仕事を「怒り」でダメにしないために! 経営者に必要なアンガーマネジメント術【特集前編】

職場や家庭内で良好な人間関係を保ち、コミュニケーションを円滑に進めるために心掛けていることはありますか?

人間関係のトラブルで付きまとうのが「怒り」。
人間誰しもに備わっている感情ですが、取り扱い方を間違えると大きなトラブルに発展していまいます。
近年、注目を集めている「アンガーマネジメント」は怒りをコントロールする心理トレーニング方法です。

トレーニングを始まる前に、まず「怒り」の本質を理解していきましょう。

今回教えていただいたのは日本アンガーマネジメント協会 
代表理事 安藤俊介先生

日本アンガーマネジメント協会 代表理事 安藤俊介先生

アンガーマネジメントの日本の第一人者。
アンガーマネジメントの理論、技術をアメリカから導入し、日本の考え方、慣習、文化に合うようにローカライズする。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。

コロナ禍で怒りやすくなっている!? 「怒り」のメカニズムとは

―時代が変わっても、「怒り」によるトラブルは絶えません。特に、コロナ禍で「怒り」を感じやすくなっているのでは。

安藤先生:
怒りが生まれる仕組みは、「ライター」で説明することができます。ライターの炎が怒りだとすると、火花を散らすのが怒りの原因となる出来事。端的に言うと、「自分が信じる“〇〇するべき”が裏切られた時」です。コロナ禍で“マスクするべき”だと思っているのにしてない人いたら火花が散るわけです。

しかし、火花だけでは炎は出ません。ガスが必要ですよね。怒りの炎を燃やすガスとなるのが、「ネガティブな感情やマイナスな体の状態」です。コロナ禍前後で、人々の“〇〇するべき”の本質はあまり変わっていません。ただ圧倒的に変わったのはネガティブな感情と体の状態。今までだったらイラッとしても流せることが、今はみんなが「ガス」をたくさん持っているからそこら中で怒りが発生してしまうのでしょう。

みんな「怒り」を誤解している

―怒りに対してマイナスな印象や怒っている自分を否定する人が多いように感じます。

安藤先生:
一般的に、怒りは悪いこと、大人になれてない人がやること、行儀が悪い、人を傷つけるなどの思い込みがあり、その側面もあります。ただ、それは「怒り方」の問題です。上手に怒る事で人間関係はより良くなるし、何か問題を解決するきっかけになります。
良くも悪くも、僕らが世の中に対して怒らなかったら世の中変わらないわけです。だけど、「これはおかしいよね」と怒りの声を上げることで社会的な問題は解決できます。個人の問題も同じで、怒りは自分を破壊することもあるけれど、問題を解決するために生かすこともできる。そこを理解してほしいです。

あなたの「怒り」はコントロールできる
怒りとうまく付き合うための アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれた怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。

当初は、軽犯罪を犯した人に対する矯正教育プログラムの側面が強かったが時代の変遷とともに一般化され、企業研修や青少年教育など人間関係の悩みを解決するためのカウンセリングやコーチングに幅広く活用されています。

怒りの感情の扱い方や怒る原因となる意味付けの見直し、課題解決に導く上手な怒り方などを学びます。

① 6秒ルール

人間の理性は、怒りが生まれてから6秒程度で働くと言われています。
つまり、怒りを感じてから6秒待つことできれば、理性的に考えることができるのです。

反射的に怒ってしまうのは絶対NG。
言ってはいけないことを言ったり、やってはいけない行動をしたりしてしまう可能性が高くなります。
「6秒ルール」を活用することで状況を悪化させることを防げるでしょう。

怒りを感じたら、深呼吸などして「6秒」待つ

② 上手に線引きをする

「何故こんなことをするんだろう?」と周りに不満を感じていませんか?
思い当たる節がある人は、関わらなくていいことに力を入れてしまってイライラしているかもしれません。

アンガーマネジメントでは、自分が「出来ること」と「出来ないこと」にきちんと線を引き、優先順位を定めることが重要です。

相手に対して「しょうがない」と思うより、出来ないことや優先順位の低いことだった場合はその場から離れるのが得策です。

自分が出来ないこと、関わらなくていいことに対する怒りは、その場から離れる

怒りやすい人は「自己肯定感」が低い!?

怒りの背景には「“自分が正しい”と認めてもらいたい」という感情が隠れています。
これは裏返すと、「人からの評価を得ないと自分が正しい」と思えないから。

つまり、自己肯定感や自尊感情の低い人は、自分のことを自分で正しいと思えない生物としての「弱さ」があるため、自分の身に危険が迫る出来事が増えて怒りっぽくなります。

怒りは、自分を守るために備わっている「防衛感情」なのです。
怒りの感情をコントロールしながら、自身の自己肯定感や自尊感情を見直してみましょう。

後編では具体的なアンガーマネジメント術を紹介!

【取材先】
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会
[所在地]〒108-0023 東京都港区芝浦3-14-8 芝浦ワンハンドレッドビル6階
[TEL]03-6435-2120
[E-mail]info@angermanagement.co.jp
[URL]https://www.angermanagement.co.jp/

(取材・文:笹田理恵 / 編集:OHACO編集部)