企業での地方創生成功事例12選!地方活性化するビジネスの取り組みを紹介

「地方創生」はさまざまなメディアで取り上げられており、言葉として一度は耳にしたことがあると思います。
しかし、企業や自治体がどのような取り組みを行っているのかご存じの方は少ないかもしれません。
もともとは安倍政権時代に打ち出された政策でしたが、昨今のコロナ禍の影響もあり、地方創生はさらに重要視されています。

今回は、企業での地方創生成功事例12選として、地方を活性化するビジネスの取り組みを紹介します。

1.地方創生とは

地方創生は、冒頭でも述べたように、2014年に第二次安倍内閣によって打ち出された地方活性化の政策で、法的根拠は「まち・ひと・しごと創生法」(2014年11月28日公布)です。
地方創生の意味するところは、文字どおり「地方を創生する」、つまり「それまで地域になかった新しいものを作る、実施するなどして活性化を図る」ことです。
取り組みの方法としては、地方でのイベントの開催やサテライトオフィスの設置によるIT企業の誘致などが挙げられます。

2.地方創生が必要とされる背景

地方創生の目的は、地方の人口減少に歯止めをかけ活性化につなげることです。
そして、この政策を通して地域産業の成長、安定した雇用の維持、消費の促進、地域経済の強化をねらいとしています。

なぜ、このような政策が必要なのか。それは、少子高齢化が進み、地方経済の衰退が危惧されているからです。
具体的には、次の目標が掲げられています。

都心への一極集中の是正

進学・就職を機に、東京をはじめとする都心への転入者は年々増え続けています。
一方、都心以外の地方では転出者が増え続け、人口が減少しています。
このままでは地方の人口はさらに減少してしまうため、それに歯止めをかけようというのです。

ところが、昨今のコロナ禍の影響により、図らずも都心からの転出者が転入者を上回る事態となりました。これにより、地方創生はさらに注目が集まっています。

地方財政・サービスの安定

都心への転出に加え、少子高齢化によっても地方の人口は減少しています。
人口の減少は税収の減少を招きます。
これでは、公共施設などのサービスを停止せざるを得ない事態になりかねません。
地方自治体の安定した財政やサービスを維持するためにも、人口減少を食い止める必要があります。

地方産業の強化

地方産業の衰退も人口流出が止まらない原因の一つです。
後継者おらず会社が存続できなくなったり、企業の移転により働く場所が失われていたりするケースは少なくありません。
地方創生には既存産業の強化や新たな産業づくりの役割があり、地方に住む人が安定して働ける場所を生み出すことが期待されています。

3. 地方創生成功事例12選

ここでは、地方創生への取り組み成功事例について紹介します。

シタテル株式会社

出典: シタテル株式会社

熊本県にあるシタテル株式会社は、インターネットによる衣服生産のプラットフォームを構築し、オリジナル商品を作りたい小規模なブランドと熟練した技術を持つ国内の職人や縫製工場をマッチさせる新しい流通サービスを提供しています。

これにより、ブランド側には短納期、低コスト、ニーズへの柔軟な対応が可能になること、職人・縫製工場側には遊休施設の活用と利益率の向上といったメリットが生まれ、アパレル事業が抱える問題点の解消につながりました。

エーゼロ株式会社

出典: エーゼロ株式会社

エーゼロ株式会社は、岡山県の西粟倉村役場と連携して「ローカルベンチャー支援事業」を行っており、起業家を育成して地方での仕事の創出や人材の発掘・育成の場づくりに取り組んでいます。

この取り組みにより、西粟倉村で誕生したベンチャー企業は12社に上り、12社合計で7億円の売上げを達成しました。 また、取り組みがインターネットなどにより外部へ発信され、移住者が年間で約90人増えました(2014年度実績)。

中村ブレイス株式会社

出典: 中村ブレイス株式会社

島根県大田市に本社を置く中村ブレイス株式会社では、義肢装具を制作しています。
その技術は非常に高く、全国から入社希望者が集まります。
同社では社会貢献活動として、街の景観を維持するため、補助金や融資に頼らず古民家を50軒以上改築しています。
街の景観が維持されるだけでなく、古民家の魅力が若い人を惹きつけ、移住者が増えるといった効果を生んでいます。

株式会社小松製作所

出典: 株式会社小松製作所

東京から石川県小松市に本社機能の一部を移転させることで、地域への人材移転および地域との交流が増加しました。
具体的には、人材育成の拠点を石川県小松市にあるKOMATSUの展示館「こまつの杜」に移転、2011年から地方採用を開始し、OB社員による子ども向けの教室などを開催しました。
これらの取り組みにより、東京本社からこまつの杜に約150人が移転し、2011~2014年で30人を地方採用しました。そして、年間約6万人の子どもがこまつの杜を訪れるという成果につながりました。

株式会社ダンクソフト

出典: 株式会社ダンクソフト

企業向けの大規模WEBサイトの運用などを行う株式会社ダンクソフトの本社は東京にありますが、社員が病気で出勤できなくなったことや東日本大震災の経験から、在宅勤務やそのための環境整備の必要性を感じました。
そこで、徳島県神山町にある築80年超の古民家を改築してサテライトオフィスとし、その後も各地域にサテライトオフィスを設置していきました。
この取り組みがメディアで取り上げられたことで入社希望者が増加し、採用活動につながりました。
さらに、地方での仕事の受注にも成功し、事業規模の拡大にもつながっています。

