「テキストマイニング」という言葉をご存じでしょうか。
分析対象となるデータにはさまざまな種類がありますが、テキストマイニングはその名のとおり、テキストデータを分析してマーケティングなどに活用する手法です。
マーケティング以外では顧客満足度の向上、社内ナレッジの抽出にも役立ちます。
今回は、テキストマイニングについて、基本から活用までを解説し、テキストマイニングツールについて紹介します。
1.テキストマイニングとは
テキストマイニング(Text Mining)のマイニングには、「採掘」という意味があります。
このことから、テキストマイニングは「大量のテキストデータの中から有益な情報を抽出すること」と解釈されています。
もう少し具体的に表現すると、定型化されていないテキストデータをフレーズや単語レベルに分解し、有益な情報を抽出する分析手法です。
テキストマイニングの対象となる主なものには、TwitterなどのSNSの文章、顧客アンケートの回答、お客様センターに寄せられる意見や質問などがあります。
テキストマイニングは、データマイニングから派生した分析手法です。
データマイニングは、統計学や機械学習などによる分析を用いて、大量のデータの中から有益な情報を抽出します。
テキストマイニングが注目されるようになった背景には、自然言語処理の技術が実用レベルに達したことがあります。
日本語は意味のあいまいさや表現の揺らぎが多いことが特徴ですが、AIによりその意味を的確にとらえ分析することができるようになりました。
2.テキストマイニングでできること
テキストマイニングでは、どのようなことができるのか見ていきましょう。
市場や顧客ニーズを素早く察知、把握
商品やサービスの売上を伸ばすには、市場や顧客ニーズの把握が必須ですが、お客様センターや社内サイトに寄せられる意見や、インターネット上の口コミを分析することは容易ではありません。
テキストマイニングでは、大量のテキストデータから不正確な分析やバイアスのかかった情報を除外して有益な情報を抽出できるため、ニーズをいち早く察知することが可能です。
また、売上に影響が出る前に販売動向を分析できるため、売れない原因や機会損失を素早く察知し改善策を講じることができます。
ノウハウの属人化の防止
報告書や業務連絡などのテキストデータには、業務効率化やミス防止のノウハウが詰まっていますが、社内に保管されているだけで有効活用されていないことが多いです。
このようなテキストデータにテキストマイニングを活用すれば、優秀な従業員の知識を共有したり、マニュアル化したりすることができます。
ビッグデータを活用した将来予測
ビッグデータにテキストマイニングを活用すれば、企業経営に影響を与える変化の予兆をとらえ、将来予測に役立てられます。
これにより商品の売れ行きのみならず、株化変動などの高度な事象についてもある程度の予測が立てられます。
そして、この予測を基に生産量を調整したり、販売の可否を決定したりするなどの対応が可能になります。
データの関係性を客観的に分析
人がテキストデータを分析した場合、関連性の高い情報を見落としがちです。
しかし、AIによるテキストマイニングでは、人の目では見つけられない有益な情報を発見し、関連性の高い情報を結び付けることが可能です。
3.テキストマイニングの活用法
テキストマイニングは、すでにさまざまな企業で活用されており、経営の一助となっています。
ここでは活用法について紹介します。
顧客アンケートの結果分析
企業では、商品やサービスの質向上、セミナーなどを実施していればセミナー評価のために、顧客にアンケートを実施していることが多いと思います。
従来はアンケートを手作業で集計し、Excelなどに数値をまとめていたと思いますが、この場合、担当者に膨大な負担がかかります。
アンケートの集計・分析にテキストマイニングを活用すれば、アンケートの集計・分析にかかる担当者の負担軽減だけでなく、顧客ニーズの発掘にもつながります。
質疑応答ツールの精度向上
顧客が知りたい情報を入力すると答えを返信してくれるツール「チャットボット」の精度を高める目的で、テキストマイニングが利用されています。
チャットボットは、商品やサービスについて不明点があった際、お客様センターへの問い合わせやサイトのFAQを調べるという顧客の手間を省くことに加え、顧客満足度向上にもつながります。
チャットボットでは事前に質疑応答の対応表を作成していますが、それでも対応できなかった質問や解決できなかった割合を分析することで、その結果を基にチャットボットの精度向上を図っています。
SNSなどの分析・情報抽出
顧客のSNSやブログなどから、どのようなキーワドが多いか、キーワードの時系列はどのように変化しているか、どのような不満や改善点があるかを、テキストマイニングを活用して分析します。
これにより、商品やサービスの分析だけでなく、顧客ニーズを発掘し、今後のマーケティング活動に生かすことができます。
例えば、販促活動がどれくらい顧客に届いているのか、自社ブランドを想起するのはどのような態度変容かを客観的に分析できます。
論文や特許などの動向分析
