【サンエッジ株式会社】有機農産物・有機農業を「流通」から支え、生産者を守る

日本の食料自給率は37%。後継者不足も叫ばれ、課題の多い農業だがSDGsも追い風となり有機農産物のニーズは年々高まっている。有機農産物の小分け業と流通を担い全国の生産者を支えるサンエッジ。

農業への思いや次世代の農業を守る取り組みなどを代表の深川清弘代表と深川陽美(きよみ)さんに伺った。

サンエッジ 株式会社 代表 深川 清弘
有機農産物の流通会社に転職し、「有機農産物をもっと普通に買える世の中にしたい」という思いで16年勤務。2010年に独立。有機農産物を消費者に販売することで太陽(Sun)のような温かい気持ち、そしてその気持ちが縁(Edge)になり、携わるすべての人々が笑顔になれる経営をしていきたいと考えている。

流通を担い、農家が栽培に専念できる状況へ

2000年から日本農林規格で有機農産物に対する規格を設けられ、流通には認証が必要となった。

「一次産業である農家は、JAS有機で農薬や化学肥料を使わずに栽培するだけでも大変で、JASマーク認証を取るための圃場検査や年次の監査更新も必要です。その上、生産者側で収穫した野菜の袋詰めまで行うと忙しすぎて流通ができなくなる。そこで、小分け業でJAS認証を取得している私たちが出荷や流通を請け負っています。農家が栽培に専念できる状況に持っていかないと、有機農業は広がらないですから」

全国各地から野菜がバラ詰めで納品され、大手スーパーや生協などへの流通、商品PRをサンエッジが担っている。

「北海道からはJRの鉄道コンテナでジャガイモ10kg箱が500個、つまり5㌧届きます。個体差がある野菜はバランスをみて小分けして、スーパーのニーズも聞き取りながら商品提案をしています」

―独立後、大手スーパー流通への参入は簡単なことではなかったのでは。

「2010年頃には、有機農産物が消費者にとっても一般的な農産物のカテゴリになってきていて、有機コーナーを始めていたスーパーが多かったです。いま僕は業界27年目ですが、当初は有機農産物がマニアックで、一般的な商圏に持っていっても相手にされない。そういった時代を経験していますから、僕が開業してからは非常にスムーズでした。」

―では、開業してから業績は右肩上がりですか。

「はい、おかげ様でいまの年商は6億2,000万円です。ありがたいことです。」

深川代表が業界に入るまで有機野菜は食べていなかった妻・陽美さん。有機野菜の特徴について話始めると笑顔がこぼれる。

陽美
「有機野菜は味が濃くて、えぐみがない。そして、生産者ごとで野菜の顔が違うんです。生産者が土づくりや味、見た目など何に力を入れているのか、作り手の思いや人柄が作物に現れています。うちで働くパートさんは目が肥えているので“これは〇〇さんのニンジンだね”って分かるんですよ」

有機農業を次世代につなげるために

生産者から聞こえてくるのは後継者不足の声。農家の高齢化も進み、次世代の担い手不足による自給率低下も危惧されている。そんな中、深川代表には有機農業を守るために始めている動きがある。

「いずれ農場経営をしていきたい。そのきっかけづくりで始めたのが農家の求人です」

総務を担当する陽美さんもこの取り組みにとても前向きだ。

陽美
「今後、販売だけでは伸びていかないから農場や生産者を増やすことに力を入れなくてはいけない。まずは、農業に興味のある人を集めるために数カ月前にリクルートサイトに掲載しました。すると、そこから一人志望してくれたんです。ネット経由で問合せして、一歩を踏み出してくれたことが私はすごくうれしい。もし、その人が農業をやりたいならみんなの力と知恵を借りて協力したい。そういう人たちとご縁ができるように、自分たちも気持ちを磨いていかなきゃいけないと感じています」

この取り組みは、北海道富良野で有機認証済の30ヘクタールの土地を持つ農家の声がきっかけだった。60代で現役のうちにインストラクターとして農業を教え、次世代にバトンタッチできるきっかけになるかもしれない。最後に深川代表は食への思いをこう話す。

「流通が成り立てば、消費者の皆さんが良い商品を購入できるシーンが増えると思います。“食”の字は“人を良くする”と書きます。人間は食が満たされると心が満たされる。もちろん家やクルマのステイタスで満たされる人もいますけど、人間としてはまず食べなければ成り立たない。一次産業を盛り上げていく大切さもお伝えしていきたいです」

株式会社ゆうきのもり 大森社長としょうが圃場にて

【今回の取材先】
サンエッジ株式会社
所在地:愛知県小牧市小木東2- 104
TEL:0568-65-8314
創業:2010年4月
HP:https://sun-edge.com/

(取材・文:笹田理恵 /編集:OHACO編集部)