霧島酒造株式会社

出典: 霧島酒造株式会社

黒霧島」や「赤霧島」などの芋焼酎を生産する霧島酒造株式会社の本社は宮崎県都城市にあり、一貫して地域に根差した企業活動を行ってきました。
例えば、水や材料のかんしょはすべて南九州のものを使う、工場はすべて都城市に建設する、ふるさと納税の返礼品として商品を提供し自治体と共同でPRを行うなどの取り組みを行っていました。
その結果、売り上げは15年間で約7倍になり、地域の雇用創出に貢献しています。
また、2014年から業界シェア1位となり、2015年度のふるさと納税寄付金額が全国1位という結果につながりました。

サイファー・テック株式会社

出典: サイファー・テック株式会社

情報漏えい防止システムなどを開発しているサイファー・テック株式会社は、ワークスタイルとして「半X半IT」(Xは趣味など個人によって異なる)を提唱しています。
この実現するには自然の中で働ける環境が必要と考えていたところ、徳島県の企業誘致事業「とくしまサテライトプロジェクト」の存在を知り、徳島県美波町に老人ホームをリノベーションしてサテライトオフィス「美波Lab」を開設しました。

これにより、半X半ITに賛同するエンジニアの採用、事業の好循環につながりました。
また、消防団や阿波踊り、地域住民に向けたIT利活用講座などを通じて地元住民との交流が生まれました。

株式会社アイエスエフネット

出典: 株式会社アイエスエフネット

ITインフラの導入やサポートを手がける株式会社アイエスエフネットは、神奈川県川崎市と連携して、生活保護受給者の自立支援を行っています。
具体的には、生活保護受給者を雇用して、税金を納められるようにするといった取り組みです。

しかし、中には就労の意欲が乏しい人もおり、まずは生活保護受給者に会社に来てもらえるよう働きかけました。
会社に来られるようになったら短い時間で軽作業を行うなど、徐々に慣れていってもらいました。
その結果、数百人以上の生活保護受給者の採用につながりました。

ヤマゼンコミュニケイションズ株式会社

出典: ヤマゼンコミュニケイションズ株式会社

ヤマゼンコミュニケイションズ株式会社は、栃木県宇都宮市でホームページ制作や印刷を請け負っています。
同社が運営するサイト「栃ナビ!」では、お店やイベントなどの情報、地域住民の口コミなどを掲載しています。
口コミはそのまま掲載するのではなく、スタッフが取材に行って店側の承諾を得たもののみを掲載しています。

これに加え、求人情報も掲載することで、地域の雇用創出につながっています。
また、「栃ナビ!」と連動したイベントの開催や、ほかの地域の口コミサイトの立ち上げ支援を通し、地域の活性化に貢献しています。

これらの取り組みは、3人の新卒採用枠に対して600人の応募があるなど、採用の面にも効果をもたらしました。

株式会社六星

出典:株式会社六星

石川県白山市にある株式会社六星は、農業の六次産業化に取り組みました。
個人経営の視点になりがちな農業に、企業経営の視点を取り入れたのが大きな特徴です。

具体的には、近隣の農家から農地を請け負って稲作を代行したり、餅・弁当・和菓子・総菜・産直・レストランなどを多角的に手がけたりしました。
また、女性や若手などを出身地にこだわらず、人物本位の採用を行いました。

その結果、耕作面積は石川県で最大となり、高齢化が進む農業の下支えとなりました。
そして顧客ニーズを押さえた六次産業が成功し、売上総額11億円を突破しました。
さらに多様な人材の確保につながりました。

株式会社Amnak

出典: 株式会社Amnak

兵庫県養父市で塗装工事などを請け負っている山陽Amnak株式会社は、新たに株式会社Amnakを設立し、地域農業の活性化に貢献しています。
具体的には、休耕地での農作業の受託業務や、米の収穫から精米までを一元管理するライスセンターの設立、スマート農業に基づくビジネスモデル構築に取り組んでいます。
また、自社で日本酒を醸造し海外に輸出するなど、地域商品の魅力を広めています。

株式会社キョクイチ

出典: 株式会社キョクイチ

北海道旭川市にある株式会社キョクイチは、生鮮食品卸において地域の中心的な役割を担っています。
大規模な卸機能・市場機能を有しており、水産・農産・畜産の多品目を集荷から販売までをワンストップで行っています。
地方創生の取り組みとして特筆すべきは、アジア圏への輸出の仕組みをつくり、地域の商品を輸出するという商社機能を強化していることです。
北海道産の農水産品をブランド化する上で、重要な役割を担っています。

4.まとめ

地方創生が注目されているのは、国の政策であることだけが要因ではありません。
事業の拠点を地方に移すことで、利益の拡大だけでなく企業や地域の課題の解決にもつながる可能性を秘めています。
コロナ禍によるテレワークの普及は、今後の地方創生の加速につながると思われます。