ハイパーオートメーションとは?
従来の業務自動化との違いとメリットや課題について解説!

繰り返しの作業をロボットが自動化するRPA(Robotic Process Automation)を導入する企業が増えています。
そして、RPAの次に来ると言われているのがハイパーオートメーションです。
さらに自動化してくれそうな印象を受けますが、ハイパーオートメーションとはどのようなものでしょうか。
今回は、ハイパーオートメーションについて従来の業務自動化との違いを挙げ、メリットや課題について解説します。

1.ハイパーオートメーションとは

ハイパーオートメーションは、RPAやAI、機械学習などあらゆる技術やツールを連携させ、特定の業務ではなく、業務全体を自動化しようという概念です。

例えば、通常のマーケティング活動では、効果的なマーケティング施策を検討する際、まず消費者の自社製品への意見や評価のデータを収集します。
その後、集めたデータの加工・分析し、分析結果のレポートを作成、レポートを基にしたチームでの話し合い、最終的な施策の判断・決定という流れで進んでいきます。
それがハイパーオートメーションでは、データの収集はWebスクレイピングやWebクローリング(いずれもWebから情報を収集する方法)、データの解析はAI、レポート作成はRPAというように、複数のツールと技術を用いて一連の工程を自動化します。

アメリカにあるIT分野を中心とした調査・助言を行う企業・ガートナー社は、「2020年の戦略的テクノロジートレンドのトップ10」を発表し、ハイパーオートメーションがその1位に選ばれました。
このように、ハイパーオートメーションは新しい自動化の概念として、テクノロジー分野で注目されています。

2.注目されている背景

コロナ禍による生活や社会の変化への対応

新型コロナウイルス感染症の拡大により、人々の生活や社会は大きく変化し、テレワークといった新たな常識が定着(ニューノーマル)しつつあります。
仮に、コロナ禍が治ったとしても、以前のような生活や社会には戻らないと考えられます。
そのため、企業はDX(デジタル技術による生活やビジネスの変革)の推進に力を入れています。
ハイパーオートメーションは、そのうちの一つと言えます。

少子高齢化による労働力の減少

日本は少子高齢化が進んでおり、働き手が減少しており、今後も減少することが見込まれています。
このように働き手減り、労働力が限られる中で企業が成長していくためには、業務の効率化は必須であり、ハイパーオートメーションへの期待が大きくなっています。

3.従来の業務自動化との違い

ハイパーオートメーションは、RPAを起点としていますが、RPAとは業務への適用範囲が異なります。
RPAは一部の業務しか自動化できません。
一方ハイパーオートメーションは、先述したように、複数のツールと技術を用いて一連の工程を自動化する概念です。

通常、業務の自動化プロセスを作成するには、自動化の対象となる業務の発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価などの過程を踏まなければなりません。
しかしハイパーオートメーションは、このような自動化プロセスの作成そのものを自動化します。
そのため、より高度に自動化することができます。
また、専門的な知識が求められる複雑な業務プロセスや非構造化データによるプロセスも、AIや機械学習を組み合わせてRPA機能を拡張すれば、自動化することが可能です。

4.ハイパーオートメーションのメリット

ここでは、ハイパーオートメーションの導入することで得られるメリットについて紹介します。

業務の効率化

繰り返しの作業をパイパーオートメーションに任せれば、その分の時間を重要度の高い業務やクリエイティブな業務に充てられ、業務の効率化を図ることができます。
また、24時間365日稼働が可能になり、ヒューマンエラーや人間関係によるトラブルを避けられ、膨大な作業を素早く処理することができます。
これらのことから、パイパーオートメーションの導入は、新たな労働力の獲得に等しいととらえられます。

一連のプロセスを自動化

先述したように、業務の自動化プロセスを作成するには、自動化の対象となる業務の発見から再評価までの過程を踏まなければなりません。
しかし、RPAを導入しても自動化の対象となる業務を見つけられず、効果を得られない企業が多いようです。

その点、ハイパーオートメーションでは、あらゆる技術やツールを連携させ、自動化が可能な業務を見つけることが可能です。
また、自動化プロセスの作成も自動で行うため、複数の業務を効率よく行える方法を導き出すことができます。

自動化する対象範囲の柔軟な設定

RPAやAIなどの技術は、すでに自動化のソリューションとして活用されていますが、自動化の対象範囲に制限があること、業務間で連携しにくいことなどの課題があり、利便性を十分に生かしきれていないケースもあります。
しかし、ハイパーオートメーションは単一のツールによるものではないため、自動化の対象範囲を広げるなど、柔軟に設定することが可能です。

専門性の民主化

専門的な知識を持たない従業員でも専門的な業務を行えることを「専門性の民主化」と言います。
ハイパーオートメーションでは、幅広い業務を自動化できることにより、誰でも専門的な業務をこなすことができるようになります。
ガートナー社は、2023年までに次の4つの分野で民主化が進むとしています。

データとアナリティクスの民主

ツールの対象をデータ・サイエンティストから、専門の開発者コミュニティへと拡大

開発の民主化

カスタム開発されたアプリケーションでのAIツールの活用

設計の民主化

ロー・コードやノー・コードによるアプリ開発の自動化

知識の民主化

IT部門以外の人の専門スキルの活用と応用

5.ハイパーオートメーションの課題

ハイパーオートメーションの導入には、どのような課題があるか見ていきましょう。

全社的な取り組みが必要

ハイパーオートメーションの実現には、全社的に業務プロセスを見直す必要があります。
部署ごと、業務ごとにツールを導入していては、自動化の効果を十分に得られません。
また、データの一元化も必要になってくるため、事前準備の担当者の負担が大きくなり、コストがかさむことが考えられます。

システム連携にコストが必要

RPAやERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)、CRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)は、自動化の対象範囲が決まっています。
範囲が異なるシステムを自社の目的に応じてカスタマイズし連携させるには、コストがかかることを念頭に置いておく必要があります。

導入後のフォロー体制が必要

慎重にシステムを構築し、万全に準備していたとしても、イレギュラーは起こるものです。
運用開始後は、そのようなイレギュラーに対応できるよう体制を整えておくことが大切です。

6.まとめ

ハイパーオートメーションを実現するには、業務プロセスの見直しや、スムーズに運用するための体制構築などに手間やコストがかかりますが、業務の効率化など得られるメリットはとても多いです。
労働力の減少が見込まれるこれからの時代において、ハイパーオートメーションは無視できない概念と言えるでしょう。