藤田弁護士の法律相談所【 連載 第4回 】
自社サイトのコンテンツやデザインについて著作権(複製権)や著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているとのクレームを受けました。
今回は自社サイトで著作権(複製権)や著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているとのクレームを受けた場合の対応や、著作権法の保護の対象、複製権などについて解説します。
専門的な判断が必要となるので、今すぐ著作権法に詳しい弁護士に相談しましょう。
まず、①相手が著作者や著作権者に当たるか、②相手の作品・表現が、著作権法上の保護の対象となる「著作物」に当たるかどうかを検討します。
次に、実際に③著作権侵害や著作者人格権侵害があったといえるかどうかを検討します。その上で、クレームへの対応を考えることとなります。
それぞれについて専門的な判断が必要となりますので、まずは著作権法に詳しい弁護士に相談してください。
「著作物」に当たるかどうかは、どのように検討するのでしょうか?
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」といえるかどうかが問題となります。
単なる事実やデータは、「思想又は感情」を表現したものとはいえず、著作物に当たりません。著作権法はあくまで表現を保護するものであり、アイデアは「表現」ではないので、保護の対象となりません。
誰がやっても同じ表現になる場合やありふれた表現の場合、表現の選択の幅がない場合は、「創作的」に表現したものとはいえず、著作権法の保護の対象とはなりません。
どういう場合に「複製」に当たるのでしょうか?
著作権のうち、無断で著作物を複製されない権利のことを「複製権」といいます。
既存の著作物に「依拠」した(既存の著作物の表現内容を知り、これを利用して自己の作品を作出した)といえ、その上で、その著作物と全く同じものを作成する場合や既存の著作物に修正、増減、変更等を加えたがその部分に創作性が認められず表現の本質的特徴が維持されているといえる場合には、「複製」に当たるとされます。
既存の著作物と接する機会がなく、内容を知らないで同じような作品を作った場合は、複製には当たりません。
既存の著作物に修正、増減、変更等を加え、その部分に創作性が認められるものの、表現の本質的特徴が維持されている場合は「翻案」に当たるとされます。翻案に当たる場合は、「翻案権」の侵害となる可能性があります。
さらに、既存の著作物を「改変」したといえる場合は、複製権や翻案権のほか、「同一性保持権」の侵害も問題となります。同一性保持権とは、著作者人格権のうち無断で改変されない権利のことをいいます。
「引用」などを理由に許される場合はないのでしょうか?
引用として許容されるかどうかについて、以前、裁判所では引用して利用する側と利用される側とが明瞭に区別でき、前者が主で、後者が従の関係にあるかどうかを基準に判断していました。
最近は、著作物の性質、利用態様、利用目的、利用分量等を総合的に見て、公正な慣行に合致し、目的上正当な範囲内といえるかどうかを踏まえ、引用として許されるか否かを判断する傾向にあります。
また、写真や動画を撮影したときに、本来意図した被写体だけでなく、背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合、形式的には複製だが、利用の質・量が軽微で、権利侵害の度合いは低いとして、著作権が制限される可能性があります。
例外的に許されるかどうかも含め、著作権については専門的な判断が重要となりますので、すぐに知的財産権に詳しい弁護士にご相談ください。
多治見さかえ法律事務所 弁護士
慶應義塾大学経済学部卒業。近くで気軽に相談できる弁護士をモットーに、取引や労務に関する紛争の解決・予防に地域密着で対応中。
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