生きている証を この子に感じてもらいたい。

最期の1%まで幸せに生きる【 連載 No.7 】

あお君との出会い

お子さんに重い障がいがあった時、親として、どう感じ、どう受け止めるのでしょうか?
私は死産を経験し、あの子をこの手で抱きしめたかったという思いはありましたが、障がいのある子どもを産み育ててはいませんので、障がいのある子どもを持つ親の本当の気持ちは計り知れません。
私は、一組の家族との出会いでいろいろな気持ちを感じ取り、知ることができました。
そして、両親の気持ちを知ることにより、私はできることをしたいと心から思いました。

私が重い障がいを持ったあお君と出会ったのは、あお君が2歳になる少し前でした。
公立保育園から受け入れが難しいと判断され、ご両親が保育園を探していらっしゃる時に出会いました。
ひなたぼっこ保育園なら受け入れてもらえるのでは? と市役所からの勧めで、お父さんから電話をもらいました。
私も公立保育園が断ったお子さんをこんなに小さな保育園で受け入れられるのか? と不安はありました。
保育士ももちろん初めての経験で不安でした。

リスクがあっても
生きている証を

しかし、ご両親と前向きに腹を割って話し合いました。
ご両親は、保育園に預けることがあお君にとって感染リスクや健康管理の負担になることを承知していました。
それでもあえて預ける理由を次のように話してくれました。
「閉鎖的な環境で生きたとしても、この子が生きている証にはならない気がします。
この子は人が好きです。
たくさんの人と接することの方が大切だと思います。
たとえ、それで命の長さが短くなることになっても…」

ご両親の強い決心のようなものを感じました。そして、私たちも決心しました。あお君の居場所をつくると!

共に癒し、
優しさを育む時間に

初めは、試行錯誤していた保育士たちも、徐々にあお君への対応に慣れていきました。
また、他の子どもたちは、言葉でないコミュニケーションを使い楽しそうに接しており、その姿に感動すらしました。
あお君は保育園に入園した頃、寝返りはできましたが、園内を意思を持ってコロコロと動くことはなく、また、首も座っていなかったので、不安定でした。
しかし、首をグッと持ち上げて、みんなを見たり、遊びたい時は自力で寝返りを打ったりしながら、近づいていきました。時には、おもちゃの取り合いも!

あお君も他の子どもたちと何も変わりません。
1人の意思のある子どもです。
食欲もみんなで食べることにより、グングンとアップしていきました。
ひなたぼっこ保育園では子どもたちだけでなく、ひなたぼっこ村のお年寄りとも交流がありました。
あお君はお年寄りからも人気があり、抱っこしてもらい、互いに癒しの時間を共有していました。
そんないろいろな刺激によって、あお君だけでなく、周りの成長や癒し、優しさを育む時間となりました。


今の時代、障がい者は障がい者、高齢者は高齢者とひとくくりにしています。
しかし私は、世の中はいろいろな人が交わり合って1つの場所にいることで共に生きる力となることを、また、最期の1%を幸せに生きることの大切さを、あお君家族から学んでいます。