論文や特許などの技術文書は専門用語が多用され、ほかの技術文書との関連がわかりづらいことが多いですが、テキストマイニングを活用すれば、関連性の発見も可能です。
例えば、多用されている語句が見つかれば、今後のマーケティング活動のヒントになるかもしれません。
また、他社の特許状況を分析して投資傾向を予測することで、自社の経営戦略に生かすこともできます。
4.テキストマイニングの主な分析手法
テキストマイニングでは、テキストデータをそのままの状態で分析することが難しいので、分析しやすいよう前処理を行うことが一般的です。
ここでは、前処理や具体的な分析手法について紹介します。
センチメント分析
商品やサービスを購入した顧客ポジティブな感情を持っているのか、ネガティブな感情を持っているのか、感情を分析する手法です。
主に、顧客の感情が表れやすいTwitterなどのSNS、ブログに利用されます。
ただし、年齢層によってポジティブかネガティブか判断が分かれるような言葉(例:「やばい」など)は、一度人が意味を解釈してからテキストマイニングの辞書を調整し、精度を上げる作業が必要です。
共起分析
例えば、「レモン」に対して「黄色い」がセットで使われるように、1つの文章の中に出現する関連性の高い単語のセットを分析する手法です。
特定のサービスに対してセットで使われる単語を分析することで、課題や改善点のヒントを得ようというものです。
共起の関係性を表現した図「共起ネットワーク」により、単語同士の結び付きの強さを視覚的に判断できますが、関係性をすべて表示してもわかりにくくなるため、情報の取捨選択が必要です。
対応分析
アンケート結果などをクロス集計表で示す際に、視覚的にわかりやすくするため、散布図を用いて分析する手法です。
競合他社と自社のポジションの違いや、ブランドイメージを可視化する場合などに使われます。
主成分分析
ビッグデータのような分析対象が多い場合に、できる限り分析対象を少なくして分析しやすくする手法です。
ビッグデータを必要最小限に絞り見やすくできるメリットがある一方、情報が一部切り捨てられることから、すべてが反映された結果ではないというデメリットもあります。
5.おすすめテキストマイニングツール
テキストマイニングツールにはさまざまな種類があり、自社の特徴に合わせて選ぶことが大切です。
ここでは5つに絞って紹介します。
なお、初期費用、月額料金などのコストについては、それぞれ問い合わせが必要です。
見える化エンジン
アンケートやコールセンターのデータ、SNSの書き込みや音声認識データのような自由発言からも情報を抽出できる言語処理技術を持っています。
使い方は簡単で、このようなツールを使ったことのない人でも直感的に操作できます。
さまざまな従業員規模に対応しており、サービス提供形態はSaaSです。
Text Mining Studio
特徴分析や話題分析といったさまざまな機能を備えており、活用している業種は金融や通信など多岐にわたります。
専門知識がなくても、簡単な操作で高度な分析を行うことができますが、個別コンサルティングやセミナーをできるなどサポート体制が整っているため、安心して使うことができます。
あらゆる従業員規模に対応しており、サービスの提供形態はパッケージソフトです。
Text Voice
複雑な分析結果も、可視性の強いマッピング機能により、視覚的にわかりやすく表示することができます。また、類義語辞書が自動で生成されるため、事前に整備する必要がなく、すぐにデータ分析を行うことができます。
また、直感的でわかりやすいUI、TwitterとInstagramからデータを取得できることも特長です。
あらゆる従業員規模に対応しており、サービス提供形態は、オンプレミス、クラウド、APIなどさまざまあります。
TRAINA
株式会社野村総合研究所が独自に開発した言語解析エンジンを搭載したことにより、高速化を実現しました(従来製品の約12倍)。基本的な機能はもちろんのこと、関連性の強い属性データのセットを検出しマップ化する機能、テキストからポジティブな感情かネガティブな感情かを分析する機能を備えています。
サービス提供形態は、クラウド、インストールがあります。
VextMiner
会話を分析する精度が高いため、音声データを活用したい場合に最適なツールです。
大量の会話データやSNSデータを分析できるだけでなく、ビッグデータから少数意見を抽出できる機能も備わっています。
また、手入力で調整が必要な部分を自動で調整できる自動学習機能、可視化して確認しやすくする文脈抽出や自動要約などの機能があることも特長です。
サービス提供形態は、クラウドとインストールがあります。
6.まとめ
テキストマイニングは、さまざまなテキストデータから情報を収集し分析できる手法であり、企業経営に欠かせないものと言えます。
企業内にあるテキストデータから新たな気づきを得て経営に生かしたい場合は、テキストマイニングツールの導入を検討してみましょう。
編集者・ライター
フリーの編集者。書籍や情報誌などのデザインを携わる。主に看護・介護業界の情報誌の編集に携わり、グルメ・カルチャー・スポーツのジャンルの編集の経験あり。