Facebookは、メタバースに本格参入するため、「Meta」と社名変更したことが話題になりました。
このほかにも、最近メタバースという言葉を度々聞くようになりましたが、どのようなものかご存じでしょうか。
現在では、さまざまな企業がメタバースに取り組みはじめています。
今回は、メタバースとは何か、なぜ注目されているのか、特徴やメリット、活用方法、企業事例について解説します。
1.メタバースとは
メタバース(Metaverse)は、「超(Meta)」と「宇宙(Universe)」を基にした造語です。
この言葉は、アメリカのSF小説作家・ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した作品『スノウ・クラッシュ(SNOW CRASH)』の中で架空の仮想空間サービスの名前として使用されていました。
そこから意味が転じ、現在では「オンラインでつながる仮想空間」のことをメタバースと呼ぶようになりました。
メタバースの中では、人々はアバターの姿をして、たくさんの人が集まってゲームをしたり、会議を行うなど仕事をしたり、お店で買い物をしたりするなど、現実の世界と同じように活動できるようになると考えられています。
2.注目されている理由
メタバースが注目されている理由には、次の3つが挙げられます。
VR技術の進化と普及
VRは、Virtual Realityの頭文字を取った言葉で、仮想現実という意味です。このVR技術の進化により普及が進んだことが、メタバースが注目されている理由の一つと言えます。
そして、VR技術が普及した要因は、2つあります。
1つ目は、Unity(ゲームエンジン)やBlender(オープンソースの総合3DCGソフト)といった開発者ツールが整備され、VRコンテンツが増えたことです。
2つ目は、VRデバイスの軽量化・低価格化です。今後もVR技術はさらに進化し、あらゆる分野で普及が進むことが予想されます。
コミュニケーションのデジタル化
メタバースでは、実際に顔を合わせなくても、コミュニケーションをとることができます。
そのため、コロナ禍はメタバースが普及する大きなきっかけになると考えられています。
多人数参加型オンラインゲームが人気
メタバースに該当するゲームが人気を集めています、代表的なゲームは次の3つです。
Fortnite(フォートナイト)
Epic Gamesが提供しているバトルロワイヤルゲームです。
2020年に、音楽アーティスト・米津玄師がバーチャルライブを行ったことでも話題になりました。
フォートナイトは、プレイヤーが自分のスキンや動きを自分で作れるなど、クリエイティブモードを提供していることがメタバースに該当する理由として挙げられます。
また、ゲームをするだけではなく、コミュニケーションをとるために集まる場へと変化しています。
あつまれどうぶつの森
ユーザーがアバターとなって、無人島での生活を楽しむNintendo Switchのゲームソフトです。
野菜を育てたり、お金を稼いだりして、自分なりの楽しみを表現します。
アバターが着替える洋服に有名アパレルブランドのアイテムを取り入れるなど、企業とコラボしたコンテンツが多く展開されています。
これらのことから。メタバースの要素を取り入れたゲームだと言えます。
Minecraft(マインクラフト)
Mojang Studiosが提供する、ユーザーが世界や建物を自由に構築できるゲームです。
アバターのコスチューム変更や、建物や土地の構築などを行い、ゲームの世界を楽しめます。Minecraftは将来的に、ゲーム上でアイテムなどを売買できるよう、ブロックチェーン技術を取り入れ開発を進めています。
ブロックチェーンとは、簡単に言うと、取引を記録し、参加者で安全に管理し合う技術のことです。その取引記録は改ざんできず、記録している場所に不正などが起こってもシステム全体は落ちることなく稼働し続けられます。
3.メタバースの特徴・メリット
企業がメタバースを利用するメリットとしては、まずバーチャル化することによりコストカットが可能(現実のオフィスをVRへ移転するなど)であることが挙げられます。
また、メタバース経済圏の広がりによって、新たなビジネスチャンスが得られたり、収益源を作ったりすることができます。
ユーザーは、非接触でコミュニケーションが取れたり、新たなエンターテインメントを得られたりすることにつながります。
そして、クリエイターとして自分の作品を売り、収益を得られる可能性があります。
4.活用方法
メタバースについては、IT業界の大手企業や先端技術を扱うベンチャー企業が取り組みはじめていますが、一般的な活用方法として確立されたものはあまりなく、まだ試行錯誤の状態です。
ここでは、今後、活用方法として広がることが見込まれるものを紹介します。
VRによる会議やイベントへの参加
これらに関しては、後述するFacebookやグリーによって、既に運用が始まっています。
離れた場所にいても、1つのバーチャル空間でアバターとして会議やイベント参加することができます。
NFTのバーチャル空間での取引
NFT(Non Fungible Token)とは、非代替性トークンと呼ばれています。トークンは、直訳すると「しるし」「象徴」となりますが、用途によって意味はさまざまです。唯一無二の「一点物」で、ほかの物には代えられないものととらえるとよいでしょう。
NFTにおいては、所有や譲渡に関する記録が改ざん不可能なデジタルコンテンツのことで、従来のようにコピーをすることが不可能なことが特徴です。
2021年4月に、「Everydays-The First 5000 Days」と題されたデジタルアートが、約6,935万ドル(約75億円)で落札されました。これにはNFTの技術が活用されており、多くの関心が寄せられました。
デジタルコンテンツはメタバースと相性がよいため、今後NFTの技術を生かした取引が広がっていくと見込まれています。
仮想通貨による取引
仮想通貨(暗号資産)とは、インターネット上で商品などの対価として使用できるもので、ビットコインなどさまざまな種類が存在します。仮想通貨についても、所有や譲渡に関する記録は改ざん不可能であり、メタバースとの相性がよいと考えられています。
メタバースでは、国境を越えて全世界とオンラインでつながることができるため、共通の貨幣が必要になります。
NFTの購入はもちろん、仮想通貨を利用した取引がメタバースで行われることが予想されます。
5.メタバースに取り組んでいる企業例
ここでは、メタバース事業に取り組んでいる企業について紹介します。
Facebook(現在・Meta)
Facebookは2021年8月、VR会議アプリ「Horizon Workrooms」を発表しました。
ユーザーはアバターでVR会議に参加しながらパソコンを操作したり、画面を共有したりすることができます。
コロナ禍によりビデオ会議は普及しましたが、実際に顔を合わせての会議とは異なる感覚に違和感を覚えた人も多いと思います。
Horizon Workroomsはこの違和感を解消し、より一体感を感じられるツールとして期待されています。
また、Facebookはメタバース事業に約55億円の投資を行うと発表し、冒頭でも述べたように社名をMetaに変更しました。
このように、今後、本格的にメタバース事業に取り組んでいく方針です。
グリー
6.まとめ
大企業が大規模な資金投資を行いメタバース事業に参入しています。
また、メタバースはVR技術の進化などから身近な存在になりつつあります。
今後、ビジネス面でも発展が見込まれる分野ですので、動向に注目していく必要がありそうです。
編集者・ライター
フリーの編集者。書籍や情報誌などのデザインを携わる。主に看護・介護業界の情報誌の編集に携わり、グルメ・カルチャー・スポーツのジャンルの編集の経験あり。