合同会社の資本金はいくら必要?平均額や増資のメリット・使い方を紹介

合同会社を設立する時、準備しなければならないものに資本金が挙げられます。2006年5月に新会社法が施行され、会社を設立するハードルが下がり、以前よりも会社を設立しやすくなりました。

しかし、いくら法的に問題がないからといって、資本金が少ない状態で起業しても問題ないのでしょうか。また、実際はいくら準備すればよいのでしょうか。

今回は、合同会社に必要な資本金について、平均額や増資のメリット、使い方を紹介します。

1.合同会社とは

まず、合同会社とはどのようなものか、主に設立に必要なことに関して簡単に説明します。

2006年5月に施行された新会社法により、有限会社に代わる新しい会社形態として導入されたのが合同会社です。株式会社と異なり、出資者と経営者は同一で、出資者は会社の経営にかかわります。

合同会社は1人で設立することが可能で、設立に必要な費用は約10万円、定款(会社運営に関する基本規則)認証は不要です。資本金は1円から設立できます。株式会社に比べて、登記に必要な書類が少なく、事務的な負担が軽いといえます。

2.資本金1円のデメリット

資本金は1円から設立が可能と述べました。「それならすぐに起業できる!」と思うかもしれません。実際に、新会社法が施行されてから合同会社の設立件数は増え続け、最近では新たに設立される法人の2割は合同会社です。

しかし、資本金1円で会社を設立することは現実的ではありません。デメリットとして、主に次のようなことが考えられます。

①取引先からの信用度が低い

資本金は会社の体力とみなされることがあります。そのため、取引先が資本金1円と聞くと、その会社には体力がなく、取り引きする相手として責任を果たせないと判断されかねません。

②法人口座を開設しにくい

取引先と金銭のやり取りをしたり、個人のお金と区別したりするには、法人口座を作っておくのが便利です。また、法人名義のクレジットカードを作っておけば、経費の取り扱いが簡単になります。

しかし、法人口座の開設には、登記簿や定款の確認など金融機関による審査が必要です。資本金1円の場合、金融機関から信用が得られず、審査に通らない場合があります。

また、金融機関によっては、最低資本金額を定めているところもあり、審査の通過以前に、申し込み条件を満たせない可能性があります。

③金融機関から融資を受けにくい

法人口座の開設同様、金融機関からの信用を得られず、融資を申し込んでも審査に落ちる可能性が高いです。
日本政策金融公庫の融資制度では、融資を受けようとする金額の10分の1以上の自己資金を持っていることを条件としています。資本金1円では、その条件を満たすことができません。

3.平均的な資本金の額

①一般的な合同会社の平均資本金額

それでは、どれくらいの資本金があれば合同会社を設立できるのでしょうか。「e-Stat政府統計の総合窓口」ホームページのデータから、2018年8月から2021年7月までに設立された合同会社のうち、資本金額別の設立件数を見てみると、上位3位は次のようになっています。

  • 100万円未満…49.61%
  • 100万円以上…32.84%
  • 300万円以上…7.85%

100万円未満と100万円以上で約80%を占めています。このことから、300万円未満で設立している合同会社が多いようです。

また、先述した日本政策金融公庫の融資制度を利用する場合、例えば100万円の融資を受けようとすると10万円の自己資金が必要です。そして、冒頭で述べたように、設立費用として約10万円が必要です。
さらに、多少の設備費用があると安心ですので、資本金として必要な金額は、50〜300万円といえます。

さらに、開業から半年ほどは経営が安定せず、資金不足になることが考えられます。事業内容に応じて、半年分の運転資金を考慮しておくとよいでしょう。

②許認可事業の最低資本金額

  • 旅行業…300万~3,000万円
  • 建設業…500万円
  • 一般労働者派遣業…2,000万円
  • 有料職業紹介事業…500万円

4.資本金の使い方

出資者から集められた資金は、いったん金融機関に預けますが、登記手続きが終われば、2,000万円自由に使うことができます。

開業には、設備を購入するなどの準備が必要です。また、開業後、経営が安定しないこともあるでしょう。そのような時に資本金を開業資金や運転資金に充てることができます。
ちなみに、資本金は現金だけとは限りません。土地や建物などの不動産、自動車やパソコンなどの動産も現物出資というかたちで資本金に計上でき、これらを用いて開業に備えることができます。

このように、資本金は、経営の元手となる資金です。資本金は手をつけてはいけないお金というわけではありません。

5.増資のメリット

①増資の方法

増資とは、その名のとおり、資本金を増やすことを意味します。合同会社での増資の方法は、2種類あります。1つは今いる社員に出資してもらう方法、もう1つは新しく社員になってもらう方法です。

いずれの場合も社員の同意書や証明書、手続きが必要です。手続きに必要な書類を次に示します。

  • 出資額を増加した定款変更にかかわる総社員の同意書
  • 業務執行社員の過半数の一致があったことの証明書
  • 資本金計上に関する証明書
  • 変更登記申請書
  • 払込証明書
  • 印鑑登録証明書(新社員が代表社員になる場合)


また、いずれの方法でもコストがかかります。増資分の登録免許税として3万円、あるいは増資金額の1,000分の7を乗じた額を支払わなければなりません。新しい社員による増資の場合は、これに加えて、追加社員分の登録免許税1万円が必要です。

このように、少々手間とコストがかかりますが、増資をすることで次のようなメリットもあります。

①会社の信用度を向上できる

資本金は、会社の体力とみなされることがあり、取引先や金融機関はその体力から信用に足る会社かどうかを判断すると先述しました。
そのため、増資することは会社の体力を増強させ、外部からの信用度を向上させることができます。これにより、融資を受けやすくなり、取引先との話し合いが円滑に進みやすくなります。

②増資時の登録免許税を節約できる

株式会社が増資をする場合、増資額の最低2分の1を資本金としなければならないことが会社法上で定められています。資本金として計上しない分は資本準備金となります。
しかし、増加した資本金に対しては、登録免許税を納付しなければなりません。

一方、合同会社にはこのような定めはなく、資本金額を自由に決めることができます。
また、合同会社には資本準備金や利益準備金がないため、資本金として計上されなかった金額は資本剰余金に計上されます。したがって、増資を資本金に計上せず、すべて資本剰余金とすることができるのです。

全額を資本金剰余金に計上した場合、資本金額は変わりません。そのため、会社の事情により増資額を資本金に計上しなくてもよいのであれば、登録免許税を節約することが可能です。
また、資本金額は登記事項ですが、資本剰余金額は登記事項ではないため、変更登記を申請する必要がありません。

6.まとめ

合同会社は資本金が1円でも設立することができますが、開業資金や開業後の運転資金を考慮すると、余裕を持って準備しておく必要があります。また、自社だけで事業を行うことはできません。
取引先などからの信用を得ることも必要ですので、さまざまな視点から適正な資本金額を見極め、準備を進めていきましょう。