「ビッグデータ」という言葉をよく耳にしますが、どのような意味かご存じでしょうか。英語でBig dataだから、日本語では大きいデータ…? 日本語にしても意味がよくわかりません。
しかし、ビジネスではビッグデータを活用したサービス提供やコストの削減が進んでおり、その重要性は高まっています。
今回は、ビッグデータとは何か、企業やサービスでの活用法について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
目次
1.ビッグデータとは
①定義
Big dataだから大きいデータと解釈するのは間違いではありません。確かにビッグデータは、膨大な量のデータの集合体ですが、単に量が多いだけではありません。
ビッグデータは、次の「3つのV」からなります。
Volume:データの量
Variety:データの種類
Velocity:データの発生頻度・更新頻度
このように、量だけでなく、さまざまな種類、形式のデータを指します。近年では、Value(価値)、Veracity(正確さ)という2つのVが加わり、データの信頼性が求められています。
②ビッグデータの分類
データにはさまざまな種類・形式がありますが、ビッグデータでは、構造化データと非構造化データに分類されます。
構造化データとは、ExcelやCSVといった「行」と「列」で構成されるデータのことです。例として、売上や顧客データが挙げられます。
それに対して非構造化データは、「行」と「列」で構成されないデータを指します。例として、Wordなどの文書データ、メール、動画・音声、Web、SNS、GPSやセンサーから得られるデータなどが挙げられます。
③歴史
かつて、企業で扱うデータは構造化データのみでした。そのため、データベースも構造化データに対応したものしかありませんでした。
それが、パソコンやプログラムの進化により、数値以外の文書や動画・音声などの非構造化データも扱うようになったことから、非構造化データを扱えるデータベースが生まれました。
そして、2010年頃に「ビッグデータ」という言葉が生まれ、データベースの処理速度の高速化して普及が進みました。
ビッグデータは、データを生成・収集・蓄積・解析しなければ活用できません。データベースは「蓄積」部分を担います。これに加え、「生成・収集」を担うICTやハードウェアの進歩、膨大な量のデータの「解析」を担うクラウドの普及により、ビッグデータの活用が盛んになったのです。
2.企業やサービスでの活用事例
ここでは、さまざまな企業のビッグデータの活用例を取り上げます。活用例を知ることで、ビッグデータとはどのようなものかイメージしやすくなるはずです。
①スシロー
スシローでは、皿にICタグ取り付け、レーンを流れる寿司の鮮度や売り上げ状況の情報を収集し管理しています。店舗や寿司の種類、レーンに流し食べられたタイミング、テーブルごとの商品の注文状況のデータを毎年蓄積しています。
その件数はなんと10億件以上。これにより需要を予測し、レーンに流すお寿司の種類や量をコントロールしています。
これにより、販売機会の獲得やコストの削減、ひいては売上向上につながっています。
②ダイドードリンコ
雑誌やコンビニエンスストアの棚などを見る時、左上→右→左下→右と「Z」を書くように目線を動かすことをZの法則といいます。それに従い、ダイドードリンコでは、主力である「ダイドーブレンド」を自動販売機の左上に置いていました。
しかし、アイトラッキング(人がどこを、どのように、いつ見るかを教える技術)を取り付けて、客が自動販売機のどこを見ているかを調査したところ、下段に視線が集まることが判明しました。
その結果を受けて、下段に「ダイドーブレンド」を置いてみました。すると、売り上げが前年比1.2%増となったのです。このようにビッグデータを分析し常識を見直すことで、売り上げ増につながることもあります。
③小松製作所
建設機械・鉱山機械メーカー「小松製作所」では、自社製品の情報を社外からも確認できる「KOMTRAX(コムトラックス)」というシステムを開発しました。GPSや通信システムを建設機械に取り付けてビッグデータを集め、保守管理や省エネ対策に役立てています。
