、基本的な設備や機能がすでに備わっているので、初期費用が大きく削減できます。

情報交換や人脈の拡大ができる

こちらもコワーキングスペース同様、さまざまな人や企業との交流が図れるため、情報交換や人脈の拡大が期待できます。

デメリット

セキュリティ面に不安がある

シェアオフィスにおいても、多くの人が利用するため、セキュリティ面の強化が必要です。個室部分にはきちんと鍵をかける、パソコンを厳重に管理するなどの対策を徹底しましょう。

5.レンタルオフィス

間仕切りされた個室をレンタルする形態です。会議室やラウンジなどは共有ですが、仕事スペースは分けられているため、他社とは適度な距離感を保った交流を行えます。

一定の信用度やセキュリティレベルを求める起業家に向いています。

レンタルオフィスにおいても、法人登録を許可していないところがありますので、事前に確認が必要です。

メリット

初期費用、ランニングコストを削減できる

こちらも、基本的な設備や機能がすでに備わっているので、初期費用が大きく削減できます。
レンタルオフィスでは保証金が必要になるケースがありますが(賃料の約3カ月分)、賃貸オフィスの保証金(一般的に賃料の約12カ月分)と比べれば少なくて済みます。

また、光熱費や共益費が月額の料金に含まれているレンタルオフィスもあり、ランニングコストを抑えることもできます。

契約期間が柔軟である

レンタルオフィスでは、契約の延長や解約などについて、比較的柔軟に対応していることが多いです。
そのため、従業員の増加、事業の拡大によりオフィスが手狭になった場合、途中解約による違約金なしで引っ越せることもあります。

デメリット

料金が高くなる可能性がある

レンタルオフィスでは、さまざまなオプションを用意しており、利用するごとに課金されるシステムをとっているところが多いです。
そのため、何も知らずに好きなだけ利用していると。賃貸オフィスの賃料よりも高額になる可能性があります。オプションも含め、料金プランを十分に確認することが必要です。

運営会社が廃業する

昨今、起業件数が増えており、レンタルオフィスの数も増えていくことが予想されます。

しかし、中には運営がうまくいかず、廃業しているケースもあります。
その場合、別のオフィスを探し、法人登記の変更や届出など行わなければならず、手間がかかります。

レンタルオフィスを選ぶ際は、運営会社の信頼度や利用者の口コミなどを確認し、十分に検討することが大切です。

6.賃貸オフィス・貸事務所

自社のみが利用できるオフィスを賃貸する形態です。
事業の内容や規模に合わせて物件を自由に選ぶことができ、内装も改装可能です。

ここまで述べてきたように、現在はコワーキングスペースなどさまざまなものがありますが、オフィス形態としては根強い人気を誇っています。

メリット

企業としての信用度が高い

ほかのオフィス形態にはない、信用度の高さが大きなメリットです。
賃貸オフィスは、自社に訪問した取引先や顧客から、信頼・好感を得られる傾向にあります。

内装を自由に変えられる

自社のカラーやメイン商品などを内装デザインに盛り込むことによってブランディング力を高められ、企業アピールにもつながります。

デメリット

賃料や保証金などの初期費用が高い

先述したように、入居時に約12カ月分の賃料を保証金として支払う必要があること、業務に必要なオフィス機器を準備しなければならないなど、多くの初期費用が必要になります。

また、光熱費や通信費などのランニングコストや内装工事費も必要になってきます。
さらに退去する際には、元に戻す工事の費用も発生します。

7.まとめ

オフィス形態ごとに、さまざまなメリット・デメリットがあります。
起業する際は、事業内容や目標、コストなどを含め、どの形態が適切か十分に検討しましょう。