クラウドネイティブとは?定義やメリット、コンテナ化を分かりやすく解説

クラウドネイティブの「ネイティブ」には「生まれつきの、本来の」という意味があります。しかし、ただ「はじめからクラウドを利用する、クラウド環境が前提」だけでは、「クラウドネイティブ」にはなりません。クライブネイティブとはクラウドの利点を徹底的に活用することがポイントになります。
今回はクラウドネイティブとは何なのか?定義やメリット、コンテナ化について分かりやすく解説します。

1.クラウドネイティブの定義

CNCFという団体がクラウドネイティブについて定義しています。
CNCF(Cloud Native Computing Foundation)は、世界主要IT企業など600団体以上が参加するクラウドネイティブを推進する団体です。このCNCFによって定義されたクラウドネイティブの定義が業界の標準として認められています。

「クラウドネイティブの定義」が出来るまでの経緯

以前はオンプレミス(自社運用)が主流でしたが、クラウド化が進み、初めからクラウドを利用してシステム設計がされるようになりました。
こうしたクラウド上での利用が前提のシステム構造のことを、クラウドネイティブと表現されるようになりましたが、当初は明確な定義があったわけではありませんでした。

CNCFがクラウドネイティブを定義するに至った経緯は以下のようになります。

  1. 「コンテナ」のような、仮想マシン(VM)に比べて軽く、開発したアプリケーションを簡単にサーバー上に展開、配置して利用(デプロイ)できる技術が出てきました。
  2. 1つのコンテナに全て詰め込むのではなく、小分けにしてアプリケーションを作ることで(マイクロサービス)、効率を上げて、デプロイメントの容易性や回復力(レジリエンシー)を高めようとしました。
  3. そうするためには、従来のモニタリングをさらに強化する必要がありますが、マイクロサービス間の通信は、人間が追跡して判断できる世界ではなくなっています。人間が判断できる限界を超えて観測するために可観測性(オブザーバビリティ:システムの出力を調査することで内部の状態を測定する能力)のような考え方が出てきました。

こうしたクラウド環境におけるアプリケーション開発の流れの中から、CNCFによりクラウドネイティブが定義されました。

以下は日本語で記載されたクラウドネイティブの定義です。

「クラウドネイティブ技術は、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの近代的でダイナミックな環境において、スケーラブルなアプリケーションを構築および実行するための能力を組織にもたらします。このアプローチの代表例に、コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス、イミュータブルインフラストラクチャ、および宣言型APIがあります。

これらの手法により、回復性、管理力、および可観測性のある疎結合システムが実現します。これらを堅牢な自動化と組み合わせることで、エンジニアはインパクトのある変更を最小限の労力で頻繁かつ予測どおりに行うことができます。

Cloud Native Computing Foundationは、オープンソースでベンダー中立プロジェクトのエコシステムを育成・維持して、このようなパラダイムの採用を促進したいと考えています。私たちは最先端のパターンを民主化し、これらのイノベーションを誰もが維持できるようにします。」

出典:CNCF Cloud Native Definition v1.0

クラウドネイティブの定義は、3つのブロックに分かれています。

① 上段には、想定される環境と推進手段(代表的なアプローチ方法)

アプリケーションを開発するための能力を組織に与えるというところから、今までのやり方とアプローチ方法が変わることが分かります。

アプローチの代表例として、コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービスなどを挙げています。

しかし技術を導入すれば良いというのではなく、能力を組織にもってくることをクラウドネイティブと言っていることから、「スケーラブルな(需要が増えた時に対応できる)アプリケーションを作る」ために、クラウドの最善の使い方や、適切なアプリケーションの設計ができるように努力することが大切です。

② 中段には、実現したい状態:「回復力」「管理力」「可観測性」「疎結合」「自動化により、影響の大きな変更も、最小限の労力で、頻繁かつ期待通りに行える」

  • 回復性:何か起きたら自動的に復旧される
  • 管理力:適切な自動化により、どれがどれだかわかり、管理しやすい状態
  • 可観測性:どこで何が起きているのか正しく把握できる状態
  • 疎結合:各要素の独立性が高い状態

これらのクラウドネイティブによって実現できる姿は、今までもITベンダーやクラウド事業者が目指してきたものと同じです。
しかし、人間が手作業で行ってきたため、かなりの時間を費やしてきました。人間が行えば1分、1時間単位で掛かる処理でも、コンピューターが行えば1ミリ秒、1ナノ秒でできてしまいます。

ここでは、人間の限界を超えて自動化していこうと述べられています。

③ 下段には、CNCFの実現方法

特定のベンダー主導ではない中立な立場であることを「民主化」という言葉で表現しています。
これらの最新技術をOSS(コードの改変や再配布が自由に認められている無償のソフトウェア)として民主化し、ユーザーコミュニティを中心に普及させることが宣言されています。

クラウドの環境を前提に、今までとは違うシステム運用方法を構築して実行していくことで、よりスピーディーに革新的な機能を世の中に送り出していくことができるのが、クラウドネイティブの技術だと言えます。

2.クラウドネイティブのメリット

① 柔軟なスケールが可能

ビジネスの動きに合わせて柔軟な対応ができます。
例えば、キャンペーンなどで一気にサーバーへの負担が大きくなることがあります。従来であれば高い負荷がかかった時のことを考えてサーバーを別に用意していましたが、サーバーの負荷状況に合わせたスケールが可能です。自動的にサーバーの増減を管理してスケールできるため、余分な費用もかかりません。

② 開発スピード

マイクロサービスやコンテナ化によるアプリ開発でビジネスの要求に応えられるアプリケーションをより高速に開発できるようになります。

③ 運用が非常に楽になる

例えば、スケールも自動的に行い、システムダウンした時も自動的に復旧してくれるため、運用が非常に楽になります。
人間が何もしなくても良いという理想的な状態に近づけていくことができます。

クラウドネイティブアプリケーションの利点を活用して、自社のデジタルイノベーションを推進しているのは、テクノロジー企業だけではありません。
また、企業の大小に関係なく、この流れに乗り始めています。現時点での自らのビジネスを最も効率よく回す仕組みを、クラウドネイティブで作っていくという意識が大切になってきます。

3.コンテナ化とは

クラウドネイティブのアプローチ代表例の1つにコンテナ化があります。
コンテナ化とは、実行に必要な全てのファイルをパッケージ化し、分離させる技術のことです。これにより、コンテナ内のアプリケーションを、すべての機能を維持したまま、どこでも(開発、テスト、本番環境など)持ち運べるようになります。

仮想サーバー(VM)と比較すると、コンテナはコンテナ内のOSはホストOSを共有するため、アプリケーションを高速かつ軽量に起動することができます。
これらのメリットにより、開発サイクルの高速化が見込めます。

2013年に「Docker(コンテナ型アプリ実行環境)」が登場したことで、コンテナ技術の導入が加速しました。コンテナの活用が広がることで、その管理ツールも多く開発されるようになりました。

例えば、複数のコンテナ群を一括管理するための「コンテナオーケストレーション」が登場しました。代表的なものとして、CNCFが開発プロジェクトを支援する「Kubernetes」があります。これにより、複数のコンテナを効率よく維持・管理できるようになりました。

4.まとめ

クラウドネイティブという言葉は、使う人によって、多少意味が違っているようですが、今回はCNCFの考えるクラウドネイティブを中心に説明させていただきました。
とても専門的で難しい分野ではありますが、これからも注目して見ていく必要がありそうです。