経営計画書とは?事業計画書との違いや書き方をわかりやすく解説

何かを始める時、「こうなりたい」(目標)というイメージを持っていると思います。それを達成するには、どのような準備をし、どう行動するのか計画を立てることが大切です。
起業する際や会社を運営していく上でも同じことが言えます。会社経営に関する計画書には「経営計画書」や「事業計画書」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

今回は、経営計画書について事業計画書との違いや書き方をわかりやすく解説します。

1.経営計画書とは

経営計画書は、「会社のあるべき姿」を明確にし、それを実現するための経営戦略や数値目標、行動指針などについて示したものです。経営計画書には、5〜10年の長期経営計画書、3〜5年の中期経営計画書、1年単位の短期経営計画書の3種類があり、最も多く作られるのは中期経営計画書です。

このように、経営計画書作成には1つの事業に関することではなく、会社全体の将来あるべき姿をとらえる視点が求められます。また、それを実現するために長期的、戦略的に考えることも必要です。

2.事業計画書との違い

事業計画書は、経営計画書と同義ととらえられることがありますが、厳密には異なります。
経営計画書が「会社のあるべき姿」を示すものであるのに対し、事業計画書は経営計画書に示された「会社のあるべき姿」を達成するための具体的な実行計画を示すものです。 

事業計画書には、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、借入金返済計画書、アクションプランを含みます。数値計画を含むため、金融機関にとっては関心の高い計画書になります。

このように、経営計画書の作成には全体的、長期的、戦略的な視点が必要でしたが、事業計画書では部門的、短期的、戦術的な視点が必要です。会社の現状を把握し、今後どうなりたいか、どう行動するべきか、事業計画書は「会社のあるべき姿」を目指す実行計画書であると言えます。

3.経営計画書の重要性

①事業計画書には経営計画書が必要である

事業計画書の方が具体的に示され、金融機関の関心が高いのであれば、事業計画書だけ作ればよいように思うかもしれません。しかし、経営計画書の「会社のあるべき姿」がなければ、具体的な行動を導くことはできず、行き当たりばったりの事業計画書になってしまいます。
そのため、必ず経営計画書を作成してから事業計画書を作成しましょう。

②現状を把握して分析し改善に役立てる

「会社のあるべき姿」を目指すためには、まず現状を把握しなければなりません。現状がわからなければ、具体的に何をすればよいかもわからないからです。経営計画書の作成には、現状を把握し客観的に分析する工程があります。これによって把握・分析した現状と「会社のあるべき姿」と結び、どのように行動するべきか考えます。

その過程を通して、人材やハード面の不足といった課題が見つかり、業務の改善につなげることができます。

③経営理念などを確立し目指す方向を決める

旅には地図が、航海にはコンパスが必要なように、会社経営には経営理念やビジョンが必要です。経営理念やビジョンがなければ、経営に行き詰まってしまう可能性があります。経営計画書の作成を通して経営理念やビジョンを考えることで、目標達成に向けて進むべき方向を見いだすことができます。

また、昨今の厳しい情勢を考えると、変化に対応できない企業は生き残ることはできません。その反面、変化してもブレることのない軸を持っている必要もあります。その軸こそが経営理念です。ビジョンは経営理念をより具体化したものです。経営計画の策定において、経営理念やビジョンはとても重要です。

④組織で経営計画書を共有し計画を実行する

経営計画書ができたら、経営者の頭の中にとどめておくのではなく、会社全体で共有します。共有できたら、部署や個人の目標や計画、タスクに落とし込み、計画を実行に移します。このように、経営計画書は、従業員個々の目標を立てる際にも重要な役割を果たします。

しかし、基本的に人の価値観はそれぞれ異なります。各従業員のベクトルがバラバラだと、会社全体としてあるべき姿に向かうことができません。そのため、経営計画書は文書化し、説明会を開くなどして浸透するよう工夫します。会社の進むべき方向がわかれば、社員の仕事に取り組む姿勢も変わるはずです。

4.経営計画書の種類

経営計画書には、先述したように長期経営企画書、中期経営企画書、短期経営企画書の3種類があります。それぞれの概要について次に示します。

1.長期経営計画書

会社の10年後の将来を見据え、会社全体の経営方針や長期的なビジョンなどを明示する計画書です。そのため、細かい具体的な数値はあまり示さず、目標とする売上額や社会的な立場について策定します。

2.中期経営計画書

3〜5年後の将来を見据えた経営計画が中期経営計画書です。長期経営計画書で掲げた目標を踏まえ、数年後の売上や利益、コストなどの具体的な数値や、どのような行動を起こすかを施策に落とし込みます。

3.短期経営計画書

中期経営計画書で策定した内容を、1年単位で業務レベルに落とし込んだものが短期経営計画書です。年間の売上や人件費、コストなど、項目ごとに細かく決めていきます。

4.中期経営計画書の書き方

3種類の経営計画書の中から、ここでは最も多く作成される中期経営計画書の書き方について紹介します。

①経営理念

計画自体は3〜5年の中期のものとなりますが、会社経営の道しるべとなるため、経営理念は不可欠です。
経営理念はミッション(使命、存在意義)、ビジョン(経営方針、未来像)、バリュー(価値観、行動指針)からなっています。経営理念を今一度確認し、中期経営計画書に反映しましょう。

②中期ビジョン

「売上を倍にしたい」「支店を10店舗増やしたい」「地域で1番になりたい」など、5年後にあるべき姿を明確にします。中期ビジョンが決まれば、「何に力を入れるべきか」「無駄な部分はないか」など、課題や問題が明確になるため、対策を考えやすくなります。

③内部・外部環境分析

自社の商品や社内体制などに関する強みや弱みについて分析してみましょう。また、自社の周辺地域や競合他社などの外部環境についても分析してみましょう。これによっても課題や問題が浮かんでくることがあります。
中小企業ではSWOT分析、大企業ではPPM理論が用いられることが多いようです。

④経営方針

経営理念やビジョンを実現するために、どのような行動を起こすのか、会社の方向性を指し示すものです。中期ビジョンを示さずに、経営方針にまとめることもあります。

⑤経営戦略

経営方針を達成するために、事業ごとにどのように行動するかを考えます。具体的には、販売戦略、組織戦略、設備戦略、財務戦略などを作成することが一般的です。

⑥数値計画

中期経営計画を実行して得られる売上や利益、必要なコストについて示します。具体的には、売上計画(売上区分別の売上など)、経費計画(人員、製造費など)、設備投資計画(投資、借入、返済など)です。

5.まとめ

経営計画書は「会社のあるべき姿」を定め、会社全体で共有することで従業員の気持ちのベクトルを合わせ、モチベーションを高めるものです。しかし、予期せぬトラブルなどでうまくいかないことはあります。その時は経営理念やビジョンに立ち返り、計画を見直すことが大切です。また、計画を立てっぱなしにするのではなく、PDCAサイクルを回して、改善を重ねていくことも必要です。