最期の1%まで幸せに生きる【 連載 第3回 】
誰もが役割を持って生まれてくる
弊社は、障がいがあってもなくても、一人の人間として尊重され、居場所を感じられる環境をみんなで自然につくり出すことを大切にしています。なぜならば、この17年間、いろいろな事業の運営に至った理由が、そこに集う高齢者や障がいを持つ子どもたち、園児からの気づきや学ぶことがあったからです。
重度の障がいを持つあゆ君は、車いすでの生活ではありましたが、保育園の子どもたちに絵本の読み聞かせをしてくれました。子どもたちは、あゆ君の絵本の読み聞かせが大好きで、いつもあゆ君の周りを囲んで熱心に絵本を見ています。
また、保育園の運動会の司会もしました。プログラムを読んだり、応援をしたり、走ることはできなくても、ほかにできることがたくさんあり、素晴らしい役割を担っていました。
保護者さんも園児も「あゆ君、ありがとう。一緒に運動会できてよかったよ」と、言ってくれました。
園児もあゆ君のことが大好きで、あゆ君のいる日はいつもにぎやかなのです。あゆ君はひなたぼっこしながら、いろいろな人の役に立つことやたくさんの人のお話相手もできます。
高齢者とカラオケもします。自慢の「北国の春」を一緒に熱唱するのです。
そんな微笑ましい光景も日常的です。
命の輝きは、温かい環境とその人の居場所がつくるものだと感じ、彼からたくさんの学びをいただいています。人は役割を持って生まれてきます。しかしそれ以前に、その人の存在がすでに人に勇気を与えています。
ない物よりある物に目を向ける
私たちは、ない物を探すのは得意です。しかし、ある物やできることを探せば無限にあるため、なかなかそこに目を向けません。
最期の1%を幸せに生き抜くためには、やはり、自分の使命(命の使い方)をしっかり認識して、役割を果たすことが大切だと! 彼を見てたくさんの想いが溢れます。人間は無限の可能性があることを、こうした人から教えてもらい学んでいます。
彼らは世間的には、社会的弱者と言われます。しかし、私は彼らを弱者などと思ったことはありません。なぜなら強いパワーがあり、純粋で人を見抜く力は誰よりもあるからです。
人を見抜く力があると言えば、認知症の方にも同じことが言えます。認知症の人が何も分かっていないと思う方が多いようですが、とんでもないことです。相手の心が本物か?偽物か?は分かるのです。
特に言葉の話せない認知症の方や重い障がいのある方は、相手の気持ちを必ず感じ取るのです。嘘や偽善は通用しません。人は心で感じるのです。だからこそ、安心できる環境や自分の役割、「ここにいていいんだ」と思える場所は大切です。このように考え、私は今も活動を続けています。
私たちは障がいの有無にかかわらず、共に生きる社会をつくりたい——それは、万人が幸せに生き、最期の1%を幸せに迎えられることにつながると、私は経験から信じています。
有限会社ひなたぼっこさと 代表取締役
看護師として総合病院勤務。訪問看護などを経て17年前に起業。デイサービス・有料老人ホーム・保育園を経営する。
【有限会社ひなたぼっこさと】
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