「アロンソンの不貞の法則」~ 苦手な相手こそ褒めましょう ~

ビジネス こころと体の健康増進室【 連載 FILE 016 】

アロンソンの不貞の法則とは、アメリカの社会心理学者、エリオット・アロンソンが1965年に発表した「Gain-loss theory of attraction(引力のゲインロス理論)」から導き出された法則で、親しい人に褒められるよりも、新しく出会った人や、親しくない人から褒められる方が人の心に響きやすいという法則のことを言います。

たとえば、古くからの友人に「あなたは優しいね」と褒められるよりも、仕事で初めて知り合った顧客に「お心遣い、ありがとうございます」と褒められたり、感謝されたりする方が嬉しく、仕事のやる気が出ますね。確かに普段褒めない家族から褒められるとまず素直に受け取れず、何かを企んでいるとか疑いたくなったり、ヘソクリがバレたか?と勘ぐったりしてしまいます。しかし会社で他部署の若い社員から同じように言われると、「え?そう? ランチでもご馳走しちゃおうかな」と素直に嬉しい気持ちになるでしょう。
このように付き合いが長ければ長いほど、プレゼントをしてもフランス料理をご馳走しても「当たり前感」が出てしまい、すぐに感謝やお礼の言葉が出ないのです。

この方法を使って初対面の人に良い印象を与えてみましょう。
同じ【褒められる】という行為でも、関係性の希薄な方から褒められる方が嬉しいことが、何となく伝わったでしょうか。関係性ができている人はそもそも味方であると認識しており、あなたを不快にさせるようなことはなかなか言いません。しかし、関係性のできあがっていない他人から不意に褒められるというのは、あなたがその事柄に対して認められるべき力を発揮したということになります。第三者から認められたということなのです。だからこそ、承認欲求が大きく満たされるのです。

身内に甘いというのは相互に理解している事柄であり、そういった忖度の働かない赤の他人から受ける評価は、混じりっけの無い純粋な褒め言葉と認識するのです。学業であろうと、仕事であろうと身内に褒められるよりも顧客や他人から褒められた方が達成感がありますね。こういった心理的作用が働いているからこそ、他人の評価は絶大に自分の承認欲求を満たしてくれるのです。

だからと言ってセールスや勧誘で「奥さん、お美しいですね」「今日のスカートは良くお似合いですね」と言ってゴマをすっても無駄です。
シチュエーションが怪しい場合は、商品を売りつけようとしている疑わしい言動だと思われてしまいます。これにかかるとアロンソンの法則は効き目が無くなってしまうので、他人に対して使う場合はそういったことも考慮しましょう。
疑わせてはダメ、過剰に褒めすぎてもダメなのです。

アロンソンの不貞の法則を上手く使って人間関係を築くには、第一印象をよくする、初対面の時に使うというのが1番の活用方法です。
ビジネスだろうと、恋愛だろうと同じで、はじめの一歩が肝心です。
挨拶が終わった時、相手が一番努力しているであろうことを見抜くのです。
ビジネスパーソンなら身だしなみ、資料の質、声、目線の配り方。
異性なら、容姿、仕草、清潔感、気の使い方。
そういった『本人が努力している、でも他人が中々褒めてくれないところ』を一点突破で好印象だと伝えることが肝心です。きっと相手もあなたを好印象に受け止めることでしょう。

どうしても褒めるのが苦手……という方は、人間が誰でももっている「承認欲求」を利用するのがおススメです。これは誰かから「認められたい!褒められたい!」と思う気持ちのことです。
認められることは相手に受け入れられることでもあります。
自分を認めてくれる相手に、人は好感を抱きやすいのです。
もしも今あなたに、苦手な人やどうしても会話が弾まない人がいるなら、相手の好きな分野をリサーチしてみてください。得意な分野、興味がある分野の話題を、ナチュラルに挟み込みましょう。

きっと会話が盛り上がるはずです。
相手の話に対して「聞き上手」になることで、相手の承認欲求を満たすことが可能になります。
「苦手だから……」と敬遠しているだけでは、何も始まりません。苦手な相手だからこそ、一歩近づいてみるのです。

勇気を出して、相手を褒めてみてはいかがでしょうか。