収集したデータは社内共有のみならず、顧客も閲覧可能であり、インターネットで稼働の時間や状況、作業者データなどがリアルタイムで確認できます。
ビッグデータの活用により、故障原因が推定しやすくなり、製品の需要動向も予測しやすくなました。また、修理の迅速化、建設機械の盗難防止にもつながりました。
顧客に対しては、点検や部品の交換時期の提案、効率的な配車計画や作業計画の作成支援、燃費改善の方法など、コスト削減について提案できるようになりました。
④城崎温泉
兵庫県北部に位置する城崎温泉は、スマートフォンを財布代わりに使えるシステムを導入し、観光客の利用履歴のデータを分析しました。
観光客が多い時間帯、人の組み合わせ(家族か友人かなど)、人気の外湯などのデータ分析から、より効果の高い施策の実施、温泉街の街づくりやサービスなどの改善につなげました。
⑤大阪ガス
過去数百万件に及ぶ修理履歴や機器の型番データと、コールセンターに寄せられる修理依頼の内容を蓄積している大阪ガスは、これらのデータを組み合わせ、ケースごとに必要な部品を自動的に割り出しています。
これにより、修理スタッフが行う作業を自動化し、人件費の削減と業務効率化につながりました。
⑥アンデルセン
製パン会社「アンデルセン」は、アンデルセンシステム(以下、ANS)という販売管理システムを導入しました。このシステムでは、POSシステムから得たビッグデータを基に、時間別の来店客数を予測することができます。
また、POSシステムデータと来店客数から、商品の売れ行きパターンも予測可能になりました。
ANSを導入した店舗では売り上げが1.1%上がりましたが、未導入の店舗では0.9%下がったそうです。
このケースでは、ビッグデータが在庫リスクの回避、販売機会の獲得につながりました。
3.ビッグデータの解析・可視化
解析・可視化ツール
先述したようにビッグデータは、データを生成・収集・蓄積・解析しなければ活用できません。ICTやハードウエアの進歩、データベースの進歩により、膨大な量のデータを収集・蓄積することが可能になりました。
しかし、データを集めてもそのままでは使えませんので解析し、さらに可視化して活用できる状態にしなければなりません。
解析・可視化には、次のようなツールがあります。
〈BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール〉
収集したデータを自動的に解析して、必要な情報をユーザーが希望する状態で画面に表示することで、迅速な意思決定が可能となります。経営管理や売上シミュレーションに活用できます。
「Power BI」「Tableau」といった製品があります。
〈データ可視化ツール〉
ヒートマップなど、さまざまなビジュアルで収集したビッグデータを可視化してくれます。目的に応じて可視化方法を選択でき、解析プロセスを大幅に効率化できます。
「Qlik」「BI360」といった製品があります。
〈Webスクレイピングツール〉
Webスクレイピングとは、Webサイトから報を取得するコンピュータソフトウエア技術のことです。Pythonというプログラミング言語を使用し、データの収集だけでなく、Excelなどに整理することも可能です。
「Octoparse」「Content Grabber」といった製品があります。
ビッグデータ活用サービス
前項では、ビッグデータのさまざまな解析・可視化のツールを紹介しましたが、作業負担がゼロになるわけではありません。
ビッグデータの活用を支援してくれるサービスもありますので、効率的かつ効果的に進めたい場合は、サービスの利用を検討してはいかがでしょうか。
4.まとめ
一つひとつのデータにはあまり価値はなくても、たくさん収集・蓄積し、解析・可視化することで価値あるものになります。
ビッグデータは使い方や視点によっては、ビジネスの拡大や業務改善、コスト削減につながる糸口になるかもしれません。
この記事の内容は『OHACO TV』の【OHACO先読みトレンド】ビッグデータとは?(21:49)でもご紹介しております!
編集者・ライター
フリーの編集者。書籍や情報誌などのデザインを携わる。主に看護・介護業界の情報誌の編集に携わり、グルメ・カルチャー・スポーツのジャンルの編集の経験あり。